The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-16] 口述演題(運動器)16

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小野 志操(京都下鴨病院理学療法部)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-16-3] 変形性膝関節症の術前後の膝アライメントの変化が後足部および足底圧中心点軌跡へ及ぼす影響

渡邊 直樹1, 中山 裕子1, 岡田 洋和2 (1.新潟中央病院リハビリテーション部, 2.新潟中央病院整形外科)

Keywords:変形性膝関節症, 後足部アライメント, 外反足歩行

【はじめに】

変形性膝関節症(以下膝OA)において,重度の内反膝変形を呈する場合,足部は外反し,外反膝変形であれば足部は内反し,それらは距骨下関節で代償すると報告されている(Norton,2000)。後足部アライメントの評価は,静的には単純X線画像による脛骨踵骨軸写角(以下TB-C)が挙げられ,これまでに膝OA症例の術前後の大腿脛骨角(以下FTA)とTB-Cの関係について検討されてきた。また,後足部アライメントの動的評価として歩行中の足底圧中心点(以下COP)軌跡を測定し求めるThe Center of Pressure Excursion Index(以下CPEI)があり,後脛骨筋腱機能不全症等の外反足歩行の評価に用いられている(庄野,2007)。CPEIは歩行中のCOP軌跡のX軸における変移を示すもので,この値が低ければ,COPが内側変移し足部アーチ機構の破綻が考えられる。外反足歩行ではこの値が低値を示す。本研究の目的は,膝OA症例の術前後の膝アライメントの変化が後足部アライメントや歩行に及ぼす影響について明らかにすることである。

【方法】

対象は平成27年7月から28年2月に,当院にて人工膝関節置換術もしくは高位脛骨骨切り術を実施した15例19膝とした。男性3例,女性12例,平均年齢76.2±7.6歳であった。検討項目は,術前と術後6か月の単純X線画像より,FTA,TB-C(脛骨長軸と踵骨長軸のなす角度,内反を+,外反は-,正常値は+2.2°)を,歩行の評価はCPEI,10m歩行時間,TUGとした。CPEIの測定は,2.4mの歩行路の中間地点に重心動揺計および圧力分布測定装置(アニマ社製,ツイングラビコーダGP-31W,プレダスMD-1000)を設置し,被験者は裸足にて自然な速度での歩行を3回測定,その平均値を採用した。測定の前に適宜練習を実施した。統計解析は,t検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

FTAは術前185.2±6.3°,術後6か月175.8±3.8°であり術後は術前に比べ有意に膝外反位を示していた。TB-Cは術前-11.1±7.8°,6か月-10.6±7.3°で差を認めず,術前後とも後足部外反位であった。CPEIは術前12.8±4.2%,6か月8.7±4.9%で術後は術前に比べ有意にCOPが内側を通過していた。10m歩行時間は,術前13.8±7.1秒,6か月9.5±3.2秒で,TUGは19.5±9.8秒,12.0±2.8秒で共に術後は有意に改善していた。

【結論】

膝OA症例の術後において,膝アライメントは軽度外反位に矯正されるが,それに伴う後足部の代償機能は生じず,外反位のまま変化しないことが明らかとなった。歩行においては,術前のCOPは外反足歩行特有の軌跡を示し,さらに術後歩行能力が改善したのちも,術前よりもCOPは内側を通過し,外反足歩行していることが示された。術後の理学療法においては,歩行時の足部のアライメントにも着目し実施する必要がある。今後は,今回検討できなかった足部の疼痛や可撓性の評価を実施し,外反足による上位関節の長期的影響について検討していきたい。