[O-MT-16-2] 人工膝関節置換術後患者に対する遠隔リハビリテーションの導入
ケースシリーズによる検討
Keywords:人工膝関節置換術, 遠隔リハビリテーション, ケースシリーズ
【はじめに,目的】
人工膝関節置換術(Knee Joint Replacement:KJR)後の機能回復には,適切なリハビリテーション(RH)が必要である。当院は人工関節専門病院であるため,遠方から手術を受けに来る患者が少なくない。そのような患者に退院後の専門的なRHが行えないことは,これまでの課題であった。Moffet, et al.は,KJR後患者に対してビデオ通話環境で行う遠隔RH(Telerehabilitation:TRH)の効果が,通常のRHに劣らないことを報告した。本邦において,同様の報告は渉猟した限りない。本研究の目的は,KJR後患者に対してTRHを導入し,その効果を検証することである。
【方法】
研究デザインはケースシリーズ,対象はKJR後に自宅退院した患者4名とした。自宅にいる対象者に対して,病院にいる理学療法士がビデオ通話環境下で介入を行った。対象者の使用機器は,スマートフォン,タブレット,パソコンのいずれかであった。アプリケーションはSkypeⓇを用いた。介入内容は,当院のクリニカルパスに基づいた運動(可動域,筋力,動作,バランス),ホームエクササイズ指導,患者教育とした。介入頻度は,週1回30分,計5回とした。主要アウトカムは,疾患特異的尺度であり日常生活動作を評価する日本語版Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index-身体機能(WOMAC-F)とTRHの満足度とした。副アウトカムは,膝可動域,膝伸展トルク,疼痛とした。評価は,術前と術後3ヶ月時に行った。統計解析は,記述統計としTRHを行った対象者それぞれの値を通常RHを行った当院の患者データ(202名)と比較した。
【結果】
対象者の属性は,女性:4名,年齢:50歳代1名,60歳代3名,居住地:北海道,新潟,山梨,山形であった。TRHの実施回数は,それぞれ4回,4回,5回,5回であった。全例が介入時の機器操作を問題なく行うことができた。また,運動の指示理解も良好であった。術後3ヶ月時のWOMAC-Fは,それぞれ87点,78点,81点,88点,当院の患者平均値±標準偏差は86.4±13.0点であった。満足度は,全例が5段階中の最高値であった。副アウトカムの値は,すべて当院の患者の標準偏差内に収まっていた。有害事象は起こらなかった。
【結論】
今回,KJR後患者に対してTRHを導入し,その効果を検証した。結果よりTRHは有害事象を起こすことなく実施でき,一定の効果を得ることができたと考える。また,満足度が高かったことより,遠方から手術を受けに来た患者のニーズに答えることができたと考える。近年,欧米においてTRHの報告が散見されるようになってきているが,本邦においては保険適応外である。本研究は,今後本邦においてTRHが保険適応となる際のエビデンスとなり,理学療法士の職域拡大に寄与するものと考える。今後は,症例数を増やし厳密な試験で検証する必要がある。
人工膝関節置換術(Knee Joint Replacement:KJR)後の機能回復には,適切なリハビリテーション(RH)が必要である。当院は人工関節専門病院であるため,遠方から手術を受けに来る患者が少なくない。そのような患者に退院後の専門的なRHが行えないことは,これまでの課題であった。Moffet, et al.は,KJR後患者に対してビデオ通話環境で行う遠隔RH(Telerehabilitation:TRH)の効果が,通常のRHに劣らないことを報告した。本邦において,同様の報告は渉猟した限りない。本研究の目的は,KJR後患者に対してTRHを導入し,その効果を検証することである。
【方法】
研究デザインはケースシリーズ,対象はKJR後に自宅退院した患者4名とした。自宅にいる対象者に対して,病院にいる理学療法士がビデオ通話環境下で介入を行った。対象者の使用機器は,スマートフォン,タブレット,パソコンのいずれかであった。アプリケーションはSkypeⓇを用いた。介入内容は,当院のクリニカルパスに基づいた運動(可動域,筋力,動作,バランス),ホームエクササイズ指導,患者教育とした。介入頻度は,週1回30分,計5回とした。主要アウトカムは,疾患特異的尺度であり日常生活動作を評価する日本語版Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index-身体機能(WOMAC-F)とTRHの満足度とした。副アウトカムは,膝可動域,膝伸展トルク,疼痛とした。評価は,術前と術後3ヶ月時に行った。統計解析は,記述統計としTRHを行った対象者それぞれの値を通常RHを行った当院の患者データ(202名)と比較した。
【結果】
対象者の属性は,女性:4名,年齢:50歳代1名,60歳代3名,居住地:北海道,新潟,山梨,山形であった。TRHの実施回数は,それぞれ4回,4回,5回,5回であった。全例が介入時の機器操作を問題なく行うことができた。また,運動の指示理解も良好であった。術後3ヶ月時のWOMAC-Fは,それぞれ87点,78点,81点,88点,当院の患者平均値±標準偏差は86.4±13.0点であった。満足度は,全例が5段階中の最高値であった。副アウトカムの値は,すべて当院の患者の標準偏差内に収まっていた。有害事象は起こらなかった。
【結論】
今回,KJR後患者に対してTRHを導入し,その効果を検証した。結果よりTRHは有害事象を起こすことなく実施でき,一定の効果を得ることができたと考える。また,満足度が高かったことより,遠方から手術を受けに来た患者のニーズに答えることができたと考える。近年,欧米においてTRHの報告が散見されるようになってきているが,本邦においては保険適応外である。本研究は,今後本邦においてTRHが保険適応となる際のエビデンスとなり,理学療法士の職域拡大に寄与するものと考える。今後は,症例数を増やし厳密な試験で検証する必要がある。