[O-MT-17-2] 人工股関節全置換術後の自覚的脚長差の改善に影響を与える因子の検討
Keywords:人工股関節全置換術, 自覚的脚長差, 股関節内転可動域
【目的】
変形性股関節症(股OA)患者に対し人工股関節全置換術(THA)を施行した際に,脚長補正が適正に行われたにも関わらず,自覚的に脚長差(自覚的脚長差:LLD)を訴える症例が存在する。LLDを認める症例の多くは術後3か月程度で消失すると報告されているが,残存する症例も散見される。LLDが長期化すれば,Hip spine syndromeや歩行障害などの合併症を呈しQOLに影響すると報告されている。本研究の目的は,THA術後2週時に認めたLLDが3か月時にも残存する影響因子を調査したので報告する。
【対象・方法】
対象は平成25年10月から平成28年3月までに,当院で片側股OA患者に対しTHAを施行した53例のうち,術後2週時にLLDが残存していた症例27例(女性21名:男性6名,年齢68.3±7.9歳)である。除外基準は診断が大腿骨頭壊死症や大腿骨頸部骨折の症例,また変形性膝関節症(TKA含む)や両側股OAを合併する症例とした。評価項目は,LLD,股ROM(屈曲,伸展,内転,外転),疼痛VAS(安静時・歩行時),骨盤側方傾斜角,脚延長量,下肢荷重率,JOA(Walking,ADL),腰椎側弯とした。なお,検査は術後2週と術後3か月に実施した。LLDの測定方法は,ブロックテストを用い,立位にて短いと感じる足底に,5mm板を段階的に挿入し,「脚長差なし」と自覚した時の板の厚みをLLDとした。骨盤側方傾斜角は,立位骨盤正面単純X線像にて両側涙痕下端を通る直線と水平線のなす角とし,腰椎側弯の測定は,第1腰椎上縁と第5腰椎下縁のCobb角とした。腰椎側弯の変化の測定は,術後2週時と術後3か月時のCobb角の差とした。検討内容は,対象のうち3か月時にLLDが消失した群(消失群)と残存した群(残存群)に群分けし,両群間と調査項目をMann-whitneyのU検定を行い,統計学的解析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
術後3か月時のLLDは,消失群17例,残存群10例であった。群間比較の結果,術後2週時は,股ROM内転(p=0.04),術後3か月時は,股ROM内転(p=0.01),JOA Walking(p=0.02),腰椎側弯(p=0.04),腰椎側弯変化(p=0.02)に有意差を認めた。
【結論】
本研究の結果,LLDを術後2週時に認めた症例のうち3か月時までに残存していた症例では,術後2週時の股ROM内転制限が術後3か月時まで継続していた。腰椎側弯と股ROM内転は関連するとの報告があり,本研究でもLLD残存群において,術後2週時から3か月時にかけて股ROM内転制限が残存していれば,腰椎側弯が進行し,歩行機能に影響していた。よって,LLDは,股ROM内転と腰椎側弯が密接に関係していると考えられた。
変形性股関節症(股OA)患者に対し人工股関節全置換術(THA)を施行した際に,脚長補正が適正に行われたにも関わらず,自覚的に脚長差(自覚的脚長差:LLD)を訴える症例が存在する。LLDを認める症例の多くは術後3か月程度で消失すると報告されているが,残存する症例も散見される。LLDが長期化すれば,Hip spine syndromeや歩行障害などの合併症を呈しQOLに影響すると報告されている。本研究の目的は,THA術後2週時に認めたLLDが3か月時にも残存する影響因子を調査したので報告する。
【対象・方法】
対象は平成25年10月から平成28年3月までに,当院で片側股OA患者に対しTHAを施行した53例のうち,術後2週時にLLDが残存していた症例27例(女性21名:男性6名,年齢68.3±7.9歳)である。除外基準は診断が大腿骨頭壊死症や大腿骨頸部骨折の症例,また変形性膝関節症(TKA含む)や両側股OAを合併する症例とした。評価項目は,LLD,股ROM(屈曲,伸展,内転,外転),疼痛VAS(安静時・歩行時),骨盤側方傾斜角,脚延長量,下肢荷重率,JOA(Walking,ADL),腰椎側弯とした。なお,検査は術後2週と術後3か月に実施した。LLDの測定方法は,ブロックテストを用い,立位にて短いと感じる足底に,5mm板を段階的に挿入し,「脚長差なし」と自覚した時の板の厚みをLLDとした。骨盤側方傾斜角は,立位骨盤正面単純X線像にて両側涙痕下端を通る直線と水平線のなす角とし,腰椎側弯の測定は,第1腰椎上縁と第5腰椎下縁のCobb角とした。腰椎側弯の変化の測定は,術後2週時と術後3か月時のCobb角の差とした。検討内容は,対象のうち3か月時にLLDが消失した群(消失群)と残存した群(残存群)に群分けし,両群間と調査項目をMann-whitneyのU検定を行い,統計学的解析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
術後3か月時のLLDは,消失群17例,残存群10例であった。群間比較の結果,術後2週時は,股ROM内転(p=0.04),術後3か月時は,股ROM内転(p=0.01),JOA Walking(p=0.02),腰椎側弯(p=0.04),腰椎側弯変化(p=0.02)に有意差を認めた。
【結論】
本研究の結果,LLDを術後2週時に認めた症例のうち3か月時までに残存していた症例では,術後2週時の股ROM内転制限が術後3か月時まで継続していた。腰椎側弯と股ROM内転は関連するとの報告があり,本研究でもLLD残存群において,術後2週時から3か月時にかけて股ROM内転制限が残存していれば,腰椎側弯が進行し,歩行機能に影響していた。よって,LLDは,股ROM内転と腰椎側弯が密接に関係していると考えられた。