[O-MT-17-5] 下肢人工関節置換術後の下肢機能と転倒関連自己効力感尺度の関連性
Keywords:自己効力感, 下肢人工関節, 下肢機能
【はじめに】
Tinettiらは,日常生活における動作遂行に関する転倒恐怖を測定することで,自己効力感の低下を評価する転倒関連自己効力感尺度,Falls Efficacy Scale(FES)を開発した。最近の研究でFESはQOLと関連性があるという報告もされている。今回,上出直人らが翻訳した国際的に使用可能な日本語版国際版転倒関連自己効力感尺度FES-I(International)を使用し,下肢人工関節置換術前後の下肢機能と自己効力感の関連性について検討した。FES-Iは,64点満点で点数が低いほど転倒関連自己効力感が高いことを示す。
【方法】
変形性関節症の女性で股関節の人工関節置換術(以下THA)を施行した7例,膝関節の人工関節置換術(以下TK A)を施行した8例を対象とし,評価項目は年齢,体重,歩行様式,2回計測平均値による10m歩行時間,Timed Up & Go test(以下TUG),術側・反対側の膝伸展筋力,股関節外転筋力,手術部位・手術部位以外のVisual Analogue Scale(以下VAS),FES-Iとし,術前と術後3週に評価した。術後のFES-Iが術前よりも低値の群を自己効力感改善群,術前よりも高値又は変化しなかった群を自己効力感低下群に分類し,術前と術後の評価項目について検討した。下肢筋力はHand-Held Dynamometer(アニマ社製μ-TasF1)を使用し,体重比率とした。統計処理はStudent,Welch-t検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
自己効力感改善群は5例(TKA2例,前方侵入THA3例),(術前)-(術後):歩行様式(全例独歩)-(独歩4例,1本杖1例),10m歩行時間(9.4±1.3秒)-(9.6±1.9秒),手術部位VAS(72.8±16.8)-(19.8±20.9),手術部位VAS変化53±16.8。自己効力感低下群は10例(TKA6例,前方侵入THA1例,後方侵入THA3例),(術前)-(術後):歩行様式(独歩5例,1本杖3例,2本杖1例,手押し車1例)-(独歩3例,1本杖3例,2本杖2例,歩行器2例),10m歩行時間(12.9±5.3秒)-(14.9±5.1秒),手術部位VAS(59.6±25.3)-(38.8±25. 9),手術部位VAS変化20.8±22.7となった。2群間で有意差がみられたのは,術後の10m歩行時間と手術部位VAS変化のみ(P<0.05)で,歩行速度と手術部位の疼痛が改善されれば自己効力感も高まることが示された。
【結論】
手術部位VASでの有意差はみられなかったが,手術部位VASの変化で有意差が出たことから手術部位の術前の疼痛が術後大幅に改善することが,自己効力感の改善に関与すると考えられる。また,自己効力感改善群の術前の歩行様式がすべて独歩であったことや自己効力感改善群の術後の歩行時間が有意に低かったことから,自己効力感において歩行能力は重要な指標になると思われる。これらのことから下肢人工関節置換術後3週で自己効力感が改善するには,著明な疼痛軽減と歩行速度の維持が必要と考えられる。
Tinettiらは,日常生活における動作遂行に関する転倒恐怖を測定することで,自己効力感の低下を評価する転倒関連自己効力感尺度,Falls Efficacy Scale(FES)を開発した。最近の研究でFESはQOLと関連性があるという報告もされている。今回,上出直人らが翻訳した国際的に使用可能な日本語版国際版転倒関連自己効力感尺度FES-I(International)を使用し,下肢人工関節置換術前後の下肢機能と自己効力感の関連性について検討した。FES-Iは,64点満点で点数が低いほど転倒関連自己効力感が高いことを示す。
【方法】
変形性関節症の女性で股関節の人工関節置換術(以下THA)を施行した7例,膝関節の人工関節置換術(以下TK A)を施行した8例を対象とし,評価項目は年齢,体重,歩行様式,2回計測平均値による10m歩行時間,Timed Up & Go test(以下TUG),術側・反対側の膝伸展筋力,股関節外転筋力,手術部位・手術部位以外のVisual Analogue Scale(以下VAS),FES-Iとし,術前と術後3週に評価した。術後のFES-Iが術前よりも低値の群を自己効力感改善群,術前よりも高値又は変化しなかった群を自己効力感低下群に分類し,術前と術後の評価項目について検討した。下肢筋力はHand-Held Dynamometer(アニマ社製μ-TasF1)を使用し,体重比率とした。統計処理はStudent,Welch-t検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
自己効力感改善群は5例(TKA2例,前方侵入THA3例),(術前)-(術後):歩行様式(全例独歩)-(独歩4例,1本杖1例),10m歩行時間(9.4±1.3秒)-(9.6±1.9秒),手術部位VAS(72.8±16.8)-(19.8±20.9),手術部位VAS変化53±16.8。自己効力感低下群は10例(TKA6例,前方侵入THA1例,後方侵入THA3例),(術前)-(術後):歩行様式(独歩5例,1本杖3例,2本杖1例,手押し車1例)-(独歩3例,1本杖3例,2本杖2例,歩行器2例),10m歩行時間(12.9±5.3秒)-(14.9±5.1秒),手術部位VAS(59.6±25.3)-(38.8±25. 9),手術部位VAS変化20.8±22.7となった。2群間で有意差がみられたのは,術後の10m歩行時間と手術部位VAS変化のみ(P<0.05)で,歩行速度と手術部位の疼痛が改善されれば自己効力感も高まることが示された。
【結論】
手術部位VASでの有意差はみられなかったが,手術部位VASの変化で有意差が出たことから手術部位の術前の疼痛が術後大幅に改善することが,自己効力感の改善に関与すると考えられる。また,自己効力感改善群の術前の歩行様式がすべて独歩であったことや自己効力感改善群の術後の歩行時間が有意に低かったことから,自己効力感において歩行能力は重要な指標になると思われる。これらのことから下肢人工関節置換術後3週で自己効力感が改善するには,著明な疼痛軽減と歩行速度の維持が必要と考えられる。