[O-MT-17-6] 人工股関節全置換術例における自覚的脚長差・X線学的脚長差と荷重率の関連性
Keywords:人工股関節全置換術, 脚長差, 荷重率
【目的】
人工股関節全置換術(THA)では脚長を補正するように手術が行われるが,画像上で脚長が補正されたにも関わらず,術後早期には術側下肢の延長感(自覚的脚長差,Perceived leg length Discrepancy;PLLD)を訴える症例を経験する。二次性変股症の多い本邦では両側罹患例が多く,対側下肢への力学的負担を考慮すると片側手術後早期に下肢荷重率を均等化させる必要があるが,脚長差を有する症例においては延長側への荷重が困難な場合が少なくない。術後早期における術側下肢の荷重率に影響を与える要因としては疼痛や筋力など様々な要因が考えられるが,これら交絡因子を調整した上で脚長差と荷重率との関連性を明らかにした報告は少ない。本研究ではTHA例におけるPLLDおよびX線学的脚長差と術側下肢荷重率との関連性を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は当院にて片側THA施行となった連続81例のうち,立位保持が困難な3例,免荷を要する2例を除く76例(年齢:71.4±9.0歳,性別:男性11例・女性65例,術式:後側方侵入)とした。基本的属性として年齢・性別を,術前要因として疼痛・X線学的脚長差を,術後要因として術側下肢の疼痛・X線学的脚長差・PLLD・術側股伸展可動域・股外転筋力患健比・術側下肢荷重率を調査した。術後要因は術後2週の段階で測定を行った。PLLDの測定にはblock testを,術後X線学的脚長差の測定には涙痕-小転子間距離を使用し,いずれも術側が非術側よりも5mm以上延長している場合を5mm以上群,脚長差が5mm未満または非術側が術側よりも延長している場合を5mm未満群とした。下肢荷重率の測定にはWEIGHT BALANCERを使用し快適立位姿勢における30秒間の平均荷重率を算出した。データの正規性を確認した後に,対応のないt検定を使用し,PLLD5mm未満群・5mm以上群間およびX線学的脚長差5mm未満群・5mm以上群間で下肢荷重率の比較を行った。また回帰の有意性および平行性を確認した後に共変量を決定し,従属変数を下肢荷重率,独立変数をPLLDおよび術後X線学的脚長差として共分散分析を実施した。
【結果】
PLLD5mm未満群および5mm以上群の下肢荷重率は,それぞれ47.2±2.5%,43.9±4.8%であり,PLLD5mm未満群に比較して5mm以上群の下肢荷重率が有意に低値であった(p<0.01,r=0.39)。X線学的脚長差5mm未満群および5mm以上群の下肢荷重率はそれぞれ45.4±4.5%,45.3±3.2%であり,両群間に有意差を認めなかった(p=0.94,r=0.08)。共変量を術側下肢の疼痛として共分散分析を実施した結果,荷重率はPLLD5mm未満の群に比較してPLLD5mm以上の群で有意に低値を示した(F=7.76,p<0.01)。なおX線学的脚長差に関しては,共変量で調整後も5mm以上群・5mm未満群間の荷重率に有意差を認めなかった(F=0.36,p=0.55)。
【結論】
PLLDは疼痛の影響から独立して下肢荷重率と関連することが明らかとなった。下肢荷重率の改善にはPLLD改善の必要性が示唆される。
人工股関節全置換術(THA)では脚長を補正するように手術が行われるが,画像上で脚長が補正されたにも関わらず,術後早期には術側下肢の延長感(自覚的脚長差,Perceived leg length Discrepancy;PLLD)を訴える症例を経験する。二次性変股症の多い本邦では両側罹患例が多く,対側下肢への力学的負担を考慮すると片側手術後早期に下肢荷重率を均等化させる必要があるが,脚長差を有する症例においては延長側への荷重が困難な場合が少なくない。術後早期における術側下肢の荷重率に影響を与える要因としては疼痛や筋力など様々な要因が考えられるが,これら交絡因子を調整した上で脚長差と荷重率との関連性を明らかにした報告は少ない。本研究ではTHA例におけるPLLDおよびX線学的脚長差と術側下肢荷重率との関連性を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は当院にて片側THA施行となった連続81例のうち,立位保持が困難な3例,免荷を要する2例を除く76例(年齢:71.4±9.0歳,性別:男性11例・女性65例,術式:後側方侵入)とした。基本的属性として年齢・性別を,術前要因として疼痛・X線学的脚長差を,術後要因として術側下肢の疼痛・X線学的脚長差・PLLD・術側股伸展可動域・股外転筋力患健比・術側下肢荷重率を調査した。術後要因は術後2週の段階で測定を行った。PLLDの測定にはblock testを,術後X線学的脚長差の測定には涙痕-小転子間距離を使用し,いずれも術側が非術側よりも5mm以上延長している場合を5mm以上群,脚長差が5mm未満または非術側が術側よりも延長している場合を5mm未満群とした。下肢荷重率の測定にはWEIGHT BALANCERを使用し快適立位姿勢における30秒間の平均荷重率を算出した。データの正規性を確認した後に,対応のないt検定を使用し,PLLD5mm未満群・5mm以上群間およびX線学的脚長差5mm未満群・5mm以上群間で下肢荷重率の比較を行った。また回帰の有意性および平行性を確認した後に共変量を決定し,従属変数を下肢荷重率,独立変数をPLLDおよび術後X線学的脚長差として共分散分析を実施した。
【結果】
PLLD5mm未満群および5mm以上群の下肢荷重率は,それぞれ47.2±2.5%,43.9±4.8%であり,PLLD5mm未満群に比較して5mm以上群の下肢荷重率が有意に低値であった(p<0.01,r=0.39)。X線学的脚長差5mm未満群および5mm以上群の下肢荷重率はそれぞれ45.4±4.5%,45.3±3.2%であり,両群間に有意差を認めなかった(p=0.94,r=0.08)。共変量を術側下肢の疼痛として共分散分析を実施した結果,荷重率はPLLD5mm未満の群に比較してPLLD5mm以上の群で有意に低値を示した(F=7.76,p<0.01)。なおX線学的脚長差に関しては,共変量で調整後も5mm以上群・5mm未満群間の荷重率に有意差を認めなかった(F=0.36,p=0.55)。
【結論】
PLLDは疼痛の影響から独立して下肢荷重率と関連することが明らかとなった。下肢荷重率の改善にはPLLD改善の必要性が示唆される。