[O-MT-18-5] 大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行した症例に対する術後早期の神経筋電気刺激の効果
SLR能力の獲得日数と大腿四頭筋筋力に着目して
Keywords:大腿骨頚部骨折, SLR, 大腿四頭筋筋力
【はじめに,目的】
高齢者の大腿骨頚部骨折受傷後の歩行獲得因子として大腿四頭筋筋力が重要であることが報告されている。臨床においてはこの大腿四頭筋筋力を簡便に評価するために下肢伸展挙上(以下,SLR)能力が注目されている。また,過去の報告から術後早期より神経筋電気刺激治療(以下,NMES)を併用した筋力強化法が有用であることが示唆されているが,大腿骨頚部骨折術後症例に対するNMESの効果を示した報告は少ない。近年,大腿四頭筋筋力とSLR能力の関係性が機能的予後に影響を及ぼすといった報告が見受けられるなか,NMESを術後早期から併用することはより有用である可能性が考えられる。そこで,本研究は大腿骨頚部骨折術後症例に対して,NMESを術後早期から実施することでSLR能力の獲得日数と患側大腿四頭筋筋力に影響を及ぼすかどうかを検討することを目的とした。
【方法】
大腿骨頚部骨折受傷後に人工骨頭置換術を施行された24名を対象とした。無作為にNMES群とコントロール群に割り付け,通常の運動療法を全症例に実施した。NMESは術後翌日から開始し,電気刺激に合わせて膝伸展運動を毎日20分間実施した。電気刺激治療器(ESPURGE,伊藤超短波社製)を用いて二相性パルス波,パルス幅300μs,80pps,運動レベルの耐えうる最大強度でON:OFF時間=5:7秒に設定し,自着性電極(PALS 5cm×9cm,Axelgaard社製)を患側大腿四頭筋に4枚貼付した。評価項目として,SLR能力は背臥位,自動運動にて膝関節伸展位で股関節30°屈曲挙上可能なレベルを能力獲得とし,患側大腿四頭筋筋力をハンドヘルドダイナモメーター(μtasF-1,アニマ社製)で毎日計測し,体重で除した値を算出した。統計解析はSLR能力の獲得日数および患側筋力を群間比較するために対応のないt検定を用いた。尚,コントロール群の患側筋力はNMES群のSLR能力の平均獲得日数に合わせて,同じ日数で測定した筋力を採用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
SLR能力の獲得日数に関してはNMES群が3.5±2.39日に対してコントロール群が7.25±4.65日であり,NMES群において有意に早かった(p<0.05)。また,NMES群のSLR能力の獲得日数の平均が術後3日目であり,その時点での患側大腿四頭筋筋力はNMES群・コントロール群それぞれで0.18±0.08,0.11±0.04kgf/kgでありNMES群において有意に高値を示した(p<0.05)。
【結論】
先行研究においてSLR獲得日数は本研究のコントロール群と同程度の術後7日前後と報告されているが,大腿骨頚部骨折術後翌日からNMESを併用した筋力強化を実施したことで,大腿四頭筋筋力が早期に改善し,SLR能力の早期獲得に繋がったと考えられる。今後はSLR能力獲得に関連した離床動作との関連や歩行能力の調査も必要であると考えている。
高齢者の大腿骨頚部骨折受傷後の歩行獲得因子として大腿四頭筋筋力が重要であることが報告されている。臨床においてはこの大腿四頭筋筋力を簡便に評価するために下肢伸展挙上(以下,SLR)能力が注目されている。また,過去の報告から術後早期より神経筋電気刺激治療(以下,NMES)を併用した筋力強化法が有用であることが示唆されているが,大腿骨頚部骨折術後症例に対するNMESの効果を示した報告は少ない。近年,大腿四頭筋筋力とSLR能力の関係性が機能的予後に影響を及ぼすといった報告が見受けられるなか,NMESを術後早期から併用することはより有用である可能性が考えられる。そこで,本研究は大腿骨頚部骨折術後症例に対して,NMESを術後早期から実施することでSLR能力の獲得日数と患側大腿四頭筋筋力に影響を及ぼすかどうかを検討することを目的とした。
【方法】
大腿骨頚部骨折受傷後に人工骨頭置換術を施行された24名を対象とした。無作為にNMES群とコントロール群に割り付け,通常の運動療法を全症例に実施した。NMESは術後翌日から開始し,電気刺激に合わせて膝伸展運動を毎日20分間実施した。電気刺激治療器(ESPURGE,伊藤超短波社製)を用いて二相性パルス波,パルス幅300μs,80pps,運動レベルの耐えうる最大強度でON:OFF時間=5:7秒に設定し,自着性電極(PALS 5cm×9cm,Axelgaard社製)を患側大腿四頭筋に4枚貼付した。評価項目として,SLR能力は背臥位,自動運動にて膝関節伸展位で股関節30°屈曲挙上可能なレベルを能力獲得とし,患側大腿四頭筋筋力をハンドヘルドダイナモメーター(μtasF-1,アニマ社製)で毎日計測し,体重で除した値を算出した。統計解析はSLR能力の獲得日数および患側筋力を群間比較するために対応のないt検定を用いた。尚,コントロール群の患側筋力はNMES群のSLR能力の平均獲得日数に合わせて,同じ日数で測定した筋力を採用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
SLR能力の獲得日数に関してはNMES群が3.5±2.39日に対してコントロール群が7.25±4.65日であり,NMES群において有意に早かった(p<0.05)。また,NMES群のSLR能力の獲得日数の平均が術後3日目であり,その時点での患側大腿四頭筋筋力はNMES群・コントロール群それぞれで0.18±0.08,0.11±0.04kgf/kgでありNMES群において有意に高値を示した(p<0.05)。
【結論】
先行研究においてSLR獲得日数は本研究のコントロール群と同程度の術後7日前後と報告されているが,大腿骨頚部骨折術後翌日からNMESを併用した筋力強化を実施したことで,大腿四頭筋筋力が早期に改善し,SLR能力の早期獲得に繋がったと考えられる。今後はSLR能力獲得に関連した離床動作との関連や歩行能力の調査も必要であると考えている。