[O-NV-01-5] 脳卒中片麻痺患者における歩行練習アシスト(GEAR)練習が退院時の歩容に与える影響
Keywords:脳卒中片麻痺, 歩行練習, ロボット
【はじめに,目的】
歩行練習アシスト(Gait Exercise Assist Robot;以下,GEAR)は,脳卒中片麻痺者の歩行練習支援を目的に開発されたロボットであり,立脚中の麻痺側下肢の支持性や遊脚中の膝屈曲などの様々なパラメータ変更による難易度調整が可能である。発症後早期から適切な難易度で多数歩練習を繰り返すことで,効率の良い歩行自立度の改善が期待される。
今回,GEARを用いて歩行練習をした患者(以下,GEAR群)の退院時の異常歩行の重症度を,GEARを用いずに従来通りの歩行練習をした患者(以下,従来群)と比較した。
【方法】
対象は,GEAR群は藤田保健衛生大学病院で発症後早期からGEARを用いて歩行練習した5症例とし,退院時に歩行計測を実施した。従来群は,初発脳卒中片麻痺患者の歩行データの中から,GEAR群1例に対して,GEAR群の退院時の発症後日数(以下,TAO)と麻痺の重症度(SIAS-mの下肢合計,以下SIAS-LT)が同程度の1症例を選出し,両群の異常歩行の重症度を比較した。GEAR群の内訳は,年齢:66.0±6.3歳,TAO:129.0±47.8日,SIAS-LT:7.6±1.1,トレッドミル歩行速度:1.7±1.1,GEAR練習日数:29.2±16.3日,従来群の内訳は,年齢:53.4±8.8歳,TAO:154.6±104.7日,SIAS-LT:7.6±1.1,トレッドミル歩行速度:1.5±0.6であった。
歩行計測は,対象の平地快適歩行速度でのトレッドミル歩行(手すり,短下肢装具使用)を,三次元動作分析システムKinemaTracerⓇ(キッセイコムテック社製)を用いて,サンプリング周波数60Hzで20秒間記録した。得られたデータから,脳卒中片麻痺患者に特徴的な12種類の異常歩行の重症度の指標値を算出,比較した。統計学的処理は対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
両群の年齢と歩行速度に有意差はなかった。従来群において,遊脚期の膝屈曲不全,分回し歩行,骨盤挙上の値が健常範囲を超えて異常を示し,GEAR群ではこれらの指標値が有意に小さかった(遊脚期の膝屈曲不全:GEAR群40.1±14.0,従来群68.5±18.0,分回し歩行:GEAR群7.5±4.1,従来群11.7±2.0,骨盤挙上:GEAR群4.2±1.7,従来群7.7±2.3)。
【結論】
遊脚期の膝屈曲不全は機能障害を示し,分回し歩行と骨盤挙上は麻痺側下肢を振り出すための代償動作である。発症後早期から麻痺側の膝を屈曲させて麻痺側下肢の振り出しをアシストすることにより,麻痺側下肢の振り出しにおける機能障害の改善と過剰な代償の抑制につながったと考えた。
歩行練習アシスト(Gait Exercise Assist Robot;以下,GEAR)は,脳卒中片麻痺者の歩行練習支援を目的に開発されたロボットであり,立脚中の麻痺側下肢の支持性や遊脚中の膝屈曲などの様々なパラメータ変更による難易度調整が可能である。発症後早期から適切な難易度で多数歩練習を繰り返すことで,効率の良い歩行自立度の改善が期待される。
今回,GEARを用いて歩行練習をした患者(以下,GEAR群)の退院時の異常歩行の重症度を,GEARを用いずに従来通りの歩行練習をした患者(以下,従来群)と比較した。
【方法】
対象は,GEAR群は藤田保健衛生大学病院で発症後早期からGEARを用いて歩行練習した5症例とし,退院時に歩行計測を実施した。従来群は,初発脳卒中片麻痺患者の歩行データの中から,GEAR群1例に対して,GEAR群の退院時の発症後日数(以下,TAO)と麻痺の重症度(SIAS-mの下肢合計,以下SIAS-LT)が同程度の1症例を選出し,両群の異常歩行の重症度を比較した。GEAR群の内訳は,年齢:66.0±6.3歳,TAO:129.0±47.8日,SIAS-LT:7.6±1.1,トレッドミル歩行速度:1.7±1.1,GEAR練習日数:29.2±16.3日,従来群の内訳は,年齢:53.4±8.8歳,TAO:154.6±104.7日,SIAS-LT:7.6±1.1,トレッドミル歩行速度:1.5±0.6であった。
歩行計測は,対象の平地快適歩行速度でのトレッドミル歩行(手すり,短下肢装具使用)を,三次元動作分析システムKinemaTracerⓇ(キッセイコムテック社製)を用いて,サンプリング周波数60Hzで20秒間記録した。得られたデータから,脳卒中片麻痺患者に特徴的な12種類の異常歩行の重症度の指標値を算出,比較した。統計学的処理は対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
両群の年齢と歩行速度に有意差はなかった。従来群において,遊脚期の膝屈曲不全,分回し歩行,骨盤挙上の値が健常範囲を超えて異常を示し,GEAR群ではこれらの指標値が有意に小さかった(遊脚期の膝屈曲不全:GEAR群40.1±14.0,従来群68.5±18.0,分回し歩行:GEAR群7.5±4.1,従来群11.7±2.0,骨盤挙上:GEAR群4.2±1.7,従来群7.7±2.3)。
【結論】
遊脚期の膝屈曲不全は機能障害を示し,分回し歩行と骨盤挙上は麻痺側下肢を振り出すための代償動作である。発症後早期から麻痺側の膝を屈曲させて麻痺側下肢の振り出しをアシストすることにより,麻痺側下肢の振り出しにおける機能障害の改善と過剰な代償の抑制につながったと考えた。