The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-03] 口述演題(神経)03

Fri. May 12, 2017 2:10 PM - 3:10 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:斎藤 均(横浜市立市民病院リハビリテーション部)

日本神経理学療法学会

[O-NV-03-3] Branch Atheromatous Diseaseの早期離床の安全性についての検討

菊谷 明弘, 皆方 伸, 中瀬 泰然 (秋田県立脳血管研究センター)

Keywords:Branch Atheromatous Disease, 早期離床, 進行性脳梗塞

【はじめに,目的】

Branch Atheromatous disease(以下,BAD)は穿通枝の母動脈からの分枝部近傍の閉塞によって生じ,レンズ核線条体動脈外側枝(以下,LSA)領域に多いとされている。急性期脳卒中リハビリテーションにおいて,早期離床が重要であることは一般化している。しかし,BADは急性期に進行性脳卒中の経過を取ることが多く,脳梗塞巣の拡大を伴うこともしばしば観察され,早期の積極的離床は控えた方が良いとする報告も散見される。そこで本研究の目的は,BADの梗塞巣の拡大,神経症状の増悪と早期離床との関係について調査することである。

【方法】

対象は,2013年1月から2015年12月までの間,発症から48時間以内に当院入院時のMRI検査で診断された脳血管障害の既往のないLSA領域のBAD患者38例とした。調査項目は診療録から抽出し,①梗塞巣拡大の有無と神経症状増悪の有無との関係,②入院初日からの離床の有無と梗塞巣拡大の有無との関係,③入院初日からの離床の有無と神経症状増悪の有無との関係を検討した。梗塞巣拡大の有無は,入院当日のMRIと入院7日以内のフォローMRIから同一の脳卒中専門医が判断した。統計解析はχ2乗検定を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

①梗塞巣が拡大した16例中,神経症状増悪ありは6例(37.5%),非拡大22例中,神経症状増悪ありは6例(27.3%)と有意差を認めなかった。②入院初日から離床を開始した25例中,梗塞巣拡大ありは9例(36%),初日以降に離床を開始した13例中,梗塞巣拡大ありは7例(53.8%)と有意差を認めなかった。③入院初日から離床を開始した25例中,神経症状増悪ありは7例(28%),初日以降に離床を開始した13例中,神経症状増悪ありは5例(38.5%)と有意差を認めなかった。

【結論】

今回の結果から,神経症状の増悪は梗塞巣の拡大群,非拡大群にそれぞれ半数ずつみられた。脳の虚血部位周辺には虚血後も生存している部分が存在するが,脳虚血に起因するフリーラジカル産生に伴う神経細胞や血管内皮細胞の酸化障害によって,一部は遅発性神経細胞死に至るとされている。そのため,梗塞巣の拡大を伴わずに神経症状の増悪を認めた人数も半数みられたものと考えられた。また,入院早期から離床を開始することが梗塞巣の拡大や神経症状の変動に関与するとは言い難かった。このことから,適切な病型診断・医療処置を施行された状況下でも神経症状の変化に留意した上で理学療法を実施するならば,BADは安全に離床を進めることが可能であることが示唆された。