[O-NV-03-5] くも膜下出血患者の急性期機能予後に影響を与える要因の検討
Keywords:くも膜下出血, 急性期, 機能予後
【はじめに,目的】
脳卒中治療ガイドライン2015では,予後予測した上でリハビリテーションプログラムを実施することを勧めている。特に近年の医療制度では,脳卒中急性期時点での機能予後予測による転帰先の検討は重要課題となっている。本研究の目的は,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)例に焦点を当て,急性期病棟退棟時の良好な機能予後に関連する要因を明らかにすることである。
【方法】
対象は,平成25年1月から平成28年12月までに当センターに入院し,理学療法を実施したSAH例113名(男性40名,女性73名。平均年齢63.1±14.5歳)である。除外基準は,①発症から72時間以内の入院,②死亡退院,③入院前modified Rankin Scale(以下,mRS)3以上とした。検討方法は後方視的検討とし,診療録から患者属性の他,急性期病棟滞在日数,入院時の重症度(World Federation of Neurological Surgeones;WFNS分類),入院から離床開始までの日数,脳血管攣縮の有無,遅発性水頭症の有無,急性期病棟退棟時のmRS(以下,退棟時mRS)を抽出した。急性期病棟退棟時の機能予後に関連する因子を検討するため,急性期病棟滞在日数を生存変数,機能予後を目的変数として,年齢,重症度,離床開始までの日数,脳血管攣縮の有無,遅発性水頭症の有無を説明変数としたCox比例ハザード分析を行った。なお,機能予後は退棟時mRSを基準とし,mRS≦2を良好,mRS≧3を不良と定義した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
急性期病棟退棟時の機能予後良好は78名(69%)であった。機能予後に関連する因子の検討では,年齢(ハザード比0.97,P<0.001),重症度(ハザード比0.88,P<0.01),離床開始までの日数(ハザード比0.88,P<0.0001),水頭症の有無(ハザード比0.15,P<0.001)が抽出された。
【結論】
SAH例の良好な機能予後に関連する要因は,若年,重症度が軽症,早期からの離床開始,遅発性水頭症の合併がないことであった。年齢や発症時の重症度が機能予後に影響することは,これまでの研究の結果と一致する。SAH例の離床時期ついては,脳血管攣縮に配慮した術後管理が必要であり,個別に検討することが勧められている。早期離床の安全性は十分に確認されていないが,可能な限り実施することは急性期段階での機能予後に影響すると考えられた。また,遅発性水頭症はSAH発症から1~2ヵ月後に好発し,発症によりシャント術などの治療を必要とする。水頭症の発症は入院期間を延長させるため,理学療法士は介入中その兆候の把握に努め,医療チーム内で共有していくことが必要と考えられた。
脳卒中治療ガイドライン2015では,予後予測した上でリハビリテーションプログラムを実施することを勧めている。特に近年の医療制度では,脳卒中急性期時点での機能予後予測による転帰先の検討は重要課題となっている。本研究の目的は,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)例に焦点を当て,急性期病棟退棟時の良好な機能予後に関連する要因を明らかにすることである。
【方法】
対象は,平成25年1月から平成28年12月までに当センターに入院し,理学療法を実施したSAH例113名(男性40名,女性73名。平均年齢63.1±14.5歳)である。除外基準は,①発症から72時間以内の入院,②死亡退院,③入院前modified Rankin Scale(以下,mRS)3以上とした。検討方法は後方視的検討とし,診療録から患者属性の他,急性期病棟滞在日数,入院時の重症度(World Federation of Neurological Surgeones;WFNS分類),入院から離床開始までの日数,脳血管攣縮の有無,遅発性水頭症の有無,急性期病棟退棟時のmRS(以下,退棟時mRS)を抽出した。急性期病棟退棟時の機能予後に関連する因子を検討するため,急性期病棟滞在日数を生存変数,機能予後を目的変数として,年齢,重症度,離床開始までの日数,脳血管攣縮の有無,遅発性水頭症の有無を説明変数としたCox比例ハザード分析を行った。なお,機能予後は退棟時mRSを基準とし,mRS≦2を良好,mRS≧3を不良と定義した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
急性期病棟退棟時の機能予後良好は78名(69%)であった。機能予後に関連する因子の検討では,年齢(ハザード比0.97,P<0.001),重症度(ハザード比0.88,P<0.01),離床開始までの日数(ハザード比0.88,P<0.0001),水頭症の有無(ハザード比0.15,P<0.001)が抽出された。
【結論】
SAH例の良好な機能予後に関連する要因は,若年,重症度が軽症,早期からの離床開始,遅発性水頭症の合併がないことであった。年齢や発症時の重症度が機能予後に影響することは,これまでの研究の結果と一致する。SAH例の離床時期ついては,脳血管攣縮に配慮した術後管理が必要であり,個別に検討することが勧められている。早期離床の安全性は十分に確認されていないが,可能な限り実施することは急性期段階での機能予後に影響すると考えられた。また,遅発性水頭症はSAH発症から1~2ヵ月後に好発し,発症によりシャント術などの治療を必要とする。水頭症の発症は入院期間を延長させるため,理学療法士は介入中その兆候の把握に努め,医療チーム内で共有していくことが必要と考えられた。