The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-10] 口述演題(神経)10

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:高村 浩司(健康科学大学理学療法学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-10-4] 高齢脳卒中患者における回復期病院退院時の歩行自立可否に影響する発症2週目までの要因分析と歩行自立予測モデル作成

馬井 孝徳 (倉敷中央病院リハビリテーション部)

Keywords:脳卒中, 歩行, 予後予測

【はじめに,目的】脳卒中リハビリテーション(以下リハ)において,急性期からの予後予測に関する報告が多数されている。しかし,入院時は意識障害や急性期治療が行われるため,日常生活動作が制限されている場合があり,発症2週時に予後予測を行うことの妥当性が報告されている。本研究は開始時と2週時の理学療法評価から,高齢脳卒中患者の回復期病院退院時の歩行自立可否の要因分析と予測モデルを作成することを目的とした。

【方法】対象は2014年1月~2015年6月に一側テント上病変にて当院に入院し,リハを施行した連続459名のうち,65歳未満,クモ膜下出血,死亡例,発症後2週間以内の退院例,データ欠損例を除外し,回復期病院退院時に,当院へ経過報告書の返信があった128例を対象とし,後方視的に実施した。回復期病院退院時の歩行のFunctional Independence Measure(以下FIM)6以上を歩行自立群,FIM5以下を歩行非自立群とし,以下の項目について2群間比較を行った。性別,初回座位テスト可否,半側空間無視有無,pushing有無についてはカイ2剰検定を行い,年齢,入院前modified Rankin Scale(以下mRS),リハ開始までの日数,在院日数,開始時Japan Coma Scale(以下JCS),開始時National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS),開始時上下肢上田式12段階片麻痺機能検査(以下上肢12Gr,下肢12Gr),開始時Trunk Control Test(以下TCT),開始時Functional Ambulation Categories(以下FAC),開始時Ability for Basic Movement Scale-2(以下ABMS2),開始時FIM,2週時FAC,2週時ABMS2,2週時FIM,についてはMann-Whiteny-U検定を行った。2群間比較で有意差を認めた各変数間の多重共線性を考慮し,相関係数の絶対値が0.8以上であった場合は臨床的に有意義と考える変数を選択した。採択された説明変数に対して,多重ロジスティック回帰分析を実施した。統計ソフトはSPSS Statistics22を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】単変量解析では性別でP<0.05,初回座位テスト可否,pushing有無,年齢,入院前mRS,開始時JCS,開始時NIHSS,開始時上肢・下肢12Gr,開始時FIM,開始時TCT,開始時FAC,開始時ABMS2,2週時FIM,2週時FAC,2週時ABMS2でP<0.01の有意差を認めた。ロジスティック回帰分析では,入院前mRS(オッズ比14.731,95%信頼区間3.314-65.478)と2週時FIM(オッズ比0.923,95%信頼区間0.893-0.950)が採択された。歩行自立可否の予測式はscore=4.162+2.690×入院前mRS+(-0.08)×2週時FIMにて,P=1/(1-exp(-1×score))を算出し,P<0.5で歩行自立,0.5≦Pで歩行非自立となった。予測式の判別適中率は91.0%,感度90.5%,特異度91.5%,陽性的中率91.9%,陰性的中率90.0%であった。HosmerとLemeshowの検定は0.932(p>0.05)と適合性が高く,精度は良好であった。

【結論】高齢脳卒中患者における回復期病院退院時の歩行自立可否は,入院前mRSと発症2週時FIMにて予測可能であり,本研究の歩行予測モデルは,急性期脳卒中理学療法を行う際の長期目標設定の一助になり得る。