[O-NV-10-5] 入院時に起居動作が自立していない回復期脳卒中患者の退院時歩行自立を予測する要因について
Keywords:脳卒中, 予後予測, 起居動作
【はじめに,目的】
脳卒中の予後予測において,機能的重症例に焦点をあてた機能的予後に関する検討は少ない。そこで,本研究の目的は,起居動作が自立しないまま回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)に入院した脳卒中患者が,退院時に歩行動作が自立できるか否かを推察するために重要な入院時点での患者情報について探索することとした。
【方法】
対象は,船橋市立リハビリテーション病院の回復期病棟に入院した初発の脳梗塞もしくは脳内出血患者145例とした。このうち,入院当日の病棟カンファレンスで起居動作が自立していると判断された42例(28.9%)を除く103例(男性59例,女性44例,平均年齢69±12歳)を分析の対象とした。
研究デザインは後方視的観察研究であり,アウトカムを退院時病棟内歩行自立と定め,これに関連する入院時情報を調査した。
入院時情報は,対象の基本的属性(性別,年齢,身長,体重),医学的情報(疾患種別,損傷側,発症からこの入院までの日数),高次脳機能障害の有無(意識障害,失語症,失行症,半側空間無視,注意障害,病識低下,記憶障害),機能障害(下肢Brunnstrom stage(BRS)がIII以下である,中等度以上の感覚障害がある,健側筋力が低下している),動作能力(Berg Balance Scale(BBS))とした。
統計学的解析として,退院までに病棟内歩行が自立した者(自立群)とそうでない者(非自立群)の2群に分類し,入院時の情報について単変量解析(対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定による群間比較)を行った。次に,単変量解析にて有意差を認めた変数を独立変数,退院時病棟内歩行自立を従属変数とした多変量解析(多重ロジスティック回帰分析)を行った。最後に,多変量解析にて有意性が維持された連続変数についてReceiver Operating Characteristic(ROC)解析を行い,退院時病棟内歩行自立に対するカットオフ値を求めた。
【結果】
自立群は47例(45.6%),非自立群は56例(54.4%)であった。群間比較にて,自立群は,非自立群に比べ,有意に男性が多く(p<0.05),若く(p<0.01),高次脳機能障害の該当数が少なく(p<0.05),BRSが低い例が少なく(p<0.01),健側筋力低下例が少なく(p<0.001),BBSが高かった(p<0.001)。多重ロジスティック回帰分析にて,3項目以上の高次脳機能障害を有すること(オッズ比0.17,p<0.05)とBBS(オッズ比1.11,p<0.001)が,交絡因子での調整後も有意性を維持した。ROC解析にて,BBSのカットオフ値は22(感度0.76,特異度0.91,曲線下面積0.86,p<0.001)と算出された。
【結論】
初発脳卒中患者において,回復期病棟への入院までに起居動作が自立していなくとも,高次脳機能障害が少なく,座位や起立などの抗重力能力が高ければ(BBS>22),回復期病棟を退院するまでに整備された屋内環境での歩行が自立する可能性が高まる。
脳卒中の予後予測において,機能的重症例に焦点をあてた機能的予後に関する検討は少ない。そこで,本研究の目的は,起居動作が自立しないまま回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)に入院した脳卒中患者が,退院時に歩行動作が自立できるか否かを推察するために重要な入院時点での患者情報について探索することとした。
【方法】
対象は,船橋市立リハビリテーション病院の回復期病棟に入院した初発の脳梗塞もしくは脳内出血患者145例とした。このうち,入院当日の病棟カンファレンスで起居動作が自立していると判断された42例(28.9%)を除く103例(男性59例,女性44例,平均年齢69±12歳)を分析の対象とした。
研究デザインは後方視的観察研究であり,アウトカムを退院時病棟内歩行自立と定め,これに関連する入院時情報を調査した。
入院時情報は,対象の基本的属性(性別,年齢,身長,体重),医学的情報(疾患種別,損傷側,発症からこの入院までの日数),高次脳機能障害の有無(意識障害,失語症,失行症,半側空間無視,注意障害,病識低下,記憶障害),機能障害(下肢Brunnstrom stage(BRS)がIII以下である,中等度以上の感覚障害がある,健側筋力が低下している),動作能力(Berg Balance Scale(BBS))とした。
統計学的解析として,退院までに病棟内歩行が自立した者(自立群)とそうでない者(非自立群)の2群に分類し,入院時の情報について単変量解析(対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定による群間比較)を行った。次に,単変量解析にて有意差を認めた変数を独立変数,退院時病棟内歩行自立を従属変数とした多変量解析(多重ロジスティック回帰分析)を行った。最後に,多変量解析にて有意性が維持された連続変数についてReceiver Operating Characteristic(ROC)解析を行い,退院時病棟内歩行自立に対するカットオフ値を求めた。
【結果】
自立群は47例(45.6%),非自立群は56例(54.4%)であった。群間比較にて,自立群は,非自立群に比べ,有意に男性が多く(p<0.05),若く(p<0.01),高次脳機能障害の該当数が少なく(p<0.05),BRSが低い例が少なく(p<0.01),健側筋力低下例が少なく(p<0.001),BBSが高かった(p<0.001)。多重ロジスティック回帰分析にて,3項目以上の高次脳機能障害を有すること(オッズ比0.17,p<0.05)とBBS(オッズ比1.11,p<0.001)が,交絡因子での調整後も有意性を維持した。ROC解析にて,BBSのカットオフ値は22(感度0.76,特異度0.91,曲線下面積0.86,p<0.001)と算出された。
【結論】
初発脳卒中患者において,回復期病棟への入院までに起居動作が自立していなくとも,高次脳機能障害が少なく,座位や起立などの抗重力能力が高ければ(BBS>22),回復期病棟を退院するまでに整備された屋内環境での歩行が自立する可能性が高まる。