The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-10] 口述演題(神経)10

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:高村 浩司(健康科学大学理学療法学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-10-6] 脳損傷後片麻痺者における歩行麻痺側片脚支持期の重心の前方移動についての検証

木村 和夏1,2, 大畑 光司1, 脇田 正徳1,3, 川崎 詩歩未1, 浅井 結1, 前田 絢香1, 大門 瑞希1, 渡邉 怜美4, 山田 重人1 (1.京都大学大学院医学研究科健康科学系専攻, 2.十条武田リハビリテーション病院, 3.関西医科大学附属枚方病院, 4.京都大学医学部人間健康科学系)

Keywords:麻痺側片脚支持期, COM, COP

【はじめに,目的】

歩行の片脚支持期における倒立振子(IP)モデルではcentre of mass(COM)とcentre of pressure(COP)の関係性が重要とされる。IPモデルでは端点を中心にCOMが前方移動するが実際の歩行動作ではCOM・COPともに前方移動するためより動的な動きが要求される。片麻痺者の歩行動作における問題点として麻痺側片脚支持期に前方への重心移動が困難となり転倒リスクが高くなることが挙げられる。しかし,片麻痺者の歩行動作におけるCOMとCOPの前方移動の関係性について実証的な検証は少ない。本研究の目的は,片麻痺者の歩行動作における麻痺側片脚支持期の体幹加速度とCOPの前方移動を測定し,油圧底屈制動付短下肢装具(GS)装着の有無における各パラメーターの変化とその関連性について検証することである。




【方法】

対象者は脳損傷後片麻痺者17名(53.7±14.4歳,発症年数8.4±5.2,Fugl-Meyer Assessment下肢22.5±4.7)とした。測定課題は床反力計(KISTLER社製)を設置した3mの歩行路上での快適歩行とし,測定は杖を使用せずに実施した。GS装着有無の2条件で歩行を行い麻痺側片脚支持期の各歩行パラメーターを測定した。背側第3腰椎レベルに貼付した加速度計(Noraxon社製3軸DTS加速度計)と床反力計を用いてそれぞれ前後方向(AP)の平均体幹加速度(ACC)とCOPの平均変位距離及びCOPの平均速度(COP速度)を歩行パラメーターとして計測した。また装具の有無による10m歩行速度を計測した。COPの変位距離については各対象者の足長の割合で%COP距離として表した。解析は健側踵と足尖に貼付した加速度計から麻痺側片脚支持期を同定し麻痺側片脚支持期のACC,%COP距離と速度を求めた。また,それぞれのGS装着の有無による変化量(Δ)も算出した。統計解析としてPaired T-testとPearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数を用いて検討した(有意水準5%)。




【結果】

相関関係ではGS装着の有無に関わらず%COP距離と歩行速度(GS有 r=0.64,p=0.006,GS無 r=0.586,p=0.013),COP速度と歩行速度(GS有 r=0.491,p=0.045,GS無 r=0.850,p<0.001)が有意に相関していた。ACCでは%COP距離と速度および歩行速度は相関を示さなかった。GS装着により%COP距離は有意に増加(p=0.05)したが,COP速度,ACC,歩行速度は有意差がなかった。GS装着による変化量のΔ%COP距離,ΔACC,Δ歩行速度のそれぞれの間に有意な相関はなかった。




【結論】

本研究の結果から%COP距離や速度と歩行速度に相関関係を認め,これまで多く報告されている片麻痺患者の歩行特性と一致した。さらにGS装着により%COP距離が増加した。しかし,%COP距離が増加しても歩行速度や体幹加速度は変化がなかった。%COP距離が増加しても即時的に歩行速度の改善に繋がるわけではないことが示唆される。また体幹加速度は歩行速度と関連しておらず,たとえ片脚支持期にCOMを加速できたとしても両脚支持期に減速が生じるため一定の傾向にならないためと考える。