[O-NV-13-5] 脳卒中片麻痺者におけるテーブル支持30秒椅子立ち上がりテストと移乗動作の関連性およびカットオフ値の検討
Keywords:脳卒中片麻痺, 30秒椅子立ち上がりテスト, 移乗動作
【はじめに,目的】
歩行による移動が困難な脳卒中片麻痺者(以下,片麻痺者)にとって,移乗動作の確立は日常生活を拡大するために重要である。しかし,その自立の可否を判断することは,他の動作同様に難しい。
片麻痺者の移乗動作の構成要素には立ち上がりが含まれる。立ち上がり能力を判定する手法として,「30秒椅子立ち上がりテスト」(以下,CS-30)がある。CS-30は現在ではバランス等を含む複合的な運動機能評価法として使用されている。CS-30を肢体不自由のある片麻痺者へ適応させるにあたり,我々は非麻痺側上肢をテーブルに触れた状態で行う「テーブル支持30秒椅子立ち上がりテスト」(以下,CS-30ts)を考案した。CS-30tsを片麻痺者に実施した結果,その再現性は高く,また,移乗動作能力・麻痺側膝伸展筋力(以下,麻痺側下肢筋力)と相関することを確認した(第50回本学会)。
今回はCS-30tsが移乗動作の自立の可否を判断する為のテストバッテリーとして有益か否かを検討する。
【方法】
対象は当院回復期病棟入院中の片麻痺者39例(男性27名,女性12名)とした。平均年齢57.5±11歳,下肢BRSIII6名,IV10名,V18名,VI5名であった。採用基準は上肢を使用して連続した起立動作ができる者とした。測定項目は1)年齢2)発症日数3)下腿長4)FIM認知項目合計点5)麻痺側下肢筋力6)CS-30tsとした。
自立度に影響を与える因子の検討は,対象を移乗動作自立群・非自立群に分け1)~6)を対応の無いT検定,もしくはMann-Whitney検定を行い,有意差が認められた項目に対してロジスティック回帰分析を行った。また,ROC曲線を作成し自立群・非自立群におけるCS-30tsの実施回数のカットオフ値を求めた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
単変量解析の結果,自立群・非自立群の間に有意な差を認めたのは麻痺側下肢筋力とCS-30tsであった。この2項目においてロジスティック回帰分析を行い,移乗動作の自立度に影響する変数として麻痺側下肢筋力(オッズ比3.1,p<0.05)とCS-30ts(オッズ比1.2,p<0.1)が選択された。移乗動作が自立するためのカットオフ値は,12.2回(感度79%,特異度68%,判別的中率79.5%)であり,ROC曲線下面積は0.78であった。
【結論】
移乗動作の自立度に影響を与える因子として,麻痺側下肢筋力とCS-30tsが採択された。麻痺側下肢筋力は移乗動作との関係が有意だったのに対して,CS-30tsは有意傾向にとどまった。
片麻痺者の移乗動作の構成要素には,立ち上がりが含まれる。また,移乗動作には麻痺側下肢筋力が立ち上がりを構成する機能として深く関わる。一方,CS-30tsは立ち上がりそのものを捉えることで移乗動作を反映する。しかし,CS-30tsの場合は計測される値が反復運動であるため,反復を問われることのない移乗動作の成否との間に乖離が生じ,有意性に影響したと考える。今回得られたカットオフ値は,移乗動作の自立を判定する参考にはなりうるが,より感度の高い値を得るにはさらなる検討が必要である。
歩行による移動が困難な脳卒中片麻痺者(以下,片麻痺者)にとって,移乗動作の確立は日常生活を拡大するために重要である。しかし,その自立の可否を判断することは,他の動作同様に難しい。
片麻痺者の移乗動作の構成要素には立ち上がりが含まれる。立ち上がり能力を判定する手法として,「30秒椅子立ち上がりテスト」(以下,CS-30)がある。CS-30は現在ではバランス等を含む複合的な運動機能評価法として使用されている。CS-30を肢体不自由のある片麻痺者へ適応させるにあたり,我々は非麻痺側上肢をテーブルに触れた状態で行う「テーブル支持30秒椅子立ち上がりテスト」(以下,CS-30ts)を考案した。CS-30tsを片麻痺者に実施した結果,その再現性は高く,また,移乗動作能力・麻痺側膝伸展筋力(以下,麻痺側下肢筋力)と相関することを確認した(第50回本学会)。
今回はCS-30tsが移乗動作の自立の可否を判断する為のテストバッテリーとして有益か否かを検討する。
【方法】
対象は当院回復期病棟入院中の片麻痺者39例(男性27名,女性12名)とした。平均年齢57.5±11歳,下肢BRSIII6名,IV10名,V18名,VI5名であった。採用基準は上肢を使用して連続した起立動作ができる者とした。測定項目は1)年齢2)発症日数3)下腿長4)FIM認知項目合計点5)麻痺側下肢筋力6)CS-30tsとした。
自立度に影響を与える因子の検討は,対象を移乗動作自立群・非自立群に分け1)~6)を対応の無いT検定,もしくはMann-Whitney検定を行い,有意差が認められた項目に対してロジスティック回帰分析を行った。また,ROC曲線を作成し自立群・非自立群におけるCS-30tsの実施回数のカットオフ値を求めた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
単変量解析の結果,自立群・非自立群の間に有意な差を認めたのは麻痺側下肢筋力とCS-30tsであった。この2項目においてロジスティック回帰分析を行い,移乗動作の自立度に影響する変数として麻痺側下肢筋力(オッズ比3.1,p<0.05)とCS-30ts(オッズ比1.2,p<0.1)が選択された。移乗動作が自立するためのカットオフ値は,12.2回(感度79%,特異度68%,判別的中率79.5%)であり,ROC曲線下面積は0.78であった。
【結論】
移乗動作の自立度に影響を与える因子として,麻痺側下肢筋力とCS-30tsが採択された。麻痺側下肢筋力は移乗動作との関係が有意だったのに対して,CS-30tsは有意傾向にとどまった。
片麻痺者の移乗動作の構成要素には,立ち上がりが含まれる。また,移乗動作には麻痺側下肢筋力が立ち上がりを構成する機能として深く関わる。一方,CS-30tsは立ち上がりそのものを捉えることで移乗動作を反映する。しかし,CS-30tsの場合は計測される値が反復運動であるため,反復を問われることのない移乗動作の成否との間に乖離が生じ,有意性に影響したと考える。今回得られたカットオフ値は,移乗動作の自立を判定する参考にはなりうるが,より感度の高い値を得るにはさらなる検討が必要である。