[O-SK-01-3] ノイズ前庭電気刺激のノイズ強度の違いによる立位重心動揺の抑制効果について
Keywords:前庭電気刺激, 重心動揺, ノイズ
【目的】
脳卒中患者は視覚代償を用いて立位安定性を保持していることが報告されており,この視覚代償には前庭関連領域の機能低下による立位動揺が背景にある可能性が考えられている。近年,感覚閾値より低強度の前庭電気刺激(GVS:Galvanic vestibular stimulation)にノイズを付加する(n-GVS)ことで立位動揺が減少することが報告されており“感覚の装具”として注目されている。しかし立位動揺の改善に有効なノイズ強度や刺激強度については十分に明らかにされていない。本研究では健常者を対象として,立位動揺の抑制に有効なノイズ強度ならびに刺激強度について検討することとした。
【方法】
下肢および前庭機能に既往のない健常若年者15名(20.7±1.3歳)を対象とした。計測には床反力計(kistler社,サンプリング周波数1000Hz),刺激発生装置ならびにアイソレーター(日本光電),ホワイトノイズ生成用パソコンを用いた。GVS刺激強度は被験者の通電感覚閾値の30,50,70,90,110%とし,ノイズ強度は偽刺激,0dBW,-10dBWとした。
被験者にラバーを置いた床反力計上で上肢体側下垂位,踵間距離5cmの立位をとらせ,イヤーマフおよび目隠し装着の上で60秒間の重心動揺を計測した。重心動揺の測定開始から30秒後に30秒間のn-GVS(右陽極)を与えた。
動揺の評価指標として,刺激前20秒間および刺激中20秒間それぞれの前後・左右方向の二乗平均平方根(前後および左右RMS)を求めた。ノイズ強度の比較には2元配置分散分析を用い,各被験者の至適刺激強度における刺激前・後のRMSを比較した。事後検定には対応のあるt検定(有意水準5%,Bonferroni補正)を用いた。
【結果】
至適刺激強度はほとんどの被験者で通電感覚閾値の70%の強度であった。2元配置分散分析の結果,前後および左右RMSともに刺激前・後とノイズ強度間において有意な交互作用を認めた(p<0.001)。刺激前の前後RMSのノイズ強度比較では,偽刺激と-10dBWにおいて有意差が認められた(mean±SE(mm);52.8±4.4,61.4±5.5,p=0.008)。刺激後の左右RMSでは0dBWが偽刺激と比較して有意に小さかった(6.1±0.5,10.5±0.8,p<0.001)。刺激後の前後RMSでは0dBWが偽刺激,-10dBWと比較して有意に小さかった(36.9±3.5,53.5±4.6,45.7±4.0,p<0.005)。
【結論】
本研究の至適刺激強度は,ほとんどの被験者で70%であり,またノイズ強度の影響は受けないことが示された。立位動揺については,前後左右方向とも0dBWで偽刺激よりも有意に小さくなったことから,立位動揺の抑制には強いノイズをGVSに付加すると効果的であることが示唆された。
脳卒中患者は視覚代償を用いて立位安定性を保持していることが報告されており,この視覚代償には前庭関連領域の機能低下による立位動揺が背景にある可能性が考えられている。近年,感覚閾値より低強度の前庭電気刺激(GVS:Galvanic vestibular stimulation)にノイズを付加する(n-GVS)ことで立位動揺が減少することが報告されており“感覚の装具”として注目されている。しかし立位動揺の改善に有効なノイズ強度や刺激強度については十分に明らかにされていない。本研究では健常者を対象として,立位動揺の抑制に有効なノイズ強度ならびに刺激強度について検討することとした。
【方法】
下肢および前庭機能に既往のない健常若年者15名(20.7±1.3歳)を対象とした。計測には床反力計(kistler社,サンプリング周波数1000Hz),刺激発生装置ならびにアイソレーター(日本光電),ホワイトノイズ生成用パソコンを用いた。GVS刺激強度は被験者の通電感覚閾値の30,50,70,90,110%とし,ノイズ強度は偽刺激,0dBW,-10dBWとした。
被験者にラバーを置いた床反力計上で上肢体側下垂位,踵間距離5cmの立位をとらせ,イヤーマフおよび目隠し装着の上で60秒間の重心動揺を計測した。重心動揺の測定開始から30秒後に30秒間のn-GVS(右陽極)を与えた。
動揺の評価指標として,刺激前20秒間および刺激中20秒間それぞれの前後・左右方向の二乗平均平方根(前後および左右RMS)を求めた。ノイズ強度の比較には2元配置分散分析を用い,各被験者の至適刺激強度における刺激前・後のRMSを比較した。事後検定には対応のあるt検定(有意水準5%,Bonferroni補正)を用いた。
【結果】
至適刺激強度はほとんどの被験者で通電感覚閾値の70%の強度であった。2元配置分散分析の結果,前後および左右RMSともに刺激前・後とノイズ強度間において有意な交互作用を認めた(p<0.001)。刺激前の前後RMSのノイズ強度比較では,偽刺激と-10dBWにおいて有意差が認められた(mean±SE(mm);52.8±4.4,61.4±5.5,p=0.008)。刺激後の左右RMSでは0dBWが偽刺激と比較して有意に小さかった(6.1±0.5,10.5±0.8,p<0.001)。刺激後の前後RMSでは0dBWが偽刺激,-10dBWと比較して有意に小さかった(36.9±3.5,53.5±4.6,45.7±4.0,p<0.005)。
【結論】
本研究の至適刺激強度は,ほとんどの被験者で70%であり,またノイズ強度の影響は受けないことが示された。立位動揺については,前後左右方向とも0dBWで偽刺激よりも有意に小さくなったことから,立位動揺の抑制には強いノイズをGVSに付加すると効果的であることが示唆された。