[O-SK-01-4] 仮想壁を利用した産業労働者に対する立位機能評価の検証
Keywords:仮想壁, 産業労働者, 立位機能評価
【はじめに,目的】
固定点に100g以下で触れることによって生じる,指先への体性感覚入力によって姿勢が安定する現象(以下,LTC)が知られている。我々は,仮想的な壁を構成し,仮想壁に触れた反力を振動刺激として指先に与えることで立位・歩行支援を行うVirtual LTC(以下,VLTC)を提案してきた。近年,立位機能の評価として,床振動やスリップなどの機械的外乱刺激によって立位・歩行機能を評価する手法が試みられている。我々は,VLTCを用いて簡易的・定量的に立位機能を評価する方法を開発し,本研究ではこれを産業労働者に対して実施し各年代別の身体動揺について検証した。
【方法】
対象はA工場で働く産業労働者106名であった。その内訳は,20歳代は25名,30歳代は28名,40歳代は28名,50歳代は16名,60歳代は9名であった。平均年齢は,20歳代は24.5±3.1歳,30歳代は34.9±2.4歳,40歳代は44.0±2.8歳,50歳代は55.8±3.2歳,60歳代は61.8±2.2歳であった。計測には,KINECT(Microsoft社製),Wiiボード(Nintendo社製)および独自に開発した指先振動刺激装置と立位機能評価プログラムをインストールしたパーソナルコンピュータを用いた。開発した立位機能評価プログラムは60秒間中に振動刺激あり条件と振動刺激なし条件が30秒間提示される設定とした。被験者にはWiiボード上で閉脚閉眼立位とし,「壁に触れるかのように指先を軽く振りながら自然に60秒間立っていてください。途中で仮想壁がなくなりますが,そのまま立ち続けてください」との口答指示を与えた。統計解析には,年齢(20-60歳代)×タッチ条件(VLTC/No Contact,以下NC)に対して2元配置分散分析を行い,下位検定には修正Bonferroni法を用いて各条件間の比較を行った。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
身体質量中心(以下COM)の総軌跡長においては,各タッチ条件における年齢間の比較では,すべての条件において有意な差はみられなかった。一方,各年齢のタッチ条件の比較では,すべての年齢においてNCと比較してVLTCが有意に低値を示した(p<0.01)。足底圧中心(以下COP)の総軌跡長においては,各タッチ条件における年齢間の比較では,20歳代,30歳代はそれぞれ50歳代,60歳代と比較して有意に低値を示した(p<0.01)。また,40歳代は60歳代と比較して有意に低値を示した(P<0.05)が,50歳代は60歳代と比較して有意な差はなかった。
【結論】
本研究は,産業労働者の身体動揺について検証した結果,50歳以降は若年者層と比較して有意に身体動揺が大きくなることが明らかとなった。また,すべての年齢においてVLTCによる指先からの振動刺激が身体動揺を減少させる可能性が示唆された。VLTCによる身体動揺軽減効果も指先への振動刺激が姿勢制御の感覚戦略に影響したと推測されるが,今後さらに詳細な検証が必要である。
固定点に100g以下で触れることによって生じる,指先への体性感覚入力によって姿勢が安定する現象(以下,LTC)が知られている。我々は,仮想的な壁を構成し,仮想壁に触れた反力を振動刺激として指先に与えることで立位・歩行支援を行うVirtual LTC(以下,VLTC)を提案してきた。近年,立位機能の評価として,床振動やスリップなどの機械的外乱刺激によって立位・歩行機能を評価する手法が試みられている。我々は,VLTCを用いて簡易的・定量的に立位機能を評価する方法を開発し,本研究ではこれを産業労働者に対して実施し各年代別の身体動揺について検証した。
【方法】
対象はA工場で働く産業労働者106名であった。その内訳は,20歳代は25名,30歳代は28名,40歳代は28名,50歳代は16名,60歳代は9名であった。平均年齢は,20歳代は24.5±3.1歳,30歳代は34.9±2.4歳,40歳代は44.0±2.8歳,50歳代は55.8±3.2歳,60歳代は61.8±2.2歳であった。計測には,KINECT(Microsoft社製),Wiiボード(Nintendo社製)および独自に開発した指先振動刺激装置と立位機能評価プログラムをインストールしたパーソナルコンピュータを用いた。開発した立位機能評価プログラムは60秒間中に振動刺激あり条件と振動刺激なし条件が30秒間提示される設定とした。被験者にはWiiボード上で閉脚閉眼立位とし,「壁に触れるかのように指先を軽く振りながら自然に60秒間立っていてください。途中で仮想壁がなくなりますが,そのまま立ち続けてください」との口答指示を与えた。統計解析には,年齢(20-60歳代)×タッチ条件(VLTC/No Contact,以下NC)に対して2元配置分散分析を行い,下位検定には修正Bonferroni法を用いて各条件間の比較を行った。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
身体質量中心(以下COM)の総軌跡長においては,各タッチ条件における年齢間の比較では,すべての条件において有意な差はみられなかった。一方,各年齢のタッチ条件の比較では,すべての年齢においてNCと比較してVLTCが有意に低値を示した(p<0.01)。足底圧中心(以下COP)の総軌跡長においては,各タッチ条件における年齢間の比較では,20歳代,30歳代はそれぞれ50歳代,60歳代と比較して有意に低値を示した(p<0.01)。また,40歳代は60歳代と比較して有意に低値を示した(P<0.05)が,50歳代は60歳代と比較して有意な差はなかった。
【結論】
本研究は,産業労働者の身体動揺について検証した結果,50歳以降は若年者層と比較して有意に身体動揺が大きくなることが明らかとなった。また,すべての年齢においてVLTCによる指先からの振動刺激が身体動揺を減少させる可能性が示唆された。VLTCによる身体動揺軽減効果も指先への振動刺激が姿勢制御の感覚戦略に影響したと推測されるが,今後さらに詳細な検証が必要である。