The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本支援工学理学療法学会 » 口述発表

[O-SK-02] 口述演題(支援工学)02

Sat. May 13, 2017 10:50 AM - 11:50 AM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:杉原 俊一(札幌秀友会病院リハビリテーション科)

日本支援工学理学療法学会

[O-SK-02-3] HALを用いたショートステイが脳卒中片麻痺者の歩行に与える効果
回数による効果の比較

中村 徹 (社会医療法人至仁会圏央所沢病院)

Keywords:HAL, ショートステイ, 歩行

【はじめに,目的】

ショートステイ(以下ショート)は,可能な限り自立した在宅生活を送れるよう,機能の維持・回復や家族の介護負担軽減等を目的に実施される。また,国民の60%以上が在宅療養を望んでいるが,家族負担が1番の阻害因子となっている(厚生労働省)。そのため,身体機能の向上を図るショートも重要と考える。当法人では介護負担の軽減と予防を目的に,ショートにHybrid Assistive Limb(以下HAL)を導入している(以下HALショート)。このような取り組みは少なく,効果が明確でないのが現状である。本研究の目的は,HALショートが歩行能力にどのような効果を与えるか,および,HALショートの回数による効果の相違を検討することであった。


【方法】

HALを用いた運動療法を目的に介護老人保険施設のショートを利用した21名であった。その内,脳卒中を既往に持ち,歩行自立または見守りの要介護者16名を対象とした(男性10名,年齢71.4歳±10.7)。対象者の内,期間を空けてショートを4回以上利用した者は6名であった(男性4名,年齢73.2歳±9.8,回数毎の間隔日数:1-2回77.3日±36.9,2-3回108.3日±48.6,3-4回73.8日±48.1)。HALショートは7日間行い,初日と最終日を評価日とし,運動療法は起立,立位,歩行練習を20分間,5日間実施した。評価項目は,10m歩行(歩行速度,歩幅,歩行率),Timed Up & Go Test(以下TUG),5回立ち上がりテストとした。ショート1回群の介入前後の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い,4回群のHAL実施前と1~4回介入前・後の比較には反復測定分散分析を用い,Tukey-Kramer法による多重比較検定を行った。解析には,R ver 3.0.2を用い,有意水準は0.05とした。


【結果】

ショート1回群のHAL実施前と介入後の間で有意差を認めた項目は歩行速度,歩幅,TUG,5回立ち上がりテストであった。HAL実施前と1~4回介入後の間では,歩行速度,歩幅,TUGで有意差を認め,多重比較検定の結果,歩行速度,TUGでは実施前と2回介入後,4回介入後の間に,歩幅では実施前と2~4回介入後の間で有意差を認めた。HAL実施前と2~4回介入前の間では,歩行速度,歩幅,歩行率,TUGで有意差を認め,多重比較検定の結果,実施前と4回介入前の間に各項目で有意差を認めた。


【結論】

HALショートを1回行うことで,歩幅の拡大による歩行速度の向上が期待でき,回数を重ねることで更なる効果や定着が期待できると考える。本研究では,3回の実施で長期効果を得た。また,TUGは歩行に加え起立や着座,方向転換を含むため,日常生活場面に近い動的バランスの評価指標としても用いられ,実際の生活に近い歩行能力も向上した可能性がある。HALショートで学習した歩行を日常生活で繰り返すことで,歩幅の拡大だけでなく,歩行率の向上へも繋がっていることも予測される。HALショートは短期間で身体機能の向上が期待できるため,在宅生活をサポートする1つのツールになると考える。