The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本支援工学理学療法学会 » 口述発表

[O-SK-02] 口述演題(支援工学)02

Sat. May 13, 2017 10:50 AM - 11:50 AM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:杉原 俊一(札幌秀友会病院リハビリテーション科)

日本支援工学理学療法学会

[O-SK-02-6] 失調症状を伴う歩行に対するロボットスーツHALの効果

井上 亮子1, 西本 加奈1, 本多 歩美1, 織田 友子1, 溝口 真一1, 荒木 里枝1, 松永 祐樹1, 松村 星輝1, 濱崎 凌1, 内藤 拓也1, 大木田 治夫1, 佐藤 聡2, 瀬戸 牧子2, 佐藤 秀代2, 川平 和美3 (1.社会医療法人春回会長崎北病院総合リハビリテーション部, 2.社会医療法人春回会長崎北病院神経内科, 3.促通反復療法研究所川平先端リハラボ)

Keywords:HAL自立支援用モデル, 失調症状, 歩行能力

【はじめに】

Hybrid assisted Limb(以下,HAL)とは人の随意運動時に脳からの神経信号が運動ニューロンを介して筋肉に伝わる際に出現する生体電位信号を皮膚表面で検出し,意思に応じて動作を行うロボットスーツである。近年,諸学会で運動に対する結果報告がみられるが,その多くは脳卒中であり失調症状に対する報告は少ない。今回,失調症状を有する難病疾患患者の歩行に対し,HAL自立支援用モデルを用いて治療介入を行った。動揺性の症状を伴う特徴的な歩容に対する効果検証を行ったところ,下肢の支持性とバランス能力に変化が得られ歩行能力の向上に繋がったため報告する。


【方法】

対象は失調性病変を有する6名(男性4名,女性2名)。平均年齢は53.0±23.8歳。内訳は脊髄小脳変性症5名,多系統萎縮症1名とした。診断日からHAL開始までの期間は平均656.3日であった。方法はHALと免荷式リフトPOPO(以下,POPO)を装着した歩行練習を1クール10回行い,評価は10m歩行(速度,歩幅,歩行率),片脚立位時間,徒手筋力テスト(以下,MMT)(体幹・股関節・膝関節屈曲・伸展筋力),Berg Balance Scale(以下,BBS),Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下,SARA)を実施し,HAL開始前と終了後を比較した。統計学的分析において,10m歩行と片脚立位時間は対応のあるT検定,その他の評価はWilcoxon符号付き順位検定を用い,いずれも危険率5%未満を有意とした。


【結果】

10m歩行では,歩行速度が有意に向上し(p<0.05),歩幅はといずれも有意差を認めた(p<0.05)が,歩行率において有意差は認めなかった。その他の評価ではMMT(体幹・膝関節屈曲・伸展筋(p<0.001),股関節屈曲(P<0.05)伸展(P<0.01)),片脚立位時間(p<0.05),BBS(P<0.05),SARA(P<0.05)と各評価項目において有意な結果を認め,全対象者において歩行能力の改善を認めた。


【結論】

今回,SARAや片足立ち時間と筋力に有意な改善が見られている。HALは構造上骨盤と下肢が連結しているため,歩行中の前額面に対する側方動揺を軽減できるものと思われる。また,HALは装着する事で重錘負荷としての機能を果たすと思われ,その上で遊脚期の振り出しやすさと立脚期の支持性をアシストすることが可能である。歩行時に伴う骨盤挙上と下制を促すPOPOを使用したことも練習課題を下げ歩行効率を上げる要因となり,併せた結果として歩行の歩幅やスピードの改善に繋がったものと考えられる。