[O-SN-01-5] A型ボツリヌス毒素の反復施注が脳性麻痺児の運動機能に及ぼす影響
Keywords:脳性麻痺児, A型ボツリヌス毒素, 長期効果
【はじめに,目的】
脳性麻痺児(以下,CP児)に対するA型ボツリヌス毒素(以下,BTX-A)による痙縮治療は,運動機能の向上を目的に幼児期から繰り返されることが多い。しかし,反復施注による長期効果についての報告にはばらつきがある。今回,長期間BTX-Aを反復施注したCP児の運動機能の変化を後方視的に分析したので報告する。
【方法】
(対象)2008年12月~2016年8月に,運動機能の向上を目的にBTX-Aを反復施注した児のうち,口頭指示に従いGMFMを使用した評価が可能なCP児19名(男児7名,女児12名;GMFCSレベルI 6名,II 3名,III 6名,IV 4名)。施注開始年齢は平均4歳5か月(2歳1か月~7歳6か月),期間は平均4年(2~7年),回数は平均8.9回(4~20回)であった。対象児は,施注2週後からの1週間は毎日,その後は2週間~1ヶ月に1回の頻度で理学療法治療を受けた。
(方法)運動機能の評価は,GMFMを使用し,施注前と施注2週,1,2,3か月後に実施した。1回の施注前後でみられる運動機能向上の変化は,各施注後の最も高いGMFM-66得点から施注前の得点を引いた値で示し,GMFCSレベル別および年齢別での違いをKruskal-Wallis検定を用いて評価した。また,GMFCSレベル別に年齢及び回数による変化を,平均値の2次式近似曲線を用いて評価した。加えて,各対象児の各施注前のGMFM-66得点をGMFCSレベル毎のパーセンタイル参考曲線上にプロットし,同じGMFCSレベルのCP児と対象児の粗大運動発達を比較した。
【結果】
GMFCSレベルによりBTX-A施注前後のGMFM-66得点の増加に有意差があった。レベルIの増加が一番大きく,レベルIIとIIIがそれに続き,レベルIVの増加が最も小さかった。年齢別ではBTX-A施注前後のGMFM-66得点の増加に有意差はなかった。GMFCSレベル毎の年齢による運動機能向上の変化は,レベルIは年齢とともに変化が小さくなる傾向が見られたが,レベルIIではあまり変化がなく,IIIでは7歳から11歳にかけて変化が大きくなる傾向が見られた。レベルIVは変化が小さかった。施注回数による運動機能向上の変化は,GMFCSレベルI~IIIでは,施注回数が増すごとに,変化が小さくなる傾向は見られなかった。同じレベルのCP児に比べパーセンタイルが向上したGMFCSレベルI~IIIの対象児は,施注5回目までに大きく運動機能が向上し,その後も維持する傾向があった。レベルIVの対象児では,パーセンタイル参照曲線が下降する8歳以降も運動機能を維持する傾向がみられた。
【結論】
1回のBTX-A施注前後でみられる運動機能向上の変化は,年齢別では,GMFCSレベルで傾向が異なり,施注回数では,回数が増すごとに変化が減少する傾向はみられなかった。また,同じGMFCSレベルのCP児と対象児の粗大運動発達の比較から,運動機能が向上したGMFCSレベルI~IIIの対象児では,施注回数が少ない間の運動機能向上の変化が大きく,レベルIVの対象児では,8歳以降も運動機能を維持する傾向がみられた。
脳性麻痺児(以下,CP児)に対するA型ボツリヌス毒素(以下,BTX-A)による痙縮治療は,運動機能の向上を目的に幼児期から繰り返されることが多い。しかし,反復施注による長期効果についての報告にはばらつきがある。今回,長期間BTX-Aを反復施注したCP児の運動機能の変化を後方視的に分析したので報告する。
【方法】
(対象)2008年12月~2016年8月に,運動機能の向上を目的にBTX-Aを反復施注した児のうち,口頭指示に従いGMFMを使用した評価が可能なCP児19名(男児7名,女児12名;GMFCSレベルI 6名,II 3名,III 6名,IV 4名)。施注開始年齢は平均4歳5か月(2歳1か月~7歳6か月),期間は平均4年(2~7年),回数は平均8.9回(4~20回)であった。対象児は,施注2週後からの1週間は毎日,その後は2週間~1ヶ月に1回の頻度で理学療法治療を受けた。
(方法)運動機能の評価は,GMFMを使用し,施注前と施注2週,1,2,3か月後に実施した。1回の施注前後でみられる運動機能向上の変化は,各施注後の最も高いGMFM-66得点から施注前の得点を引いた値で示し,GMFCSレベル別および年齢別での違いをKruskal-Wallis検定を用いて評価した。また,GMFCSレベル別に年齢及び回数による変化を,平均値の2次式近似曲線を用いて評価した。加えて,各対象児の各施注前のGMFM-66得点をGMFCSレベル毎のパーセンタイル参考曲線上にプロットし,同じGMFCSレベルのCP児と対象児の粗大運動発達を比較した。
【結果】
GMFCSレベルによりBTX-A施注前後のGMFM-66得点の増加に有意差があった。レベルIの増加が一番大きく,レベルIIとIIIがそれに続き,レベルIVの増加が最も小さかった。年齢別ではBTX-A施注前後のGMFM-66得点の増加に有意差はなかった。GMFCSレベル毎の年齢による運動機能向上の変化は,レベルIは年齢とともに変化が小さくなる傾向が見られたが,レベルIIではあまり変化がなく,IIIでは7歳から11歳にかけて変化が大きくなる傾向が見られた。レベルIVは変化が小さかった。施注回数による運動機能向上の変化は,GMFCSレベルI~IIIでは,施注回数が増すごとに,変化が小さくなる傾向は見られなかった。同じレベルのCP児に比べパーセンタイルが向上したGMFCSレベルI~IIIの対象児は,施注5回目までに大きく運動機能が向上し,その後も維持する傾向があった。レベルIVの対象児では,パーセンタイル参照曲線が下降する8歳以降も運動機能を維持する傾向がみられた。
【結論】
1回のBTX-A施注前後でみられる運動機能向上の変化は,年齢別では,GMFCSレベルで傾向が異なり,施注回数では,回数が増すごとに変化が減少する傾向はみられなかった。また,同じGMFCSレベルのCP児と対象児の粗大運動発達の比較から,運動機能が向上したGMFCSレベルI~IIIの対象児では,施注回数が少ない間の運動機能向上の変化が大きく,レベルIVの対象児では,8歳以降も運動機能を維持する傾向がみられた。