[O-SP-01-3] 四節リンク機構を使用した新しい前十字靭帯損傷用装具
キーワード:前十字靱帯損傷, 装具, 制動
【はじめに,目的】前十字靭帯(ACL)損傷の治療においてしばしば装具が使用される。しかしその有効性を示す報告は少なく,また臨床的にも脛骨前方動揺制動効果に疑問を感じる。硬性装具は下がりやすく,軟性は制動力が乏しい。下がり難く制動力のある装具が望まれる。我々は新しいACL装具(4Bar Link Brace,以下4BLB)の開発に取り組んでおり,本研究においては制動力について効果を検証することを目的とした。
【方法】4BLBの特徴を説明する。コンセプトは正常な膝関節の動きを誘導する装具である。支柱付き軟性装具で,従来の装具と決定的に異なる点は四節リンク機構の膝継手を採用したことである。四節リンク機構膝継手は正常膝の矢状面動態を再現する。正常な動きをする支柱にACL損傷患者の大腿部と下腿部を固定することにより異常な動態を抑制し,なおかつ快適性をも追求した装具である。対象はACL再建術予定の患者で脛骨前方変位量の健患差が3mm以上であった19名19膝とした。受傷からの期間は24日~10年であった。平均年齢は28.7±11.4歳,男性9名,女性10名であった。脛骨前方変位量の測定には十字靭帯機能検査機器KNEELAX3(インデックス社)を使用した。KNEELAX3は前方引き出し力と脛骨変位量を同時記録するKT-2000に類似した機器である。装具の制動効果を検証するために規定された方法で変位量の計測を行い,患側の4BLB装着前後および健側の3群間で比較した。統計学的解析には反復測定分散分析(多重比較Scheffe法)および対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】88Nの前方引き出し力に対して脛骨前方変位量は健側7.72mm,患側12.09mm,132Nに対してはそれぞれ9.09mm,14.99mmで,患側は健側より有意に大きかった(P<0.0001)。患側4BLB装着下の前方変位量は88N時7.08mm,132N時10.29mmで,分散分析の結果4BLB装着下は装具なしに比べ有意に小さく(P<0.0001),健側とは有意差を認めなかった(88N:P=0.483,132N:P=0.154)。対応のあるt検定による4BLB装着下と健側の比較においても有意差はなかった(88N:P=0.223,132N:P=0.072)。
【結論】4BLBはACLの断裂した不安定膝の前後動揺性を効果的に制動していた。88Nの前方引き出し力に対する4BLB装着下の前方変位量は健側を0.64mm下回り,132Nに対しては健側を1.20mm上回る程度であった。KT-1000,2000におけるACL断裂の判断基準は左右差2mmとされ,またACL再建術後の成績においては健患差2ないし3mm以内は良好と判断される。この基準を採用すれば4BLBは不安定膝に健側と同等の安定性をもたらしたといえる。本研究の限界の一つは従来の装具との比較がなされていないことである。しばしば用いられる硬性装具ではKNEELAX3による動揺性検査が行えない。硬性装具との比較は困難なものの健側を基準に判断した4BLBの制動効果は良好であった。装具のずれの検討は既に着手しており今後報告していく。
【方法】4BLBの特徴を説明する。コンセプトは正常な膝関節の動きを誘導する装具である。支柱付き軟性装具で,従来の装具と決定的に異なる点は四節リンク機構の膝継手を採用したことである。四節リンク機構膝継手は正常膝の矢状面動態を再現する。正常な動きをする支柱にACL損傷患者の大腿部と下腿部を固定することにより異常な動態を抑制し,なおかつ快適性をも追求した装具である。対象はACL再建術予定の患者で脛骨前方変位量の健患差が3mm以上であった19名19膝とした。受傷からの期間は24日~10年であった。平均年齢は28.7±11.4歳,男性9名,女性10名であった。脛骨前方変位量の測定には十字靭帯機能検査機器KNEELAX3(インデックス社)を使用した。KNEELAX3は前方引き出し力と脛骨変位量を同時記録するKT-2000に類似した機器である。装具の制動効果を検証するために規定された方法で変位量の計測を行い,患側の4BLB装着前後および健側の3群間で比較した。統計学的解析には反復測定分散分析(多重比較Scheffe法)および対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】88Nの前方引き出し力に対して脛骨前方変位量は健側7.72mm,患側12.09mm,132Nに対してはそれぞれ9.09mm,14.99mmで,患側は健側より有意に大きかった(P<0.0001)。患側4BLB装着下の前方変位量は88N時7.08mm,132N時10.29mmで,分散分析の結果4BLB装着下は装具なしに比べ有意に小さく(P<0.0001),健側とは有意差を認めなかった(88N:P=0.483,132N:P=0.154)。対応のあるt検定による4BLB装着下と健側の比較においても有意差はなかった(88N:P=0.223,132N:P=0.072)。
【結論】4BLBはACLの断裂した不安定膝の前後動揺性を効果的に制動していた。88Nの前方引き出し力に対する4BLB装着下の前方変位量は健側を0.64mm下回り,132Nに対しては健側を1.20mm上回る程度であった。KT-1000,2000におけるACL断裂の判断基準は左右差2mmとされ,またACL再建術後の成績においては健患差2ないし3mm以内は良好と判断される。この基準を採用すれば4BLBは不安定膝に健側と同等の安定性をもたらしたといえる。本研究の限界の一つは従来の装具との比較がなされていないことである。しばしば用いられる硬性装具ではKNEELAX3による動揺性検査が行えない。硬性装具との比較は困難なものの健側を基準に判断した4BLBの制動効果は良好であった。装具のずれの検討は既に着手しており今後報告していく。