第52回日本理学療法学術大会

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日本スポーツ理学療法学会 » 口述発表

[O-SP-01] 口述演題(スポーツ)01

ACL

2017年5月12日(金) 11:00 〜 12:00 A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:寒川 美奈(北海道大学大学院保健科学研究院機能回復学分野)

日本スポーツ理学療法学会

[O-SP-01-4] 認知機能の違いが非予測的カッティング動作中の下肢関節角度および下肢筋活動に与える影響について

柴田 聡1, 竹村 雅裕2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学体育系)

キーワード:ACL損傷, 認知機能, 非予測的カッティング動作

【はじめに,目的】

Swanikらは,ACL損傷者は非損傷者より認知機能が低値であったと報告している。スポーツ活動中は周囲の状況から適切なプレー選択が求められ,認知機能の低下は,適切な判断の妨げとなり,動作の安定性の低下につながるのではないかと考えた。そこで本研究の目的は,認知機能の違いが非予測的なカッティング動作中の下肢関節角度および筋活動に与える影響を検討することとした。



【方法】

対象者は,大学体育会運動部の女性15名(年齢:20.1±1.3歳,身長:166.6±7.3cm,体重:60.6±6.9kg)とした。

課題動作は,30cm台上からの片脚着地動作・カッティング動作・前方ステップ動作とし,離地直後に動作を指示する非予測的条件を設定した。本研究では,カッティング動作のみを分析した。カッティング動作は,台上に利き脚で立位をとり,利き脚で着地し非利き脚側45°方向へ大きく1歩踏み出す動作とした。非予測的課題は,台上にフットスイッチを置き踵で踏み,動作を開始し踵がスイッチから離れると,前方のモニターに動作方法を提示した。関節角度は床反力計(Kisler社)と赤外線カメラ10台からなる三次元動作解析装置(VICON社)を用いた。筋活動は表面筋電図(Noraxon社)を用い,被験筋は,中殿筋(GM),大内転筋(Add),半腱様筋(SM),大腿二頭筋(BF),大腿直筋(RF),内側広筋(VM),外側広筋(VL)とし,各筋の%MVCを算出した。また,SM+BFで大腿四頭筋(Quad),VM+VLでハムストリング(Ham)の合成筋活動とし,Hamに対するQuadの共同筋収縮比(CCR)を算出した。認知機能は,Symbol Digit Modalities Test(SDMT)を使用し,その達成率(正答数/110)から対象者をHigh群(7名)とLow群(8名)に分けた。

関節角度は,立脚期を100%に正規化し,接地~30%の最大値を算出した。筋活動とCCRは接地前50ms~接地と接地~接地後50msでの平均値を算出した。High群とLow群の比較に対応のないt-検定を行い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

SDMTの達成率は,High群は70.8±5.0%,Low群は60.0±3.1%で,High群は有意に高い値を示した(p<0.05)。

下肢関節角度に有意差は見られなかった。筋活動は,Quadの接地前50ms~接地(High群:40.7±21.5%,Low群:78.4±37.9%)と,接地~50ms(High群:80.8±26.7%,Low群:137.2±54.0%)でLow群が有意に大きな筋活動を示した(p<0.05)。CCRは接地~50ms(High群:50.8±27.1%,Low群:28.0±10.7%)でHigh群が有意に大きな値を示した(p<0.05)。

【結論】

Low群は,着地前後のQuadの筋活動が増大し,相対的にHamよりQuadの筋活動が大きかった。動作中の大腿四頭筋の筋活動の増大は,ACLへのストレスを増大させること指摘されており,Low群はACL損傷をきたしやすい筋活動であると考えられる。以上より,認知機能の違いは非予測的な動作中の筋活動に変化を生じ,ACL損傷のリスクファクターとなる可能性がある。