[O-SP-01-6] 前十字靭帯損傷前後におけるカッティング動作の変化
実業団女子ハンドボール選手1例の検討
キーワード:前十字靭帯, カッティング動作, 術後評価
【はじめに,目的】
ハンドボール競技は前十字靭帯(以下,ACL)損傷の発生率が高く,カッティング動作での損傷が多いと報告されている。一方,ACL再建術後のスポーツ復帰率は高いが,再損傷の頻度は5年で5.8%と報告されており,損傷前とは異なる運動パターンでスポーツ復帰していることが推察される。その変化を捉えるためには,損傷前後での運動パターンを比較する必要がある。特に,ACL損傷は初期接地(以下,IC)後0.05秒以内で起こるとされていることから,IC時点での身体アライメントが重要となる。今回,ACL損傷前後のカッティング動作を解析することができた実業団女子ハンドボール選手1名のIC時点における損傷前後の比較結果を報告する。
【方法】
対象は,実業団ハンドボールチームに所属する女性選手1名(年齢27歳,右利き)であった。対象は,ハンドボール競技中,ジャンプの着地時に右膝をknee-inし受傷した。受傷から1週後に損傷側の半腱様筋腱と薄筋腱を用いた再建術が施行された。術後経過は順調で,再建術から6ヶ月後に競技復帰している。
動作解析には3次元動作解析装置と床反力計を用いた。運動課題として,被験者は床反力計の前40cmの位置に膝関節屈曲45°の姿勢で立ち,3m前方からボールを受け取る。それと同時に両脚にて踏み切り,損傷側下肢にて床反力計上でカッティング動作を行い,左45°前方へ走り抜けるものであった。数回の練習後,2回計測施行した。計測は,床反力が発生した時点をICとし,股・膝・足関節の関節角度を求めた。なお,初回は損傷52週前に,二回目は損傷52週後に測定を行い,各々の関節角度を比較した。
【結果】
IC時点の各関節角度は,損傷前が股関節屈曲43.7°,外転6.5°,内旋23.1°,膝関節屈曲36.3°,内反14.6°,外旋5.1°,足関節背屈22.3°,内反1.4°,回外7.2°であった。損傷後は股関節屈曲58.2°,外転8.6°,内旋39.8°,膝関節屈曲47.6°,内反25.1°,内旋20.2°,足関節背屈26.2°,内反9.1°,回外33.8°であった。
【結論】
損傷後は損傷前と比較して,股関節屈曲・内旋,膝関節屈曲,足関節背屈角度が大きくなった。特に,股関節屈曲は約15°,内旋は約16°と変化が大きく,これは,主に股関節外旋筋の遠心性機能による股関節屈曲・内旋動作によって衝撃緩衝が行われたものと推察される。また,膝関節内反,足関節内反・回外角度も大きくなっており,足部外側でICを行っていることが伺える。この足部外側接地は,運動連鎖による三関節の屈曲を促しているものであると考えられ,さらに,ACL損傷の危険因子とされる膝関節外反の抑制も行っていると考えられる。ACL損傷予防のためには,股・膝・足関節の三関節での衝撃緩衝が重要とされ,特に股関節優位の衝撃緩衝が有用であるとされている。これらのことから,本症例の損傷後は,損傷前よりもACL損傷が起こりにくい運動パターンを獲得できていると考えられた。
ハンドボール競技は前十字靭帯(以下,ACL)損傷の発生率が高く,カッティング動作での損傷が多いと報告されている。一方,ACL再建術後のスポーツ復帰率は高いが,再損傷の頻度は5年で5.8%と報告されており,損傷前とは異なる運動パターンでスポーツ復帰していることが推察される。その変化を捉えるためには,損傷前後での運動パターンを比較する必要がある。特に,ACL損傷は初期接地(以下,IC)後0.05秒以内で起こるとされていることから,IC時点での身体アライメントが重要となる。今回,ACL損傷前後のカッティング動作を解析することができた実業団女子ハンドボール選手1名のIC時点における損傷前後の比較結果を報告する。
【方法】
対象は,実業団ハンドボールチームに所属する女性選手1名(年齢27歳,右利き)であった。対象は,ハンドボール競技中,ジャンプの着地時に右膝をknee-inし受傷した。受傷から1週後に損傷側の半腱様筋腱と薄筋腱を用いた再建術が施行された。術後経過は順調で,再建術から6ヶ月後に競技復帰している。
動作解析には3次元動作解析装置と床反力計を用いた。運動課題として,被験者は床反力計の前40cmの位置に膝関節屈曲45°の姿勢で立ち,3m前方からボールを受け取る。それと同時に両脚にて踏み切り,損傷側下肢にて床反力計上でカッティング動作を行い,左45°前方へ走り抜けるものであった。数回の練習後,2回計測施行した。計測は,床反力が発生した時点をICとし,股・膝・足関節の関節角度を求めた。なお,初回は損傷52週前に,二回目は損傷52週後に測定を行い,各々の関節角度を比較した。
【結果】
IC時点の各関節角度は,損傷前が股関節屈曲43.7°,外転6.5°,内旋23.1°,膝関節屈曲36.3°,内反14.6°,外旋5.1°,足関節背屈22.3°,内反1.4°,回外7.2°であった。損傷後は股関節屈曲58.2°,外転8.6°,内旋39.8°,膝関節屈曲47.6°,内反25.1°,内旋20.2°,足関節背屈26.2°,内反9.1°,回外33.8°であった。
【結論】
損傷後は損傷前と比較して,股関節屈曲・内旋,膝関節屈曲,足関節背屈角度が大きくなった。特に,股関節屈曲は約15°,内旋は約16°と変化が大きく,これは,主に股関節外旋筋の遠心性機能による股関節屈曲・内旋動作によって衝撃緩衝が行われたものと推察される。また,膝関節内反,足関節内反・回外角度も大きくなっており,足部外側でICを行っていることが伺える。この足部外側接地は,運動連鎖による三関節の屈曲を促しているものであると考えられ,さらに,ACL損傷の危険因子とされる膝関節外反の抑制も行っていると考えられる。ACL損傷予防のためには,股・膝・足関節の三関節での衝撃緩衝が重要とされ,特に股関節優位の衝撃緩衝が有用であるとされている。これらのことから,本症例の損傷後は,損傷前よりもACL損傷が起こりにくい運動パターンを獲得できていると考えられた。