[O-SP-04-4] 無症候性野球競技者における棘下筋発揮能力と棘下筋伸長性との関連性
~核磁器共鳴画像法magnetic resonance imagingを用いて~
Keywords:萎縮筋, 棘下筋発揮能力, 棘下筋伸長性
【はじめに,目的】
我々は第42回日本整形外科スポーツ医学会学術集会において,無症候性野球競技者の投球側棘下筋厚(以下:ISPW)は著明に薄く,併せて投球側の棘下筋発揮能力(以下:発揮能力)が高い事を報告した。従来,棘下筋萎縮の原因として,肩甲上神経障害や筋の付着部断裂,筋腹断裂の筋障害等が考えられていた。しかしながら,無症候性野球競技者のISPWについて渉猟した限り一定の見解を得られていない。藤野らは,萎縮筋について筋線維径の減少という萎縮により弾性要素が破壊・消失することで,伸長に対する他動張力の低下をおこすと報告している。本研究目的は,無症候性野球競技者の発揮能力と棘下筋伸長性との関連性を明らかにする事である。
【方法】
対象者は,本学に在学する無症候性野球競技者12名。平均年齢20.5±0.9歳,全員右利き,計12名24肩を対象とした。ISPW測定は,日立MRイメージング装置(Apertoシリーズ)を用い核磁気共鳴画像法(以下:MRI)を施行。肩関節MRIの水平断のT2強調画像を用いて調査を行った。ISPWの計測には肩甲骨関節窩の幅が最大となる像を用いた。肩甲骨関節窩の中点と肩甲骨体部の厚みが薄くなる点を結び関節窩軟骨下骨から4cm近位で垂線を引きこの線を基準にしてSteller Orderにてtransverse planeでのISPWを実数値に換算し測定した。棘下筋力の測定は,Infraspinatus test肢位にて行った。徒手筋力測定器(OG GIKENアイソフォースGT-300)を用いて等尺性最大筋力を計測し全て同一検者にて実施した。計3回計測を行い加算平均し棘下筋力の平均値を算出した。また,ISPWに対する筋力の比率(N/mm)を発揮能力として算出した。棘下筋伸長性の測定は,棘下筋が最も伸張される肢位として端座位にて肩関節30度伸展位,肘関節完全伸展位,前腕中間位から,passiveにて肩関節内旋可動域(以下:Ext30-IR)を測定。全て同一検者にて行った。統計学的解析は,対応のあるt検定を用いて,各パラメーターを投球側と非投球側間の比較を行い有意水準は5%未満とした。また,発揮能力と棘下筋伸長性についての関係をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
発揮能力は投球側4.2±1.0 N/mm,非投球側3.4±0.7 N/mmであり有意差を認めた(P<0.01)。Ext30-IRは,投球側58.8±19.4°,非投球側87.1±21.6°であり有意差を認めた(P<0.01)。発揮能力と棘下筋伸長性との間には,投球側と非投球側共に相関を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から,投球側発揮能力が高いという先行研究を支持する結果となり,併せて投球側棘下筋伸長性が低下している事がわかった。しかしながら,発揮能力と棘下筋伸長性との間には相関は認められなかった。故に,無症候性野球競技者における投球側ISPWは,萎縮筋であると一概に言えない可能性が示唆された。
我々は第42回日本整形外科スポーツ医学会学術集会において,無症候性野球競技者の投球側棘下筋厚(以下:ISPW)は著明に薄く,併せて投球側の棘下筋発揮能力(以下:発揮能力)が高い事を報告した。従来,棘下筋萎縮の原因として,肩甲上神経障害や筋の付着部断裂,筋腹断裂の筋障害等が考えられていた。しかしながら,無症候性野球競技者のISPWについて渉猟した限り一定の見解を得られていない。藤野らは,萎縮筋について筋線維径の減少という萎縮により弾性要素が破壊・消失することで,伸長に対する他動張力の低下をおこすと報告している。本研究目的は,無症候性野球競技者の発揮能力と棘下筋伸長性との関連性を明らかにする事である。
【方法】
対象者は,本学に在学する無症候性野球競技者12名。平均年齢20.5±0.9歳,全員右利き,計12名24肩を対象とした。ISPW測定は,日立MRイメージング装置(Apertoシリーズ)を用い核磁気共鳴画像法(以下:MRI)を施行。肩関節MRIの水平断のT2強調画像を用いて調査を行った。ISPWの計測には肩甲骨関節窩の幅が最大となる像を用いた。肩甲骨関節窩の中点と肩甲骨体部の厚みが薄くなる点を結び関節窩軟骨下骨から4cm近位で垂線を引きこの線を基準にしてSteller Orderにてtransverse planeでのISPWを実数値に換算し測定した。棘下筋力の測定は,Infraspinatus test肢位にて行った。徒手筋力測定器(OG GIKENアイソフォースGT-300)を用いて等尺性最大筋力を計測し全て同一検者にて実施した。計3回計測を行い加算平均し棘下筋力の平均値を算出した。また,ISPWに対する筋力の比率(N/mm)を発揮能力として算出した。棘下筋伸長性の測定は,棘下筋が最も伸張される肢位として端座位にて肩関節30度伸展位,肘関節完全伸展位,前腕中間位から,passiveにて肩関節内旋可動域(以下:Ext30-IR)を測定。全て同一検者にて行った。統計学的解析は,対応のあるt検定を用いて,各パラメーターを投球側と非投球側間の比較を行い有意水準は5%未満とした。また,発揮能力と棘下筋伸長性についての関係をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
発揮能力は投球側4.2±1.0 N/mm,非投球側3.4±0.7 N/mmであり有意差を認めた(P<0.01)。Ext30-IRは,投球側58.8±19.4°,非投球側87.1±21.6°であり有意差を認めた(P<0.01)。発揮能力と棘下筋伸長性との間には,投球側と非投球側共に相関を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から,投球側発揮能力が高いという先行研究を支持する結果となり,併せて投球側棘下筋伸長性が低下している事がわかった。しかしながら,発揮能力と棘下筋伸長性との間には相関は認められなかった。故に,無症候性野球競技者における投球側ISPWは,萎縮筋であると一概に言えない可能性が示唆された。