[O-TK-03-4] 地域在住高齢者の身体機能・認知機能における過去の職種の影響
Keywords:地域在住高齢者, 職業, 機能評価
【はじめに,目的】
高齢者の身体特性は様々な要因に作用される。我々はその中でも過去の職種という要因に着目し,過去の職業従事によって培われた能力が,高齢になってからの身体特性に影響を及ぼすと仮説を立てた。既存の職種は,農業や肉体労働系職種のブルーカラーと,会社員や事務系職種のホワイトカラーに大別される。しかし,高齢者の身体機能や認知機能を,過去に従事していた職種がブルーカラーであるか,ホワイトカラーであるかの影響に着目して調査した研究は,ほとんど認められない。従って本研究では,地域在住高齢者の身体機能・認知機能における,過去の職種の影響を検討することを目的とした。
【方法】
要介護認定を受けていない地域在住の65歳以上の高齢者110名(平均年齢:75.1±6.09歳,女性83%)を対象に,自記式質問紙を配布し,基本属性(年齢,性別,身長)と,過去最も長く従事した職業の種類を聴取した。過去の職業は,種類によってブルーカラーとホワイトカラー,その他に分類した。また身体機能として,10m歩行速度,5回立ち座りテスト,Timed up and go test,Functional reach test,左右握力の計測を,認知機能としてScenery Picture Memory Test(以下SPMT),Mini-Mental State Examination(以下MMSE)の計測を行った。さらに,Inbody430(株式会社インボディ・ジャパン製)にて各対象者の体成分を測定し,骨格筋指数(以下SMI=四肢筋肉量(kg)/身長(m)2)を四肢,上肢,下肢に分けて算出した。統計解析は従属変数に各身体機能,認知機能の測定値,各SMI値を,独立変数に過去の職業の種類を,調整変数に性別,年齢,教育歴(従属変数が認知機能時)を投入した重回帰分析を各々行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
回答データに欠損がなく,且つ過去最も長く従事した職業がブルーカラーとホワイトカラー以外に分類されるもの,現在も仕事に従事しているものを除いた61名を解析対象とした。対象者のうち,過去従事していた職種に関して,15名(25%)がブルーカラー,46名(75%)がホワイトカラーに分類された。重回帰分析の結果,5回立ち座りテスト(過去の職種がブルーカラーに該当時:偏回帰係数=2.07,p=0.007,95%信頼区間(CI)0.583-3.562),SPMT(過去の職種がブルーカラーに該当時:偏回帰係数=-2.56,p=0.013,95%CI-4.565--0,561),MMSE(過去の職種がブルーカラーに該当時:偏回帰係数=-1.335,p=0.029,95%CI-2.526--0.143)が,過去の職種と有意に関連していた。
【結論】
本研究結果より,過去にブルーカラーの職種に従事していたものは下肢筋力が高く,過去にホワイトカラーの職種に従事していたものは認知機能が高くなる傾向が明らかとなった。今後,高齢者特性を考慮する際は,過去の職種にも着目する必要性があると考えられる。
高齢者の身体特性は様々な要因に作用される。我々はその中でも過去の職種という要因に着目し,過去の職業従事によって培われた能力が,高齢になってからの身体特性に影響を及ぼすと仮説を立てた。既存の職種は,農業や肉体労働系職種のブルーカラーと,会社員や事務系職種のホワイトカラーに大別される。しかし,高齢者の身体機能や認知機能を,過去に従事していた職種がブルーカラーであるか,ホワイトカラーであるかの影響に着目して調査した研究は,ほとんど認められない。従って本研究では,地域在住高齢者の身体機能・認知機能における,過去の職種の影響を検討することを目的とした。
【方法】
要介護認定を受けていない地域在住の65歳以上の高齢者110名(平均年齢:75.1±6.09歳,女性83%)を対象に,自記式質問紙を配布し,基本属性(年齢,性別,身長)と,過去最も長く従事した職業の種類を聴取した。過去の職業は,種類によってブルーカラーとホワイトカラー,その他に分類した。また身体機能として,10m歩行速度,5回立ち座りテスト,Timed up and go test,Functional reach test,左右握力の計測を,認知機能としてScenery Picture Memory Test(以下SPMT),Mini-Mental State Examination(以下MMSE)の計測を行った。さらに,Inbody430(株式会社インボディ・ジャパン製)にて各対象者の体成分を測定し,骨格筋指数(以下SMI=四肢筋肉量(kg)/身長(m)2)を四肢,上肢,下肢に分けて算出した。統計解析は従属変数に各身体機能,認知機能の測定値,各SMI値を,独立変数に過去の職業の種類を,調整変数に性別,年齢,教育歴(従属変数が認知機能時)を投入した重回帰分析を各々行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
回答データに欠損がなく,且つ過去最も長く従事した職業がブルーカラーとホワイトカラー以外に分類されるもの,現在も仕事に従事しているものを除いた61名を解析対象とした。対象者のうち,過去従事していた職種に関して,15名(25%)がブルーカラー,46名(75%)がホワイトカラーに分類された。重回帰分析の結果,5回立ち座りテスト(過去の職種がブルーカラーに該当時:偏回帰係数=2.07,p=0.007,95%信頼区間(CI)0.583-3.562),SPMT(過去の職種がブルーカラーに該当時:偏回帰係数=-2.56,p=0.013,95%CI-4.565--0,561),MMSE(過去の職種がブルーカラーに該当時:偏回帰係数=-1.335,p=0.029,95%CI-2.526--0.143)が,過去の職種と有意に関連していた。
【結論】
本研究結果より,過去にブルーカラーの職種に従事していたものは下肢筋力が高く,過去にホワイトカラーの職種に従事していたものは認知機能が高くなる傾向が明らかとなった。今後,高齢者特性を考慮する際は,過去の職種にも着目する必要性があると考えられる。