[O-TK-05-3] 通所リハビリテーション利用者における転倒のリスク因子についての検討
~脳血管疾患群と整形外科的疾患群での比較~
キーワード:転倒, 要介護, 通所リハビリテーション
【はじめに,目的】
転倒は介護予防における重要な問題であり,寝たきりや身体活動量の低下を引き起こす。地域在住高齢者と施設入所高齢者の転倒リスク因子が異なることが報告されている(Rubenstein;1994)ように,対象者の機能レベルや主疾患,環境などにより転倒のリスク因子は異なると推測される。そこで本研究の目的は,通所リハビリテーションを利用している要支援,要介護者の1年間の転倒情報を収集し,身体機能やElderly-status Assessment(以下E-SAS)の項目から主疾患ごとの転倒リスク因子を検討することとした。
【方法】
対象者は,在宅での主な移動手段が歩行である半日型通所リハビリテーション利用者98名(年齢76.1±9.8歳)とした。今回は主疾患ごとの転倒リスク因子の検討を行うため,脳血管疾患群48名と整形外科疾患群50名の2群に分け検討を行った。認知症の診断があり,かつ改定長谷川式簡易知能スケールで21点未満のものは除外した。対象者の1年間の転倒情報は,平成27年9月から平成28年9月の期間,本人から聴取・記録し,その情報を基に転倒あり群と転倒なし群に分類した。測定項目は,年齢,要介護度などの基本情報の他,身体機能面としてFunctional Reach test(以下FR),片脚立位,5m最大歩行テストなどを測定し,E-SASからも連続歩行距離などを聴取した。統計学的分析として,まず疾患群ごとに各測定項目を転倒あり群・なし群で比較した。その後,転倒に影響を及ぼす因子を抽出するために各疾患群で多重ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数は転倒の有無とし,独立変数は上記の結果を踏まえた測定項目とした。統計学的処理にはIBM SPSS ver22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
脳血管疾患群で,1年間の内に転倒を経験したのは48名中15名(転倒発生率32%)で,整形外科的疾患群は50名中19名(転倒発生率38%)であった。多重ロジスティック回帰分析を実施した結果,脳血管疾患群はFR(odds比:OR=0.866)と連続歩行距離(OR=1.892)が選択され,モデルのχ2検定は有意(P=0.028)であった。整形外科疾患群では年齢(OR=1.411)とFR(OR=0.887)が選択され,モデルのχ2検定は有意(P=0.00)であった。
【結論】
今回の結果から,転倒の予測因子として脳血管疾患群ではFRと連続歩行距離が選択され,整形外科的疾患群では年齢とFRが選択された。FRは,多くの先行文献で示されるように様々な疾患を有する要介護者の転倒リスクを把握する評価法として有用であることが示された。その一方,脳血管疾患群では連続歩行距離が長いほど転倒リスクが増加する可能性があるという結果となった。脳血管疾患を有する要介護者において,連続歩行距離の延長は転倒を惹起する一因である可能性があり,今後詳細な歩行活動の質的研究が必要であると考えられる。理学療法士は,歩行機能の改善に対する支援だけでなく,継続した転倒に対するアプローチの検討が重要であることが示された。
転倒は介護予防における重要な問題であり,寝たきりや身体活動量の低下を引き起こす。地域在住高齢者と施設入所高齢者の転倒リスク因子が異なることが報告されている(Rubenstein;1994)ように,対象者の機能レベルや主疾患,環境などにより転倒のリスク因子は異なると推測される。そこで本研究の目的は,通所リハビリテーションを利用している要支援,要介護者の1年間の転倒情報を収集し,身体機能やElderly-status Assessment(以下E-SAS)の項目から主疾患ごとの転倒リスク因子を検討することとした。
【方法】
対象者は,在宅での主な移動手段が歩行である半日型通所リハビリテーション利用者98名(年齢76.1±9.8歳)とした。今回は主疾患ごとの転倒リスク因子の検討を行うため,脳血管疾患群48名と整形外科疾患群50名の2群に分け検討を行った。認知症の診断があり,かつ改定長谷川式簡易知能スケールで21点未満のものは除外した。対象者の1年間の転倒情報は,平成27年9月から平成28年9月の期間,本人から聴取・記録し,その情報を基に転倒あり群と転倒なし群に分類した。測定項目は,年齢,要介護度などの基本情報の他,身体機能面としてFunctional Reach test(以下FR),片脚立位,5m最大歩行テストなどを測定し,E-SASからも連続歩行距離などを聴取した。統計学的分析として,まず疾患群ごとに各測定項目を転倒あり群・なし群で比較した。その後,転倒に影響を及ぼす因子を抽出するために各疾患群で多重ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数は転倒の有無とし,独立変数は上記の結果を踏まえた測定項目とした。統計学的処理にはIBM SPSS ver22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
脳血管疾患群で,1年間の内に転倒を経験したのは48名中15名(転倒発生率32%)で,整形外科的疾患群は50名中19名(転倒発生率38%)であった。多重ロジスティック回帰分析を実施した結果,脳血管疾患群はFR(odds比:OR=0.866)と連続歩行距離(OR=1.892)が選択され,モデルのχ2検定は有意(P=0.028)であった。整形外科疾患群では年齢(OR=1.411)とFR(OR=0.887)が選択され,モデルのχ2検定は有意(P=0.00)であった。
【結論】
今回の結果から,転倒の予測因子として脳血管疾患群ではFRと連続歩行距離が選択され,整形外科的疾患群では年齢とFRが選択された。FRは,多くの先行文献で示されるように様々な疾患を有する要介護者の転倒リスクを把握する評価法として有用であることが示された。その一方,脳血管疾患群では連続歩行距離が長いほど転倒リスクが増加する可能性があるという結果となった。脳血管疾患を有する要介護者において,連続歩行距離の延長は転倒を惹起する一因である可能性があり,今後詳細な歩行活動の質的研究が必要であると考えられる。理学療法士は,歩行機能の改善に対する支援だけでなく,継続した転倒に対するアプローチの検討が重要であることが示された。