[O-TK-05-6] 在宅復帰後の訪問リハビリテーションにより得られる生活機能の改善に影響を及ぼす要因とその相互関連性
―多施設共同研究データを用いたパス解析による検討―
Keywords:訪問リハビリテーション, 生活機能, 多施設共同研究
【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(訪問リハ)による生活機能の改善が,どのような要因に基づいて得られているのかは明らかでない。本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ)退院から継続して訪問リハを利用する者の生活機能の改善に影響を及ぼす要因と,その要因間の相互関連性について検討することである。
【方法】
回復期リハ退院から継続して訪問リハを利用する者を対象に,訪問リハビリテーション2施設,訪問看護ステーション2施設の計4施設から得た縦断的な多施設共同調査データ(n=53)を分析に用いた。分析対象は,訪問リハの利用期間が30日以上,かつ訪問リハ開始から180日後までを上限とした調査を終えた,または調査中にサービスを終了した,かつ欠損値がない48名(平均年齢78.9±9.5歳)とした。分析に使用した評価項目は,基本属性(年齢,性別,疾患種別,要介護度など),生活機能として機能的自立度(FIM)とFrenchay activities index(FAI),心理要因としてリハ参加意欲を評価するPittsburgh rehabilitation participation scale(PRPS)など,そして,リハ要因として療法士が行う対象者教育(自主練習や動作,生活習慣に関する指導)の頻度(回数)と内容(指導による行動変容の程度)などとした。リハ要因の評価は,訪問リハの臨床業務を行う療法士ら10名から得た意見に基づいて独自に作成した定義と尺度を用いた。評価時期は訪問リハ開始時(初期)・30日後・90日後・180日後もしくは訪問リハ終了時(最終)とした。データ解析は運動FIMとFAIの初期と最終の値を用いてRehabilitation effectiveness(改善率)を算出し,生活機能の改善を示す目的変数とした。PRPSと対象者教育は,調査期間の平均値も説明変数に追加した。統計解析は運動FIMとFAIの改善率と有意な相関を示す変数を用い,これら改善率を説明する仮説モデルを構築しモデルの検証を行った。検証には共分散構造分析によるパス解析を用い,モデルの適合度とパスの有意性に基づいてモデルの修正を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
修正モデルは良好な適合度を示し(GFI=.95,RMSEA=.00),全てのパスが有意となった。標準化パス係数は1:初期運動FIMからFAI改善率へ0.32(p<.05),2:初期認知FIMから初期PRPSへ0.71(p<.01),さらに対象者教育の平均内容へ0.57(p<.01),3:初期PRPSから平均PRPSに0.86(p<.01),4:対象者教育の平均内容から平均PRPSに0.18(p<.01),5:平均PRPSから運動FIM改善率に0.36(p<.01),さらにFAI改善率に0.36(p<.01),6:FAI改善率から運動FIM改善率に0.36(p<.01)であった。
【結論】
回復期リハ退院後の訪問リハによる生活機能の改善には,対象者が意欲的にリハビリへ参加することを促す教育的な働きかけと,社会的な生活活動を介して日常生活動作の改善に働きかけることが重要である。
訪問リハビリテーション(訪問リハ)による生活機能の改善が,どのような要因に基づいて得られているのかは明らかでない。本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ)退院から継続して訪問リハを利用する者の生活機能の改善に影響を及ぼす要因と,その要因間の相互関連性について検討することである。
【方法】
回復期リハ退院から継続して訪問リハを利用する者を対象に,訪問リハビリテーション2施設,訪問看護ステーション2施設の計4施設から得た縦断的な多施設共同調査データ(n=53)を分析に用いた。分析対象は,訪問リハの利用期間が30日以上,かつ訪問リハ開始から180日後までを上限とした調査を終えた,または調査中にサービスを終了した,かつ欠損値がない48名(平均年齢78.9±9.5歳)とした。分析に使用した評価項目は,基本属性(年齢,性別,疾患種別,要介護度など),生活機能として機能的自立度(FIM)とFrenchay activities index(FAI),心理要因としてリハ参加意欲を評価するPittsburgh rehabilitation participation scale(PRPS)など,そして,リハ要因として療法士が行う対象者教育(自主練習や動作,生活習慣に関する指導)の頻度(回数)と内容(指導による行動変容の程度)などとした。リハ要因の評価は,訪問リハの臨床業務を行う療法士ら10名から得た意見に基づいて独自に作成した定義と尺度を用いた。評価時期は訪問リハ開始時(初期)・30日後・90日後・180日後もしくは訪問リハ終了時(最終)とした。データ解析は運動FIMとFAIの初期と最終の値を用いてRehabilitation effectiveness(改善率)を算出し,生活機能の改善を示す目的変数とした。PRPSと対象者教育は,調査期間の平均値も説明変数に追加した。統計解析は運動FIMとFAIの改善率と有意な相関を示す変数を用い,これら改善率を説明する仮説モデルを構築しモデルの検証を行った。検証には共分散構造分析によるパス解析を用い,モデルの適合度とパスの有意性に基づいてモデルの修正を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
修正モデルは良好な適合度を示し(GFI=.95,RMSEA=.00),全てのパスが有意となった。標準化パス係数は1:初期運動FIMからFAI改善率へ0.32(p<.05),2:初期認知FIMから初期PRPSへ0.71(p<.01),さらに対象者教育の平均内容へ0.57(p<.01),3:初期PRPSから平均PRPSに0.86(p<.01),4:対象者教育の平均内容から平均PRPSに0.18(p<.01),5:平均PRPSから運動FIM改善率に0.36(p<.01),さらにFAI改善率に0.36(p<.01),6:FAI改善率から運動FIM改善率に0.36(p<.01)であった。
【結論】
回復期リハ退院後の訪問リハによる生活機能の改善には,対象者が意欲的にリハビリへ参加することを促す教育的な働きかけと,社会的な生活活動を介して日常生活動作の改善に働きかけることが重要である。