第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-06] 口述演題(地域)06

2017年5月13日(土) 18:10 〜 19:10 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小林 丈人(小諸厚生総合病院リハビリテーション科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-06-4] 回復期リハビリテーション病棟入院中の外出・外泊経験が在宅復帰直後の家族介護負担感に影響する
―多施設共同研究―

平田 康介1, 石垣 智也2, 山野 宏章3, 岸田 和也4, 松本 大輔5 (1.東生駒病院リハビリテーション科, 2.訪問看護リハビリステーションフィットケア, 3.南大阪病院リハビリテーション科, 4.訪問看護ステーションきづ川はろー, 5.畿央大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:介護負担感, 在宅, 回復期

【はじめに,目的】

在宅生活を継続させるためには,家族の介護負担感をいかに低い状態で維持させるかが重要である。しかし,回復期リハビリテーション(以下,回復期リハ)病棟入院中のどのような退院支援が,在宅生活の介護負担感に影響するのかを検討している報告は少ない。

そこで今回,円滑な在宅生活への移行を目的に行われる,入院中の患者と家族のみでの外出・外泊の経験が,在宅復帰直後の家族の介護負担感に及ぼす影響を検討した。

【方法】

回復期リハ退院から継続して訪問リハを利用した者を対象に,訪問リハビリテーション2施設,訪問看護ステーション2施設にて調査を行った。分析対象は,回復期リハ病棟退院直後より訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を利用した49名の中から,何らかの見守りや介護が必要となる機能的自立度(Functional Independence Measure:以下,FIM)の運動項目(合計点)が65点以下の者15名(男性10名/女性5名,平均年齢80.5±7.4歳)とした。基本属性として,利用者の年齢や性別,疾患種別,開始時要介護度,合併症数)と主介護者の年齢や性別,続柄,同居人数を聴取した。また評価項目として,回復期リハ病棟入院中の患者と家族だけでの外出・外泊経験の有無やFIM,主介護者の介護負担感にはZarit介護負担尺度日本語短縮版(J-ZBI_8)を用いた。評価時期は,退院時と訪問開始時の2時点とし,FIMは各時期に実施し,J-ZBI_8は訪問初回時に行った。

統計処理は,入院中の患者と家族のみでの外出・外泊経験の有無(経験群7名/未経験群8名)で群分けした後に,年齢以外の基本属性(利用者・家族)にはχ2検定を用い,利用者・家族の年齢やFIM(退院時・訪問開始時),訪問リハ開始時の介護負担感(J-ZBI_8)はF検定の後に,ウェルチのt検定とスチューデントt検定を用いて分析を行った。有意水準は5%とした。



【結果】

訪問リハ開始時の介護負担感(平均点±標準偏差)は,経験群(3.7±3.0)に対して未経験群は(12.3±8.5)であり,経験群の介護負担感は有意に低値を(p<.05)示した。また未経験群は,経験群に比べて主介護者の年齢が有意に低い(p<.01)が,年齢以外の基本属性や各評価時期のFIMは,群間での有意な差は認められなかった。



【結論】

本研究から,何らかの見守りや介護が必要となる訪問リハ利用者には,回復期リハ病棟入院中から患者と家族だけで外出・外泊を経験させることにより,訪問リハ開始時直後までの介護負担感を軽減できる可能性が示唆された。また主介護者の年齢が低い場合は,仕事等の社会的要因の制約により,入院中から外出・外泊の機会を得ることが難しい可能性がある。そのため,入院中から家族とより密な連携をとり,外出・外泊の経験につなげられる退院支援を行うことが,在宅復帰直後の介護負担感軽減に重要である可能性が示唆された。