第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-06] 口述演題(地域)06

2017年5月13日(土) 18:10 〜 19:10 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:小林 丈人(小諸厚生総合病院リハビリテーション科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-06-6] 回復期病棟の転倒予防に対するスタッフの意識向上への取り組み

高木 志仁, 池田 裕哉, 上村 悠月, 武田 好史, 山本 政孝 (医療法人社団藤聖会八尾総合病院)

キーワード:転倒, 多職種連携, 回復期病棟

【はじめに,目的】

当院回復期リハビリテーション病棟(当病棟)ではH23~24年度の転倒件数は毎年約100件発生していた。転倒対策にはリハビリスタッフ(以下リハスタッフ)も個別で対応していたが,対応は担当者の判断に任せていた為,対策が徹底されず転倒に至る場合がみられていた。そのためH25度よりリハスタッフを含めた回復期病棟に関わる全スタッフの転倒に対する意識向上に向けた取り組みを開始したので以下に報告する。

【方法】

取り組みは主に3つ行った。

①転倒勉強会による当病棟の傾向・対策の注意喚起

H24年度の転倒に関わるインシデントレポートを集計し,転倒しやすい人・場所・時間帯について周知,対策を促した。

②合同評価による対策の徹底

当病棟に転棟直後から,患者の能力把握をして対策が行えるように合同評価を開始した。合同評価は転棟直後に間断なく行うようにし,医師,看護師,介護士,PT,OT,ST,MSWと他職種が集まり評価を行った。評価は起居・移乗動作,居室内移動,排泄動作,10m歩行,TUGを評価後,病棟での活動度を決定,必要に応じて環境設定や離床グッズの設置などの対策を行えるようにした。評価は生活カードに記録し,全スタッフに周知できるようにした。

③定期的な対策チェック,注意喚起

転倒リスク者は毎日朝礼で注意喚起を継続することにした。対策のチェックとしてPT・OT・看護師・介護士で構成された転倒予防係を中心に週1回転倒ミーティングを行い,全患者の転倒対策を再検討し,職員間で情報を発信することにした。また年1回転倒予防月間を作り,月間目標を決め毎朝確認することで転倒への意識向上を促すことにした。

【結果】

取り組み開始後3年後に転倒に関わるアンケートを全スタッフに実施した結果,離床グッズやインシデントレポートの記載,転倒した際の対策の再検討に関して意識向上がみられた。

また当病棟の転倒件数はH25年98件→H26年60件→H27年68件と減少がみられた。

【結論】

取り組み開始前から転倒対策は各患者の担当チームの判断で行われていたが,対策が不徹底な場合があり,対策されていても他スタッフへの周知が不十分なことがあった。転倒に対する認識を統一するため,まず勉強会で転倒の傾向を周知することで,全スタッフの転倒に関する視点を統一することができたと考える。合同評価の導入により,リハスタッフは多職種と共に能力評価を行った結果をもとに,病棟内の活動度・リスクの双方を考慮してADL設定,転倒対策を他職種へ提案できるようになった。初期から転倒対策・周知を漏れなく行い,定期的に対策をチェックすることで初期から~退院まで,全スタッフが初期から継続して転倒への意識が向けられるようになったと考える。多職種で転倒に関わるシステムの確立と定期的な注意喚起を促すことにより,スタッフの転倒への意識向上がみられた結果,転倒数の減少に繋がったと考える。