The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-07] 口述演題(地域)07

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

座長:藤井 智(横浜市総合リハビリテーションセンター理学作業療法課)

日本地域理学療法学会

[O-TK-07-2] 精神疾患合併者に対する理学療法プログラムに乗せるための対応・工夫

倉持 正一1, 菅谷 真大1, 横山 聖1, 田中 勝也2 (1.ホスピタル坂東リハビリテーション部, 2.ホスピタル坂東院長)

Keywords:精神疾患, FIM, 対応方法

【はじめに,目的】

精神疾患を合併している患者に対して身体的リハビリテーション(以下,身体リハ)を実施する場合,精神症状が阻害的に働き理学療法プログラム遂行が困難なことがある。それに対しての対応方法・工夫は担当者個人の経験によることが多いと思われる。そこで理学療法を実施している精神疾患合併患者に対しての対応方法や工夫にはどのようなことがあり,どのようなことが多用されているのかを明らかにすることを目的とした。


【方法】

当院の理学療法士8名(経験年数2~19年)に日本理学療法士協会,精神心理領域部門主催,第14回精神心理領域理学療法セミナーにて提出された症例および当院にて理学療法を実施した症例を提示。(認知症2例,統合失調症2例,うつ病1例,境界型パーソナリティー障害1例,身体表現性障害1例)各症例を参照した後,プログラムに乗せるための対応方法・工夫を過去の経験等から自由記載としてアンケートを実施した。アンケート結果をKJ法におけるグループ分けの手法を使用して分類。2014年8月~2016年8月までに当院にて身体リハを実施した精神疾患合併者98名(男性43名,女性55名,平均年齢71.2±15歳)のカルテから理学療法士の記録およびカンファレンスの記録を調査。分類した項目に該当する記録を拾い出現頻度としてカウントした。その際,同一人物に同様の対応を複数回実施した場合は1回とした。結果についてはX2検定で偏りを有意水準5%として検定した。また,同様の対象者の機能的自立度評価法(以下,FIM)をリハ開始時,終了時で評価。得点を運動項目,認知項目に分け開始時,終了時のそれぞれの得点をWilcoxonの符号付順位和検定を実施。有意水準5%とした。


【結果】

理学療法平均実施期間は56.3±40.4日。FIMについては運動項目開始時24[14.3-53.8],終了時47[20.3-72],認知項目開始時17.5[12-26],終了時18[13-28],合計開始時43.5[28.3-78.5],終了時65.5[36.3-99.3]となり,すべて有意差がみられた(p<0.01)。

KJ法による分類は,称賛,説明,無理しない,傾聴,環境設定(場所,時間,人),他部署との連携,プログラム内容の検討,難易度調整の10項目になった。各項目の出現頻度は称賛11,説明20,無理しない41,傾聴27,場所14,時間9,人4,連携16,内容検討21,難易度調整7となった(p<0.00)。

【結論】

精神疾患を合併していてもFIM向上は可能であり,精神症状等の対応方法としては無理しない,傾聴,プログラム内容の検討,説明の順に多く,患者に担当理学療法士が合わせ,寄り添うような対応が多用されていることが明らかになった。精神症状に対しての対応方法・工夫の技術として選択肢を増やし,また,効果的な対応方法を体系化するため,経験的に行っていたことを意識的に行うことで効果についての検証が可能になってくると考え,今後の課題としたい。