[O-YB-01-4] 地域在住高齢者における歩行比からみた歩行パターンと転倒の関連性
Keywords:地域在住高齢者, 転倒, 歩行比
【はじめに,目的】高齢期における歩行速度の低下は重要な転倒リスクのひとつである。歩行速度は歩幅と歩行率(ケイデンス)から決定され,この両因子から求める歩行比(歩幅/ケイデンス)は歩行速度を維持するための戦略を表す個人の歩行パターンと捉えられる。しかし,歩行比と転倒の関連性については十分に検討されていない。本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に歩行比と転倒の関連性を横断的に検討することである。
【方法】National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesに参加した65歳以上の地域在住高齢者10,885名のうち,アルツハイマー病,パーキンソン病,脳卒中の現病および既往のある者,MMSEが18点未満の者,欠損値がある者を除外した9,205名(女性4,987名,平均年齢73.7±5.6歳)を解析対象とした。ANIMA社製ウォークWay MV-1000を用いて通常歩行速度にて歩行評価を実施し,歩行速度,歩幅,ケイデンスを評価指標とした。歩行比は歩幅をケイデンスで除して算出し(m/(step/min)),3分位の値を基に対象者を3群(T1,T2:参照,T3)に群分けした。なお,各歩行指標は,関谷ら(1996年)の報告に準じて身長を用いて補正した。転倒経験は,過去1年間の転倒経験の有無を聴取した。共変量として,基本属性,病歴,服薬数,転倒恐怖感の有無,平均歩行時間(分/日)を聴取し,Body Mass Index,うつ症状(Geriatric Depression Scale),MMSEを評価した。統計解析は,転倒の有無を従属変数,歩行速度低下(1.0m/秒未満)の有無および歩行比を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。さらに,歩行速度の低下の有無による関係性の違いを検討するために歩行速度1.0m/秒以上および未満で層分けして同様の分析を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】全対象者における過去1年間の転倒経験率は17.6%であった。転倒経験に対して,歩行速度低下の有無と歩行比を同時投入した結果,歩行速度低下および歩行比の値が小さいT1群において有意な関係性を示した(歩行速度 OR:1.40,95%CI:1.21-1.62,歩行比 OR:1.18,95%CI:1.03-1.35)。さらに,1.0m/秒未満の群(1,496名)での解析では歩行比は転倒と有意な関連性を認めなかったが,1.0m/秒以上の群(7,709名)ではT1群において転倒と有意な関連性を認めた(OR:1.29,95%CI:1.11-1.50)。
【結論】本研究より,歩行速度が低下している群では歩行比と過去1年の転倒経験との間に有意な関連性はみられなかったが,歩行速度を維持できている群においては,歩行比が小さいことが転倒経験と関連していることが示唆された。歩行比が小さいことは,歩幅の減少,あるいはケイデンスの増加を反映しており,歩行速度の維持のためにケイデンスを増加させる戦略を選択していると考えられる。今後は,このような歩行戦略の違いが将来の転倒発生と関連するかについて,縦断的な検討する必要である。
【方法】National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesに参加した65歳以上の地域在住高齢者10,885名のうち,アルツハイマー病,パーキンソン病,脳卒中の現病および既往のある者,MMSEが18点未満の者,欠損値がある者を除外した9,205名(女性4,987名,平均年齢73.7±5.6歳)を解析対象とした。ANIMA社製ウォークWay MV-1000を用いて通常歩行速度にて歩行評価を実施し,歩行速度,歩幅,ケイデンスを評価指標とした。歩行比は歩幅をケイデンスで除して算出し(m/(step/min)),3分位の値を基に対象者を3群(T1,T2:参照,T3)に群分けした。なお,各歩行指標は,関谷ら(1996年)の報告に準じて身長を用いて補正した。転倒経験は,過去1年間の転倒経験の有無を聴取した。共変量として,基本属性,病歴,服薬数,転倒恐怖感の有無,平均歩行時間(分/日)を聴取し,Body Mass Index,うつ症状(Geriatric Depression Scale),MMSEを評価した。統計解析は,転倒の有無を従属変数,歩行速度低下(1.0m/秒未満)の有無および歩行比を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。さらに,歩行速度の低下の有無による関係性の違いを検討するために歩行速度1.0m/秒以上および未満で層分けして同様の分析を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】全対象者における過去1年間の転倒経験率は17.6%であった。転倒経験に対して,歩行速度低下の有無と歩行比を同時投入した結果,歩行速度低下および歩行比の値が小さいT1群において有意な関係性を示した(歩行速度 OR:1.40,95%CI:1.21-1.62,歩行比 OR:1.18,95%CI:1.03-1.35)。さらに,1.0m/秒未満の群(1,496名)での解析では歩行比は転倒と有意な関連性を認めなかったが,1.0m/秒以上の群(7,709名)ではT1群において転倒と有意な関連性を認めた(OR:1.29,95%CI:1.11-1.50)。
【結論】本研究より,歩行速度が低下している群では歩行比と過去1年の転倒経験との間に有意な関連性はみられなかったが,歩行速度を維持できている群においては,歩行比が小さいことが転倒経験と関連していることが示唆された。歩行比が小さいことは,歩幅の減少,あるいはケイデンスの増加を反映しており,歩行速度の維持のためにケイデンスを増加させる戦略を選択していると考えられる。今後は,このような歩行戦略の違いが将来の転倒発生と関連するかについて,縦断的な検討する必要である。