The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-01] 口述演題(予防)01

Sat. May 13, 2017 9:30 AM - 10:30 AM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:柴 喜崇(北里大学医療衛生学部)

日本予防理学療法学会

[O-YB-01-5] 在宅脳卒中片麻痺者における転倒関連自己効力感の低下を予測する因子の検討
~1年間の縦断調査より~

松田 直樹, 内藤 考洋, 鈴木 創, 伊藤 一成, 加藤 侑, 石井 賢寿, 稲田 亨 (旭川リハビリテーション病院リハビリテーション部)

Keywords:転倒関連自己効力感, 脳卒中, 下肢筋力

【はじめに,目的】

脳卒中片麻痺者において,転倒関連自己効力感の低下は,過度な活動量抑制を介してADL能力低下やQOLの低下につながると考えられ,理学療法士にとってその予防は重要な課題である。これまで,脳卒中片麻痺者の転倒関連自己効力感に関連する因子に関して横断的な調査は報告されているが,転倒関連自己効力感を縦断的に調査し,その低下を予測する因子を検討した報告はなされていない。よって,本研究の目的は,在宅脳卒中片麻痺者の転倒関連自己効力感低下を予測するための因子を縦断的な調査から検討し,明らかにすることである。


【方法】

対象は,当院外来リハビリテーションに通う在宅脳卒中片麻痺者のうち,屋内移動を自立歩行で行っている60名(平均年齢63.3歳,男性32名・女性28名)とした。調査は,2015年3~5月にBase line(BL)時調査を行った。調査項目は,転倒関連自己効力感の評価としてModified Fall Efficacy Scale(MFES),生活空間の広がりの評価としてLife Space Assessment(LSA),健康関連QOLの評価としてEuro QOLの効用値(EQ),日常生活動作能力の評価としてBarthel Index(BI),歩行能力の評価として10m歩行速度,バランス能力の指標としてTimed up and Go Test(TUG)及びFunctional Reach Test(FRT),下肢筋力の指標として30秒椅子立ち上がり試験(CS30)を行った。また,BL時調査から1年後にFollow up(FU)時調査として,MFESを再度調査した。統計学的解析は,BL時におけるMFESと各項目の間におけるSpearmanの順位相関係数を算出した。また,BL時と比較してFU時にMFESが低下した群を低下群,それ以外を非低下群とし,2群間におけるBL時の各項目を,対応のないt検定およびMann-WhitneyのU検定で比較した。さらに,従属変数をMFES低下の有無,独立変数をBL時においてMFESとの相関が認められた項目とした多重ロジスティック回帰分析にて抽出された項目を用いて,1年後のMFES低下を予測するカットオフ値をROC曲線によって算出した。有意水準は5%とした。




【結果】

BL時におけるMFESと有意な相関があった項目はLSA,EQ,BI,歩行速度,TUG,FRT,CS30であった。対象者のうち,28名が低下群,32名が非低下群に分類された。低下群・非低下群の2群間による各評価項目の比較では,CS30のみが低下群において有意に低値であった。さらに,多重ロジスティック回帰分析の結果においても,CS30が予測因子として抽出された(オッズ比:0.76,95%信頼区間:0.62~0.94)。ROC曲線より算出された,1年後のMFES低下を予測するCS30のカットオフ値は11回(感度:68.7%・特異度:67.8%・AUC:0.73)であった。




【結論】

本研究結果より,1年後に転倒関連自己効力感が低下した在宅脳卒中片麻痺者は,低下しなかった者と比較してBL時において下肢筋力が低下していたことが示された。また,CS30が11回を下回る対象者においては,1年後に転倒関連自己効力感が低下する可能性が高いことが示唆された。