[O-YB-02-1] 地域に在住する肥満高齢者の縦断的観察に関する研究
1年間後の肥満からサルコペニア肥満への進展の要因についての検討
Keywords:サルコペニア, 肥満, 歩行速度
【はじめに】高齢期は体脂肪量に比べると骨格筋の減少が著しく,加齢に伴いBMIが減少するにもかかわらず体脂肪率は高くなる。サルコペニア肥満はサルコペニアと肥満が合併している状態であるが,脂質代謝異常の増加,体重過多による膝痛発生や運動機能の低下の観点から関心が高い。このサルコペニア肥満は,サルコペニアに肥満が加わったのか,肥満から筋肉の減少が起こった結果であるのかについては,これまで十分な検討がない。本研究は1年間の縦断的な観察から,地域在住高齢者におけるサルコペニア肥満への進展の状況について明らかにし,その要因について検討することを目的とした。
【対象および方法】本研究所の長期縦断研究「お達者検診」の2013年,2014年の連続受診者のうち,歩行速度,握力,体組成の測定値に欠損がない530名を解析対象とした。年齢,身長,体重,BMI,体組成(体脂肪量,体脂肪率,除脂肪体重,骨格筋指数),運動機能(握力,5m通常・最大歩行時間,Timed-up & go test,片足立ち時間)を測定した。
骨格筋指数(<7.09kg/m2/<5.92kg/m2>;男性/女性)と握力(<25kg/<20kg;男性/女性)または歩行速度(1m/秒)が基準値未満のものをサルコペニア,体脂肪率が基準値以上(<27.0%/<33.1%;男性/女性;ベースライン測定時の体脂肪率5分位上2位)のものを肥満,サルコペニアと肥満の双方を有する場合をサルコペニア肥満と定義した。1年後に新たにサルコペニア肥満となったもので最も多かったのは,ベースライン時に肥満に分類されたものであったため,肥満からサルコペニア肥満に移行したものを移行群,肥満のまま変化しなかったものを不変群に分類してベースライン時の体組成や運動機能を比較した。統計処理には,群間の比較に対応のないt検定とMann-Whitney検定を用いた。
【結果】ベースライン時に肥満であった177名のうち10名が,サルコペニアであった37名のうち1名が,いずれにも該当しない284名のうち2名が新規にサルコペニア肥満に移行した。移行群は不変群に比べ,有意にベースラインでの握力が弱く,5m通常・最大歩行速度も長かった(p<0.05-0.01)。また体組成の比較では,移行群は体格が小さく体脂肪量や除脂肪量も有意に少なかったが,骨格筋指数も有意に低値であった(p<0.05-0.01)。
【考察】新規サルコペニア肥満の多くは肥満状態に骨格筋の減少が加わったことにより発症していたが,これはベースライン測定時から骨格筋の減少と身体機能の低下はすでに始まっていたことからも裏付けられる。肥大した脂肪細胞から放出されたサイトカインは骨格筋萎縮に関係すると考えられているが,サルコペニア肥満への進展にも同様の機序が関わっている可能性がある。さらに肥満を有する高齢者でも体格が小さく筋機能が低いものは,サルコペニア肥満に進展するリスクがあると考えられた。
【対象および方法】本研究所の長期縦断研究「お達者検診」の2013年,2014年の連続受診者のうち,歩行速度,握力,体組成の測定値に欠損がない530名を解析対象とした。年齢,身長,体重,BMI,体組成(体脂肪量,体脂肪率,除脂肪体重,骨格筋指数),運動機能(握力,5m通常・最大歩行時間,Timed-up & go test,片足立ち時間)を測定した。
骨格筋指数(<7.09kg/m2/<5.92kg/m2>;男性/女性)と握力(<25kg/<20kg;男性/女性)または歩行速度(1m/秒)が基準値未満のものをサルコペニア,体脂肪率が基準値以上(<27.0%/<33.1%;男性/女性;ベースライン測定時の体脂肪率5分位上2位)のものを肥満,サルコペニアと肥満の双方を有する場合をサルコペニア肥満と定義した。1年後に新たにサルコペニア肥満となったもので最も多かったのは,ベースライン時に肥満に分類されたものであったため,肥満からサルコペニア肥満に移行したものを移行群,肥満のまま変化しなかったものを不変群に分類してベースライン時の体組成や運動機能を比較した。統計処理には,群間の比較に対応のないt検定とMann-Whitney検定を用いた。
【結果】ベースライン時に肥満であった177名のうち10名が,サルコペニアであった37名のうち1名が,いずれにも該当しない284名のうち2名が新規にサルコペニア肥満に移行した。移行群は不変群に比べ,有意にベースラインでの握力が弱く,5m通常・最大歩行速度も長かった(p<0.05-0.01)。また体組成の比較では,移行群は体格が小さく体脂肪量や除脂肪量も有意に少なかったが,骨格筋指数も有意に低値であった(p<0.05-0.01)。
【考察】新規サルコペニア肥満の多くは肥満状態に骨格筋の減少が加わったことにより発症していたが,これはベースライン測定時から骨格筋の減少と身体機能の低下はすでに始まっていたことからも裏付けられる。肥大した脂肪細胞から放出されたサイトカインは骨格筋萎縮に関係すると考えられているが,サルコペニア肥満への進展にも同様の機序が関わっている可能性がある。さらに肥満を有する高齢者でも体格が小さく筋機能が低いものは,サルコペニア肥満に進展するリスクがあると考えられた。