The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-02] 口述演題(予防)02

Sat. May 13, 2017 10:50 AM - 11:50 AM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:小松 泰喜(日本大学スポーツ科学部)

日本予防理学療法学会

[O-YB-02-2] 50歳代における健常者と前糖尿病者の身体機能,身体活動量の比較

常田 亮介1, 三澤 加代子1, 西村 輝1, 上野 七穂1, 堺 彩夏1, 山鹿 隆義1, 井戸 芳和1, 吉村 康夫1,3, 椎 大亮2, 酒井 典子4, 佐藤 裕信5, 宮尾 陽一4, 加藤 博之1,3 (1.信州大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.新生病院在宅リハビリテーション事業所, 3.信州大学医学部整形外科, 4.新生病院整形外科, 5.新生病院健康づくり研究所)

Keywords:糖尿病, 身体機能, 身体活動量

【はじめに,目的】

2010年に米国糖尿病学会で前糖尿病の基準が提唱され,前糖尿病からの介入により糖尿病予防の重要性が注目されている。日本でも厚生労働省の2012年の調査で,糖尿病を疑われる人は合計2050万人とされ,糖尿病予防の重要性が注目されている。糖尿病患者においては,筋力や身体活動量の低下が先行研究より報告されているが,糖尿病の初期段階である前糖尿病者における報告はまだ少ない。前糖尿病期における身体機能と身体活動量を把握することは早期の介入や糖尿病への進行予防に有用であると考える。

身体機能,身体組成は男女差があることは知られているため,今回は男性を対象に健常群と前糖尿病群の身体機能,身体活動量を調査したので報告する。

【方法】

対象者は長野小布施町にて実施している地域住民健康調査(おぶせスタディ)にて50歳代の中から無作為に抽出し協力の得られた男性46名(平均54.5±2.4歳)とした。前糖尿病は,米国糖尿病学会の基準に準拠しHbA1c<5.7%を健常群,5.7%≦HbA1c≦6.4%を前糖尿病群とした。調査項目はDual Energy X-ray Absorptiometry(DEXA)による骨格筋指数(SMI),握力,開眼片脚立位時間,および質問紙による最近1週間の身体活動量を測定した。

質問紙による身体活動量の測定は,外出頻度,軽負荷運動の頻度,中等度負荷運動の頻度をそれぞれ,全くしないを0点,1~2日を1点,3~4日を2点,5~7日を3点と点数化した。

統計解析は,全調査項目ごとに健常群と前糖尿病群をt-testにて群間比較した(有意水準は5%)。

【結果】

健常群は26名,前糖尿病群は20名であった。健常群はBMI22.5±2.4kg/m2,HbA1c5.47±0.2%,前糖尿病群20名はBMI22.8±3.6kg/m2,HbA1c5.89±0.2%であった。

身体機能,身体活動量について,健常群では握力42.0±7.8kg,片脚立位時間53.4±12.4秒,SMI7.65±0.8kg/m2,外出頻度2.12±1.2点,軽負荷の運動0.42±0.9点,および中等度の運動0.04±0.2点であった。同様に前糖尿病群では握力37.7±5.1kg,片脚立位時間50.9±13.3秒,SMI7.55±0.8kg/m2,外出頻度1.21±1.2点,軽負荷の運動0.00±0.0点,および中等度の運動0.05±0.2点であった。

前糖尿病群は,健常群と比較し握力,外出頻度,および軽負荷の運動頻度が有意に低かった。

【結論】

身体機能について,前糖尿病群は健常群よりも,握力が有意に低値であった。Orlando Gは糖尿病により上下肢で筋力が低下することを報告している。本研究結果から,より軽症な前糖尿病の段階においても,筋力が低下することが示唆された。

身体活動量について,糖尿病患者においては中等度の定期的な運動が推奨されている。しかし本研究の前糖尿病群者においては,中等度の運動では有意差が認められなかった。一方,外出頻度,軽負荷の運動において有意差が認められ,糖尿病と前糖尿病とでは推奨される運動の頻度が異なる可能性がある。