The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-03] 口述演題(予防)03

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:吉田 剛(高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科)

日本予防理学療法学会

[O-YB-03-2] 身体的フレイル高齢者の認知機能低下は,転倒後の骨折発生と強い関連を有する

堤本 広大1,2, 土井 剛彦1, 牧迫 飛雄馬1, 堀田 亮1, 中窪 翔1, 牧野 圭太郎1, 島田 裕之1 (1.国立長寿医療研究センター予防老年学研究部, 2.日本学術振興会特別研究員PD)

Keywords:転倒, 骨折, フレイル

【はじめに,目的】身体的フレイルとは包括的に機能が低下した脆弱化した状態を指し,健常高齢者と要介護高齢者の中間的存在とされている。要介護の主要因の一つである転倒は,要介護リスクが高いフレイル高齢者において,特に予防すべき事象である。近年,認知機能の低下が,転倒リスクを高めることが明らかとなってきている。フレイル高齢者の転倒予防を考えていく上で,認知機能低下が転倒とどのように関連しているのか検討することが必要だが,十分に明らかにされていない。そこで,本研究の目的は身体的フレイル高齢者における認知機能低下と転倒との関連性を検討することとする。


【方法】地域高齢者10885名のうち,パーキンソン病・認知症既往者,MMSEが21点未満の者,基本的ADLに障害のある者を除く9990名(平均73.5歳)を対象とした。歩行速度低下,筋力低下,体重減少,易疲労感,身体活動量低下の5項目の内,3項目以上が該当したものを身体的フレイルと判定した。認知機能に関しては,記憶・注意機能・遂行機能・処理速度の評価を行い,年齢・教育歴で標準化したデータにもとづき1.5SD以上の機能低下を1領域でも認めた者は認知機能低下ありと定義した。その上で,健常群,認知機能低下群,フレイル群,フレイル+認知機能低下群の4群に分けた。転倒については,過去1年間の転倒経験の有無を聴取し,転倒に伴う骨折の有無も合わせて聴取した。統計解析は,従属変数に転倒経験の有無,独立変数に群要因(健常群を参照値)と共変量を投入した多変量ロジスティック回帰分析を実施した。


【結果】転倒経験のある者は,健常群15.7%,認定機能低下群18.6%,フレイル群28.4%,フレイル+認知機能低下群31.6%であった。転倒経験の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析において,健常群を参照としたオッズ比は,認知機能低下群で1.17(95%CI 1.03-1.34),フレイル群で1.48(95%CI 1.19-1.83),フレイル+認知機能低下群で1.77(95%CI 1.39-2.27)であった。転倒経験を有する者を抽出し,転倒後の骨折経験の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析において,健常群を参照値としたオッズ比は,フレイル+認知機能群にのみ有意な関連が認められた(2.56(95%CI 1.36-4.85))。


【結論】転倒に伴う骨折については,身体的フレイルと認定機能低下を併せ持つ高齢者のみ関連性みられた。横断研究のため,因果関係は言及できないが身体的フレイルに認知機能低下が合わさることにより,転倒回避行動の遅延などが生じ,転倒後に生じる骨折との関連が強くなるのではないかと考えられる。一方で,転倒後に骨折した身体的フレイル高齢者の認知機能が低下しているということも考えられるため,今後は前方視的な研究の中で関係性を検討する必要がある。