[O-YB-03-5] サルコペニアの有無により握力と身体機能の関連性は異なるか?
~地域在住高齢者における検討~
Keywords:健常者, サルコペニア, 握力
【はじめに,目的】サルコペニアは筋肉量減少に筋力低下や身体機能低下を伴う状態であり,筋力低下の判定として握力が用いられている。握力は簡便かつ定量的な評価が可能であり,臨床場面における評価として広く用いられている。地域在住高齢者における握力は,下肢筋力,バランス機能などの身体機能,身体活動量,ADLなど様々な要素との関連性が報告されている。握力は全身的な体力を反映する評価として有用であるとされているが,サルコペニアを有する状態においても同様であるかどうかは明らかになっていない。そこで,サルコペニアの有無により握力に関連する因子は異なるか調査することを目的とし,検討を行った。
【方法】対象は,新聞広告やデイサービスなどへの被検者募集に対して応募のあった,歩行可能な地域在住高齢者107例のうち,下記のすべての評価が実施可能であった87例(男性35例,女性52例,年齢74.2±7.0歳)とした。評価項目は,年齢,身長,体重,歩行速度,姿勢安定度評価指標(Index of postural stability:以下IPS),6分間歩行試験による総歩行距離,生体電気インピーダンス法による全身骨格筋量と水分量の分布をもとに算出した四肢骨格筋量(Skeletal muscle mass index:以下SMI)とした。握力はデジタル握力計を用いて左右2回ずつ測定し最大値を採用し,左右の平均値を算出した。膝伸展筋力は多用途筋機能評価運動装置を用い,角速度60deg/secにおける最大トルクを測定し,左右の平均値を算出した。サルコペニアの判定は,Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によるサルコペニア診断のためのアルゴリズムに基づき,SMI:男性7.0kg/m2 女性5.7kg/m2未満を満たし,かつ,歩行速度:0.8m/s以下または握力:男性26kg,女性18kg未満であった者をサルコペニア群として抽出した。その他の対象者を健常群とし,2群に分類した。統計学的解析は,2群における握力,膝伸展筋力と各評価項目の相関関係をPearsonの相関係数を用いて行った。統計ソフトはSPSS 22.0 Jを用い,有意水準は5%とした。
【結果】健常群64例,サルコペニア群23例の2群に分類された。握力と有意な相関関係を認めたのは,健常群で,身長(r=0.64),体重(r=0.48),歩行速度(r=0.33),6分間歩行距離(r=0.41),IPS(r=0.29),SMI(r=0.65)であったが,サルコペニア群では,身長(r=0.78),体重(r=0.62),SMI(r=0.49)のみであり,歩行速度(r=-0.07),6分間歩行距離(r=-0.12),IPS(r=0.04)との有意な相関関係を認めなかった。また,膝伸展筋力は健常群,サルコペニア群とともに歩行速度,6分間歩行距離,IPSと有意な相関関係を認めた。
【結論】サルコペニアを有する地域在住高齢者における握力は,身体機能を反映しない可能性がある。一方で,膝伸展筋力はサルコペニアの有無に関わらず身体機能との関連性を有しており,評価の有用性は高いと考えられた。
【方法】対象は,新聞広告やデイサービスなどへの被検者募集に対して応募のあった,歩行可能な地域在住高齢者107例のうち,下記のすべての評価が実施可能であった87例(男性35例,女性52例,年齢74.2±7.0歳)とした。評価項目は,年齢,身長,体重,歩行速度,姿勢安定度評価指標(Index of postural stability:以下IPS),6分間歩行試験による総歩行距離,生体電気インピーダンス法による全身骨格筋量と水分量の分布をもとに算出した四肢骨格筋量(Skeletal muscle mass index:以下SMI)とした。握力はデジタル握力計を用いて左右2回ずつ測定し最大値を採用し,左右の平均値を算出した。膝伸展筋力は多用途筋機能評価運動装置を用い,角速度60deg/secにおける最大トルクを測定し,左右の平均値を算出した。サルコペニアの判定は,Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によるサルコペニア診断のためのアルゴリズムに基づき,SMI:男性7.0kg/m2 女性5.7kg/m2未満を満たし,かつ,歩行速度:0.8m/s以下または握力:男性26kg,女性18kg未満であった者をサルコペニア群として抽出した。その他の対象者を健常群とし,2群に分類した。統計学的解析は,2群における握力,膝伸展筋力と各評価項目の相関関係をPearsonの相関係数を用いて行った。統計ソフトはSPSS 22.0 Jを用い,有意水準は5%とした。
【結果】健常群64例,サルコペニア群23例の2群に分類された。握力と有意な相関関係を認めたのは,健常群で,身長(r=0.64),体重(r=0.48),歩行速度(r=0.33),6分間歩行距離(r=0.41),IPS(r=0.29),SMI(r=0.65)であったが,サルコペニア群では,身長(r=0.78),体重(r=0.62),SMI(r=0.49)のみであり,歩行速度(r=-0.07),6分間歩行距離(r=-0.12),IPS(r=0.04)との有意な相関関係を認めなかった。また,膝伸展筋力は健常群,サルコペニア群とともに歩行速度,6分間歩行距離,IPSと有意な相関関係を認めた。
【結論】サルコペニアを有する地域在住高齢者における握力は,身体機能を反映しない可能性がある。一方で,膝伸展筋力はサルコペニアの有無に関わらず身体機能との関連性を有しており,評価の有用性は高いと考えられた。