[O-YB-05-1] 大腿骨近位部骨折術後患者における骨格筋指標の推移とその関連要因の調査
クラスター分析による検討
Keywords:大腿骨近位部骨折, 骨格筋, クラスター分析
【はじめに,目的】
近年,身体組成や栄養状態と移動能力の関連性に関心が高まっている。我々はこれまでに大腿骨近位部骨折患者を対象に,運動療法と栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)の介入の併用により,術後早期に歩行が獲得できる可能性を報告し,歩行を獲得するまでの日数と術後1週目の骨格筋指標(Skeletal Muscle mass Index:SMI)に関連があることを確認した。しかしながら,術後SMIの推移に関する報告はなされておらず,その推移のパターンと歩行獲得に要する日数の関連性は明らかではない。そこで本研究では,術後SMIの推移のパターン化を試みるとともに,回復パターンの異なる群間で術後から10m歩行が自力で可能となるまでに要した日数(歩行可能日数)及び栄養状態に関連する血液生化学データの違いを検討することを目的とした。
【方法】
対象は大腿骨近位部骨折により入院し,理学療法及びNSTの介入を実施した患者100名とした。そのうち中枢神経疾患による歩行障害を有する者,神経筋疾患・糖尿病を有する者,クリティカルパス非適用者,合併症併発者を除く39名(男性8名,女性31名)を解析対象とした。調査は,一般情報,Mini Mental State Examination(MMSE),血液生化学データ,1日平均リハビリテーション実施単位数(平均リハ単位数),歩行可能日数の情報を収集した。術後1週毎にインボディ社製InBody S10を用いて四肢骨格筋量を計測しSMIを算出した。対象者を術後1週から3週までのSMI値を変数とし階層的クラスター分析を用いて分類した。被験者間の非類似度はユークリッド平方距離により算出し,クラスター間の非類似度の定義にはward法を用いた。分類を行った後,年齢,MMSE,血液生化学データ,平均リハ単位数,歩行可能日数をそれぞれ群間で比較した。群間比較には正規性の検定結果に基づきTukey検定,Steel-Dwass検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
クラスター分析の結果,39名の術後SMIの推移は3つの群に分類された。SMI高値群10名(年齢82.3±8.7歳,歩行可能日数10.7±4.6日),SMI低値群12名(年齢87.8±7.2歳,歩行可能日数18.1±9.7日),SMI中間群17名(年齢80.8±12.2歳,歩行可能日数12.7±5.7日)であった。各群間に年齢,MMSE,平均リハ単位数,歩行可能日数に統計学的有意差を認めなかったものの,歩行可能日数はSMIの値が大きい群ほど短い傾向であった。血液生化学データにSMIとの関連を示す項目は認めなかった。
【結論】
本研究では,大腿骨近位部骨折術後患者のSMIの推移を3つのパターンに分類することができた。またSMIが高い群ほど歩行可能日数が短い傾向にあり,術後SMIの推移と歩行可能日数が関連する可能性が示唆された。本結果から術後SMI値を規定する要因を明らかにすることはできないものの,半減期が短くリアルタイムな代謝を反映するとされるプレアルブミンを用いた検討が必要ではないかと考えられた。
近年,身体組成や栄養状態と移動能力の関連性に関心が高まっている。我々はこれまでに大腿骨近位部骨折患者を対象に,運動療法と栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)の介入の併用により,術後早期に歩行が獲得できる可能性を報告し,歩行を獲得するまでの日数と術後1週目の骨格筋指標(Skeletal Muscle mass Index:SMI)に関連があることを確認した。しかしながら,術後SMIの推移に関する報告はなされておらず,その推移のパターンと歩行獲得に要する日数の関連性は明らかではない。そこで本研究では,術後SMIの推移のパターン化を試みるとともに,回復パターンの異なる群間で術後から10m歩行が自力で可能となるまでに要した日数(歩行可能日数)及び栄養状態に関連する血液生化学データの違いを検討することを目的とした。
【方法】
対象は大腿骨近位部骨折により入院し,理学療法及びNSTの介入を実施した患者100名とした。そのうち中枢神経疾患による歩行障害を有する者,神経筋疾患・糖尿病を有する者,クリティカルパス非適用者,合併症併発者を除く39名(男性8名,女性31名)を解析対象とした。調査は,一般情報,Mini Mental State Examination(MMSE),血液生化学データ,1日平均リハビリテーション実施単位数(平均リハ単位数),歩行可能日数の情報を収集した。術後1週毎にインボディ社製InBody S10を用いて四肢骨格筋量を計測しSMIを算出した。対象者を術後1週から3週までのSMI値を変数とし階層的クラスター分析を用いて分類した。被験者間の非類似度はユークリッド平方距離により算出し,クラスター間の非類似度の定義にはward法を用いた。分類を行った後,年齢,MMSE,血液生化学データ,平均リハ単位数,歩行可能日数をそれぞれ群間で比較した。群間比較には正規性の検定結果に基づきTukey検定,Steel-Dwass検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
クラスター分析の結果,39名の術後SMIの推移は3つの群に分類された。SMI高値群10名(年齢82.3±8.7歳,歩行可能日数10.7±4.6日),SMI低値群12名(年齢87.8±7.2歳,歩行可能日数18.1±9.7日),SMI中間群17名(年齢80.8±12.2歳,歩行可能日数12.7±5.7日)であった。各群間に年齢,MMSE,平均リハ単位数,歩行可能日数に統計学的有意差を認めなかったものの,歩行可能日数はSMIの値が大きい群ほど短い傾向であった。血液生化学データにSMIとの関連を示す項目は認めなかった。
【結論】
本研究では,大腿骨近位部骨折術後患者のSMIの推移を3つのパターンに分類することができた。またSMIが高い群ほど歩行可能日数が短い傾向にあり,術後SMIの推移と歩行可能日数が関連する可能性が示唆された。本結果から術後SMI値を規定する要因を明らかにすることはできないものの,半減期が短くリアルタイムな代謝を反映するとされるプレアルブミンを用いた検討が必要ではないかと考えられた。