[O-YB-06-1] 急性期病院大腿骨近位部骨折患者における食事摂取カロリーと関連する因子の検討
Keywords:急性期病院, 大腿骨近位部骨折, 食事摂取量
【はじめに,目的】
近年,人口の高齢化に伴い,認知症,虚弱(frailty)を認める高齢者の増加が社会的な問題となっている。高齢者に多い大腿骨近位部骨折患者の多くは骨折前から認知症,栄養障害を合併しており,骨折と手術による侵襲や周術期の食事摂取量低下で栄養障害がさらに悪化し,機能回復に影響することが懸念されている。そこで本研究は大腿骨近位部骨折と診断されて急性期病院に入院し,手術を施行した患者の入院中の術後食事摂取カロリーとそれに関連する因子について調査することを目的とした。
【方法】
研究デザインは前向き観察研究であり,当院に2013年6月から2015年4月までに入院した65歳以上の転倒による大腿骨近位部骨折患者で入院後手術を施行した者とした。除外基準は術後免荷,嚥下障害,死亡例とした。調査内容は年齢,性別,BMI,下腿周径,握力,入院時血清データ(Alb,Hb,CRP),Mini Nutritional Assessment-Short Form(以下MNA-SF),受傷前歩行能力,術後翌日のFIM運動項目合計(以下,FIM運動項目初期),初期食事動作(以下,FIM食事初期),認知症の有無,術後合併症の有無,受傷前転倒歴とした。摂取カロリーは入院中1日当たりの平均摂取カロリー(Energy Intake,以下EI)とした。EIを目的変数として先行研究から年齢,性別,BMI,Alb,握力,MNA-SF,,FIM(運動項目初期,食事初期),認知症の有無を説明変数としとして強制投入した重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
105名(男性21名,女性84名)を解析対象とした。対象者特性は年齢82.4±6.6歳,性別(男性21名,女性84名),下腿周径28.1±3.5 cm,握力(13.0±6.8kg),BMI(20.2±3.3kg/m2),Alb(3.7±0.5g/dl),Hb(11.8±1.7g/dl),CRP(1.7±3.5mg/dl),MNA-SF(10.0±2.7点),受傷前歩行能力(独歩66名,物的介助39名),FIM運動項目初期(32.2±14.4点),FIM食事初期(5.0±1.8点),認知症の有無(あり49名,なし61名),術後合併症(あり43名,なし62名),受傷前転倒歴(2.1±1.0回)であった。EIは1063±274kcalであった。EIを目的変数とした重回帰分析の結果,握力(標準化偏回帰係数0.45,<0.001),認知症(0.22,<0.05)が有意に関連していた。(R2=0.38。P<0.001)
【結論】
本研究結果から術後食事摂取カロリーに握力と認知症が有意に関連していた。握力は全身の筋肉の指標だけではなく,栄養状態を反映し,低栄養を知る指標になることは先行研究で示されている。また低栄養と食事摂取カロリーは密接に関係していることから今回,握力が食事摂取カロリーと強い関連性を示したと考える。高齢者の虚弱は低栄養との関連が極めて強く,低栄養が存在するとフレイルティ・サイクルが構築される。そのため,虚弱を多く認める大腿骨近位部骨折患者では周術期における食事摂取カロリーは低栄養予防の重要な因子であることは勿論だが,全身筋力の指標である握力が今回の結果において食事摂取カロリーの予測因子になりうることが示唆された。
近年,人口の高齢化に伴い,認知症,虚弱(frailty)を認める高齢者の増加が社会的な問題となっている。高齢者に多い大腿骨近位部骨折患者の多くは骨折前から認知症,栄養障害を合併しており,骨折と手術による侵襲や周術期の食事摂取量低下で栄養障害がさらに悪化し,機能回復に影響することが懸念されている。そこで本研究は大腿骨近位部骨折と診断されて急性期病院に入院し,手術を施行した患者の入院中の術後食事摂取カロリーとそれに関連する因子について調査することを目的とした。
【方法】
研究デザインは前向き観察研究であり,当院に2013年6月から2015年4月までに入院した65歳以上の転倒による大腿骨近位部骨折患者で入院後手術を施行した者とした。除外基準は術後免荷,嚥下障害,死亡例とした。調査内容は年齢,性別,BMI,下腿周径,握力,入院時血清データ(Alb,Hb,CRP),Mini Nutritional Assessment-Short Form(以下MNA-SF),受傷前歩行能力,術後翌日のFIM運動項目合計(以下,FIM運動項目初期),初期食事動作(以下,FIM食事初期),認知症の有無,術後合併症の有無,受傷前転倒歴とした。摂取カロリーは入院中1日当たりの平均摂取カロリー(Energy Intake,以下EI)とした。EIを目的変数として先行研究から年齢,性別,BMI,Alb,握力,MNA-SF,,FIM(運動項目初期,食事初期),認知症の有無を説明変数としとして強制投入した重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
105名(男性21名,女性84名)を解析対象とした。対象者特性は年齢82.4±6.6歳,性別(男性21名,女性84名),下腿周径28.1±3.5 cm,握力(13.0±6.8kg),BMI(20.2±3.3kg/m2),Alb(3.7±0.5g/dl),Hb(11.8±1.7g/dl),CRP(1.7±3.5mg/dl),MNA-SF(10.0±2.7点),受傷前歩行能力(独歩66名,物的介助39名),FIM運動項目初期(32.2±14.4点),FIM食事初期(5.0±1.8点),認知症の有無(あり49名,なし61名),術後合併症(あり43名,なし62名),受傷前転倒歴(2.1±1.0回)であった。EIは1063±274kcalであった。EIを目的変数とした重回帰分析の結果,握力(標準化偏回帰係数0.45,<0.001),認知症(0.22,<0.05)が有意に関連していた。(R2=0.38。P<0.001)
【結論】
本研究結果から術後食事摂取カロリーに握力と認知症が有意に関連していた。握力は全身の筋肉の指標だけではなく,栄養状態を反映し,低栄養を知る指標になることは先行研究で示されている。また低栄養と食事摂取カロリーは密接に関係していることから今回,握力が食事摂取カロリーと強い関連性を示したと考える。高齢者の虚弱は低栄養との関連が極めて強く,低栄養が存在するとフレイルティ・サイクルが構築される。そのため,虚弱を多く認める大腿骨近位部骨折患者では周術期における食事摂取カロリーは低栄養予防の重要な因子であることは勿論だが,全身筋力の指標である握力が今回の結果において食事摂取カロリーの予測因子になりうることが示唆された。