The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-06] 口述演題(予防)06

Sat. May 13, 2017 6:10 PM - 7:10 PM A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

座長:藤田 博曉(埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科)

日本予防理学療法学会

[O-YB-06-2] 周術期にレジスタンストレーニングを行った食道癌患者における体組成,四肢筋力および持久力の経時的変化

近藤 心, 古本 太希, 佐藤 紀, 加藤 真介 (徳島大学病院リハビリテーション部)

Keywords:食道癌, 周術期, サルコペニア

【はじめに,目的】

食道がん周術期の患者は,手術侵襲による炎症,絶食期間の存在や通過障害などによる栄養障害,創部痛やドレーンの存在などによる活動量低下などから,サルコペニアなどの身体機能低下を来し易い状態にある。近年,がん治療中における筋力および筋肉量についての報告がなされているが,食道がん周術期における身体機能の経時的な変化についての報告は少ない。そこで本研究では食道がん周術期における体組成,上下肢筋力および持久力の経時的な変化を調査したため報告する。


【方法】

2015年4月から2016年9月の間に当院にて食道がんに対する根治的開胸開腹術が施行された患者(n=34)より,当院の食道癌術後パスに従い,術後1日より離床および経腸栄養開始,術後7日より経口摂取および下肢のレジスタンストレーニングを開始,入院日数の80%以上の日数で運動療法が可能であった21名を対象とした。調査項目について,除脂肪量はInBodyS10(InBody製),筋力については握力をグリップ-D(竹井機器工業製),等尺性膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力)をμ-TAS(アニマ製)を用いて測定し,持久力測定には6分間歩行テスト(以下6MWD)を実施した。各測定は,術前,術後14日,術後21から28日の間(以下術後28日)の計3回実施し,測定値の経時的な変化を検討した。統計解析は反復測定による分散分析と多重比較検定(Tukey法)を用いて検討し,有意水準は5%未満とした。統計ソフトはSPSSver.22.0を使用した。


【結果】

各測定結果は(術前,術後14日,術後28日)の順に平均値±標準偏差で表し,除脂肪量(45.6±7.4kg,43.0±5.5kg,43.2±8.6),握力(32.1±9.5kg,32.0±9.7kg,28.9±10.1kg),膝伸展筋力(32.7±10.8kg,30.4±8.7kg,30.4±15.8kg),6MWD(507.8±102.0m,478.2±93.6m,457.4±116.9m)となった。各項目の反復測定による分散分析の結果,除脂肪量,握力,および膝伸展筋力で有意な主効果が認められ,除脂肪量で術前と術後14日(p<0.01)および術前と術後28日(p<0.01),握力の術前と術後28日(p<0.01)および術後14日と術後28日(p<0.01),膝伸展筋力の術前と術後14日(p<0.05)で有意差を認めた。


【結論】

経腸栄養下における食道がん周術期の骨格筋へのアミノ酸動員は,術直後に最低値を示した後,術後14日で正の動員率を示すとの報告があり,蛋白質代謝面での変化が,本研究における術後14日までの除脂肪量低下に関する一つの原因と考えられる。また骨格筋量の減少に伴い,四肢の筋力低下も惹起されたと考えられるが,上肢筋力は術後14日以降で有意に低下しており,筋肉量減少よりもトレーニング不足など廃用の要素が強かった可能性が考えられる。対して比較的筋肉量の多い下肢では骨格筋の減少の影響を受けて術後14日までの筋力低下が大きいものの,レジスタンストレーニングにより術後14日以降の低下は少なかったものと考えられる。