[O-YB-06-3] がん性疼痛に対する経皮的電気刺激治療(TENS)の効果の検討―a pilot study―
Keywords:がん性疼痛, 経皮的電気刺激治療, オピオイド
【はじめに,目的】
がん性疼痛はがん患者の約70%が経験する症状であり,適切な鎮痛剤の使用によりその約80%はコントロールできるとされている。しかし,オピオイドなどの薬物療法では,嘔気・嘔吐,眠気,便秘,呼吸抑制などの副作用により,日常生活やQOLに悪影響を及ぼすリスクが高い。一方,経皮的電気刺激治療(TENS)は非侵襲的で安全な鎮痛手段であり,がん性疼痛に対する鎮痛効果についても報告されている。しかし,TENSの鎮痛効果に伴うオピオイド使用量の減少,身体機能やQOLの改善に着目した研究はみられない。本研究の目的は,がん性疼痛に対するTENSの鎮痛効果およびそれに伴うオピオイド使用量の減少,身体機能やQOL改善への効果を検証することである。
【方法】
対象は,がん性疼痛に対してレスキューとしてオピオイドを使用している患者9名(男性5名,女性4名,平均年齢65.6±11.5歳)。対象を一般的な理学療法(PT)を行う通常群4名と一般的なPT+低周波治療器ESPURGE(伊藤超短波)を用いてTENSを行うTENS群5名の2群にランダムに割り付けを行った。評価項目は,オピオイド使用量として,レスキューとしてのオキシコドン塩酸塩の1日平均使用量,また,疼痛は日常生活における最大および平均の疼痛の程度をNRSで評価した。身体活動量は,生活習慣記録機Lifecorder GS(スズケン)にて平均歩数を算出した。身体機能は握力および膝伸展筋力を,QOLはEORTC QLQ C-30のglobal QOLスコアを評価した。オピオイド使用量,疼痛の程度,身体活動量については,PT開始前,PT開始1週後,2週後,3週後に,身体機能およびQOLについては,PT開始前,PT開始3週後に評価を行った。統計解析は,PT開始1週後,2週後,3週後における各評価項目について,PT開始前からの変化率を算出し,対応のあるt検定にて2群間の比較を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
疼痛の程度およびQOLの変化率は2群間で有意差は認められなかった。オピオイド使用量の変化率は,通常群と比較し,TENS群にてPT開始1週後(10.2±15.7% vs -16.1±7.2%,p=0.01),2週後(11.4±12.2% vs -40.8±19.2%,p<.01),3週後(14.0±12.6% vs -28.8±20.4%,p<.01)で有意に減少した。身体活動量の変化率は2群間で有意差は認められなかったが,TENS群にて増加傾向であった。身体機能の変化率については,握力,膝伸展筋力ともにTENS群にて有意に改善が認められた。
【結論】
がん性疼痛に対してTENSを実施することにより,オピオイド使用量が減少し,身体機能の改善が認められたことから,がん性疼痛に対するcopingの手段の一つとしてTENSの使用が有用ではないかと考えられた。
がん性疼痛はがん患者の約70%が経験する症状であり,適切な鎮痛剤の使用によりその約80%はコントロールできるとされている。しかし,オピオイドなどの薬物療法では,嘔気・嘔吐,眠気,便秘,呼吸抑制などの副作用により,日常生活やQOLに悪影響を及ぼすリスクが高い。一方,経皮的電気刺激治療(TENS)は非侵襲的で安全な鎮痛手段であり,がん性疼痛に対する鎮痛効果についても報告されている。しかし,TENSの鎮痛効果に伴うオピオイド使用量の減少,身体機能やQOLの改善に着目した研究はみられない。本研究の目的は,がん性疼痛に対するTENSの鎮痛効果およびそれに伴うオピオイド使用量の減少,身体機能やQOL改善への効果を検証することである。
【方法】
対象は,がん性疼痛に対してレスキューとしてオピオイドを使用している患者9名(男性5名,女性4名,平均年齢65.6±11.5歳)。対象を一般的な理学療法(PT)を行う通常群4名と一般的なPT+低周波治療器ESPURGE(伊藤超短波)を用いてTENSを行うTENS群5名の2群にランダムに割り付けを行った。評価項目は,オピオイド使用量として,レスキューとしてのオキシコドン塩酸塩の1日平均使用量,また,疼痛は日常生活における最大および平均の疼痛の程度をNRSで評価した。身体活動量は,生活習慣記録機Lifecorder GS(スズケン)にて平均歩数を算出した。身体機能は握力および膝伸展筋力を,QOLはEORTC QLQ C-30のglobal QOLスコアを評価した。オピオイド使用量,疼痛の程度,身体活動量については,PT開始前,PT開始1週後,2週後,3週後に,身体機能およびQOLについては,PT開始前,PT開始3週後に評価を行った。統計解析は,PT開始1週後,2週後,3週後における各評価項目について,PT開始前からの変化率を算出し,対応のあるt検定にて2群間の比較を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
疼痛の程度およびQOLの変化率は2群間で有意差は認められなかった。オピオイド使用量の変化率は,通常群と比較し,TENS群にてPT開始1週後(10.2±15.7% vs -16.1±7.2%,p=0.01),2週後(11.4±12.2% vs -40.8±19.2%,p<.01),3週後(14.0±12.6% vs -28.8±20.4%,p<.01)で有意に減少した。身体活動量の変化率は2群間で有意差は認められなかったが,TENS群にて増加傾向であった。身体機能の変化率については,握力,膝伸展筋力ともにTENS群にて有意に改善が認められた。
【結論】
がん性疼痛に対してTENSを実施することにより,オピオイド使用量が減少し,身体機能の改善が認められたことから,がん性疼痛に対するcopingの手段の一つとしてTENSの使用が有用ではないかと考えられた。