[O-YB-07-5] 軽度認知障害及び軽度アルツハイマー病患者においてサルコペニアは1年後ADL低下の危険因子である
Keywords:サルコペニア, 大脳白質病変, ADL
【はじめに,目的】
軽度認知障害(Mild cognitive impairment:MCI)及びアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)患者は加齢に伴い増加するため,認知機能低下のみならずサルコペニア,大脳白質病変などの老年症候群を有することが多い。本研究の目的は,MCI,AD患者においてサルコペニア,大脳白質病変と1年後の日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の低下との関連性を明らかにすることである。
【方法】
対象は,2010年10月~2015年4月の間に,もの忘れセンターを受診し,初診時に70歳以上,Barthel Index 80点以上,Mini-Mental State Examinationが18点以上でMCIまたはADと診断された326名である。約12ヶ月後に追跡調査の回答が得られた277名(フォロー率:85.0%,年齢:78.9±4.9歳,女性:70.4%,MCI:93名,AD:184名)を最終的な解析対象とした。ADLはBarthel Indexにて評価し,5点以上減少した者をADL低下群とした。身体機能はTimed Up and Go test(TUG),握力,予測骨格筋量をバイオインピーダンス法で計測した。サルコペニアの定義は,TUGを5分位に分け最も時間がかかった分位であること,または筋力低下に加えて,筋量減少がある者とした。大脳白質病変は,T2及びFLAIR画像より自動解析ソフトを用いて頭蓋内容積に対する白質病変の容積(%)を算出した。その他,転倒歴,仕事の有無,運動習慣,社会活動,喫煙歴,飲酒歴,服薬歴,併存疾患を調査し,行動心理症状をDementia behavior disturbance scale(DBD),抑うつ症状をGeriatric Depression Scale,意欲をVitality Index(VI)にて評価した。統計解析は,ADL低下の有無により群分けし,対応のないt検定,χ2検定により各測定項目の群間比較を行った。また,ADL低下の有無を目的変数,説明変数として社会人口学的指標,サルコペニア,大脳白質病変に加え,群間比較でP値0.2以下の変数を投入したステップワイズロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
平均377.3±90.3日の追跡期間で,ADL低下群は63名(22.7%)であった。ADL低下群では,ベースライン時のサルコペニアの有症率が高く(31.8% vs 15.0%,P<.01),大脳白質病変が多かった(1.35±1.1% vs 1.0±1.1%,P<.01)。その他,ADL低下群は,有意に年齢,DBDの得点が高く,MMSE,VIの得点が低く(P<.05),仕事を有している人が少なかった(P<.05)。多変量解析の結果,1年後のADL低下と有意に関連していたのは,年齢(OR=1.08,[1.01-1.16]),サルコペニア(OR=2.19,[1.02-4.69]),DBD(OR=1.07,[1.03-1.11])であった。統計学的に有意ではないものの大脳白質病変は1年後ADL低下と関連する傾向が認められた(OR=1.29,[0.99-1.69])。
【結論】
MCI,AD患者においてサルコペニアは,ADL低下の危険因子であった。サルコペニアは栄養,運動療法により改善可能な状態であると考えられ,サルコペニアに対する介入によって認知症患者のADL低下を予防できる可能性が示唆された。
軽度認知障害(Mild cognitive impairment:MCI)及びアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)患者は加齢に伴い増加するため,認知機能低下のみならずサルコペニア,大脳白質病変などの老年症候群を有することが多い。本研究の目的は,MCI,AD患者においてサルコペニア,大脳白質病変と1年後の日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の低下との関連性を明らかにすることである。
【方法】
対象は,2010年10月~2015年4月の間に,もの忘れセンターを受診し,初診時に70歳以上,Barthel Index 80点以上,Mini-Mental State Examinationが18点以上でMCIまたはADと診断された326名である。約12ヶ月後に追跡調査の回答が得られた277名(フォロー率:85.0%,年齢:78.9±4.9歳,女性:70.4%,MCI:93名,AD:184名)を最終的な解析対象とした。ADLはBarthel Indexにて評価し,5点以上減少した者をADL低下群とした。身体機能はTimed Up and Go test(TUG),握力,予測骨格筋量をバイオインピーダンス法で計測した。サルコペニアの定義は,TUGを5分位に分け最も時間がかかった分位であること,または筋力低下に加えて,筋量減少がある者とした。大脳白質病変は,T2及びFLAIR画像より自動解析ソフトを用いて頭蓋内容積に対する白質病変の容積(%)を算出した。その他,転倒歴,仕事の有無,運動習慣,社会活動,喫煙歴,飲酒歴,服薬歴,併存疾患を調査し,行動心理症状をDementia behavior disturbance scale(DBD),抑うつ症状をGeriatric Depression Scale,意欲をVitality Index(VI)にて評価した。統計解析は,ADL低下の有無により群分けし,対応のないt検定,χ2検定により各測定項目の群間比較を行った。また,ADL低下の有無を目的変数,説明変数として社会人口学的指標,サルコペニア,大脳白質病変に加え,群間比較でP値0.2以下の変数を投入したステップワイズロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
平均377.3±90.3日の追跡期間で,ADL低下群は63名(22.7%)であった。ADL低下群では,ベースライン時のサルコペニアの有症率が高く(31.8% vs 15.0%,P<.01),大脳白質病変が多かった(1.35±1.1% vs 1.0±1.1%,P<.01)。その他,ADL低下群は,有意に年齢,DBDの得点が高く,MMSE,VIの得点が低く(P<.05),仕事を有している人が少なかった(P<.05)。多変量解析の結果,1年後のADL低下と有意に関連していたのは,年齢(OR=1.08,[1.01-1.16]),サルコペニア(OR=2.19,[1.02-4.69]),DBD(OR=1.07,[1.03-1.11])であった。統計学的に有意ではないものの大脳白質病変は1年後ADL低下と関連する傾向が認められた(OR=1.29,[0.99-1.69])。
【結論】
MCI,AD患者においてサルコペニアは,ADL低下の危険因子であった。サルコペニアは栄養,運動療法により改善可能な状態であると考えられ,サルコペニアに対する介入によって認知症患者のADL低下を予防できる可能性が示唆された。