[O-YB-07-6] 軽度認知機能低下がサルコペニア有病者の新規要介護発生リスクへ与える影響:24ヵ月間の前向き研究
Keywords:サルコペニア, 軽度認知機能低下, 地域在住高齢者
【はじめに,目的】
サルコペニアは加齢に伴う筋量や筋力の低下を特徴とする症候群であり,理学療法の重要な対象となる。一方,軽度認知機能低下は認知症発症のリスクだけでなく身体機能低下のリスクにもなるため,要介護発生のリスクを増加させる要因の一つと考えられる。しかし,サルコペニアと軽度認知機能低下が併存する高齢者の要介護発生リスクは未だ明らかではなく,そのような者では要介護発生リスクがさらに高いことが予想され,予防理学療法のより重要な適応となる可能性が極めて高い。そこで,地域在住高齢者を対象とした2年間の前方視的な調査を行い,サルコペニアおよび軽度認知機能低下と要介護発生状況との関連を調査した。
【方法】
対象は,National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesの70歳以上の健診受診者5257名のうち,パーキンソン病,脳卒中,うつ病の既往歴がある者,要介護認定者,MMSE21点未満の者,測定項目に欠損がある者,ペースメーカー使用者,死亡または市外転居した者を除く3900名とした。
ベースライン評価は骨格筋量,握力,歩行速度,Mini-Mental State Examination(以下:MMSE),Geriatric Depression Scale(以下:GDS),薬剤投与数,教育年数,アルコール摂取,喫煙,その他基本属性を調査した。サルコペニアはAsian Working Group for Sarcopeniaのアルゴリズムにより判定を行い,認知機能低下はMMSEが26点以下の者とした。ベースライン以降の24か月間における新規要支援・要介護発生の有無を調べた。統計解析は,ベースライン評価によって健常群,サルコペニア群,軽度認知機能低下群,サルコペニアと軽度認知機能低下の併存群の4群に分け,Log-rank検定およびCox比例ハザード回帰分析を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
調査対象3900名のうち,健常群1788名,サルコペニア群120名,軽度認知機能低下群1853名,併存群139名であり,288名(7.4%)が2年間で要支援・要介護を新規に発生した。各群の新規要支援・要介護発生率は,健常群5.1%,サルコペニア群8.3%,軽度認知機能低下群8.6%,併存群18.7%であり,Log-rank検定の結果,併存群とその他3群に有意差があった(p<0.05)。Cox比例ハザード回帰分析による健常群に対する要介護発生のハザード比は性,年齢,体重,GDS,喫煙,教育年数の調整モデルにおいて,サルコペニア群1.05(信頼区間:0.54-2.02),軽度認知機能低下群1.47(信頼区間:1.12-1.90),併存群1.97(信頼区間1.25-3.10)であり,軽度認知機能低下群と併存群は有意に新規要介護発生との関連が認められた。
【結論】
健常高齢者と比較して,サルコペニアと軽度認知機能低下を併存する者は約2倍,軽度認知機能低下のみでは約1.5倍の要介護発生リスクであることが示唆された。そのため,サルコペニアの有無に加え,認知機能を評価することは新規要介護リスクを客観的に把握するために有用である。
サルコペニアは加齢に伴う筋量や筋力の低下を特徴とする症候群であり,理学療法の重要な対象となる。一方,軽度認知機能低下は認知症発症のリスクだけでなく身体機能低下のリスクにもなるため,要介護発生のリスクを増加させる要因の一つと考えられる。しかし,サルコペニアと軽度認知機能低下が併存する高齢者の要介護発生リスクは未だ明らかではなく,そのような者では要介護発生リスクがさらに高いことが予想され,予防理学療法のより重要な適応となる可能性が極めて高い。そこで,地域在住高齢者を対象とした2年間の前方視的な調査を行い,サルコペニアおよび軽度認知機能低下と要介護発生状況との関連を調査した。
【方法】
対象は,National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesの70歳以上の健診受診者5257名のうち,パーキンソン病,脳卒中,うつ病の既往歴がある者,要介護認定者,MMSE21点未満の者,測定項目に欠損がある者,ペースメーカー使用者,死亡または市外転居した者を除く3900名とした。
ベースライン評価は骨格筋量,握力,歩行速度,Mini-Mental State Examination(以下:MMSE),Geriatric Depression Scale(以下:GDS),薬剤投与数,教育年数,アルコール摂取,喫煙,その他基本属性を調査した。サルコペニアはAsian Working Group for Sarcopeniaのアルゴリズムにより判定を行い,認知機能低下はMMSEが26点以下の者とした。ベースライン以降の24か月間における新規要支援・要介護発生の有無を調べた。統計解析は,ベースライン評価によって健常群,サルコペニア群,軽度認知機能低下群,サルコペニアと軽度認知機能低下の併存群の4群に分け,Log-rank検定およびCox比例ハザード回帰分析を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
調査対象3900名のうち,健常群1788名,サルコペニア群120名,軽度認知機能低下群1853名,併存群139名であり,288名(7.4%)が2年間で要支援・要介護を新規に発生した。各群の新規要支援・要介護発生率は,健常群5.1%,サルコペニア群8.3%,軽度認知機能低下群8.6%,併存群18.7%であり,Log-rank検定の結果,併存群とその他3群に有意差があった(p<0.05)。Cox比例ハザード回帰分析による健常群に対する要介護発生のハザード比は性,年齢,体重,GDS,喫煙,教育年数の調整モデルにおいて,サルコペニア群1.05(信頼区間:0.54-2.02),軽度認知機能低下群1.47(信頼区間:1.12-1.90),併存群1.97(信頼区間1.25-3.10)であり,軽度認知機能低下群と併存群は有意に新規要介護発生との関連が認められた。
【結論】
健常高齢者と比較して,サルコペニアと軽度認知機能低下を併存する者は約2倍,軽度認知機能低下のみでは約1.5倍の要介護発生リスクであることが示唆された。そのため,サルコペニアの有無に加え,認知機能を評価することは新規要介護リスクを客観的に把握するために有用である。