[O-YB-08-1] 高齢者の移動能力に対する筋疲労課題中のパワー産生能力の重要性
Keywords:筋疲労, 移動能力, 筋力
【はじめに,目的】
高齢者が自立した日常生活を送るためには,移動能力の維持が重要である。移動能力の低下の原因の1つとして,最大筋力が挙げられている。最大筋力の測定は一瞬の最大の力を測定するが,日常生活で発揮する場面は少なく,むしろ最大下の力を疲れずに持続的に発揮する場面が多く見受けられる。つまり,筋疲労が移動能力に影響すると考えられる。そこで,本研究は,日常生活の収縮形態に近い等張性収縮による筋疲労課題を用いて,最大筋力と持続的に力を発揮する能力のどちらが移動能力に影響するのかを検証した。筋疲労を評価や治療に応用できる可能性を示すことが本研究の意義となる。
【方法】
対象は,地域在住の女性の高齢者15名とし(年齢:79.6±6.2歳,BMI:23.0±3.0kg/m2,MMSE≥24点),Short Physical Performance Batteryの点数をもとに,移動能力維持群(以下;維持群)と移動能力低下群(以下;低下群)に群わけをした(維持群>9点;低下群≤9点)。最大筋力は,BIODEXを使用し,膝関節屈曲90°で膝関節伸展の最大等尺性随意収縮(Maximal voluntary contractions;以下MVCs)を3回測定し,最大値を用いた。疲労課題は,BIODEXを用いて,20%MVCの負荷に対して出来るだけ速い速度で膝関節伸展運動(膝関節屈曲90°から0°まで)を30回行う疲労課題を実施した。疲労課題中に,最大パワー,最大速度,パワーの総和,パワーの変化率を測定した。パワーの変化率は,最大パワーを基準に5回ごとの平均値をもとに算出した。疲労課題中のパワーの変化率の時系列と群間の2要因の比較には繰り返しのある二元配置分散分析を行った。有意差を認めた場合,時系列はTukey's HSDによる多重比較検定を用いた。また,群間の比較は対応のないt検定を用いた。また,それ以外の指標の群間の比較には,対応のないt検定を用いた。全て有意水準は危険率5%未満とし,統計ソフトはSPSS 19.0 Japaneseを用いた。
【結果】
年齢,BMI,MVC,最大パワー,最大速度は群間に有意差を認めなかった。パワーの変化率は1-5回に比べて,両群ともに有意に減少した(p<0.05)。また,群間の差は,1-5回で低下群に比べて維持群が有意に高い値を示した(p<0.05)。パワーの総和(維持群;2068.8±635.3W vs 低下群;1385.4±547.5W)は群間に有意差を認めた(p<0.05)。
【結論】
本研究において,最大筋力は移動能力の低下に影響せず,持続的に力を発揮する能力が影響することが明らかとなった。また,低下群は維持群に比べて,課題早期にパワーを維持できていないことも示された。よって,筋疲労という観点は移動能力の評価や治療に重要であると考えられる。
高齢者が自立した日常生活を送るためには,移動能力の維持が重要である。移動能力の低下の原因の1つとして,最大筋力が挙げられている。最大筋力の測定は一瞬の最大の力を測定するが,日常生活で発揮する場面は少なく,むしろ最大下の力を疲れずに持続的に発揮する場面が多く見受けられる。つまり,筋疲労が移動能力に影響すると考えられる。そこで,本研究は,日常生活の収縮形態に近い等張性収縮による筋疲労課題を用いて,最大筋力と持続的に力を発揮する能力のどちらが移動能力に影響するのかを検証した。筋疲労を評価や治療に応用できる可能性を示すことが本研究の意義となる。
【方法】
対象は,地域在住の女性の高齢者15名とし(年齢:79.6±6.2歳,BMI:23.0±3.0kg/m2,MMSE≥24点),Short Physical Performance Batteryの点数をもとに,移動能力維持群(以下;維持群)と移動能力低下群(以下;低下群)に群わけをした(維持群>9点;低下群≤9点)。最大筋力は,BIODEXを使用し,膝関節屈曲90°で膝関節伸展の最大等尺性随意収縮(Maximal voluntary contractions;以下MVCs)を3回測定し,最大値を用いた。疲労課題は,BIODEXを用いて,20%MVCの負荷に対して出来るだけ速い速度で膝関節伸展運動(膝関節屈曲90°から0°まで)を30回行う疲労課題を実施した。疲労課題中に,最大パワー,最大速度,パワーの総和,パワーの変化率を測定した。パワーの変化率は,最大パワーを基準に5回ごとの平均値をもとに算出した。疲労課題中のパワーの変化率の時系列と群間の2要因の比較には繰り返しのある二元配置分散分析を行った。有意差を認めた場合,時系列はTukey's HSDによる多重比較検定を用いた。また,群間の比較は対応のないt検定を用いた。また,それ以外の指標の群間の比較には,対応のないt検定を用いた。全て有意水準は危険率5%未満とし,統計ソフトはSPSS 19.0 Japaneseを用いた。
【結果】
年齢,BMI,MVC,最大パワー,最大速度は群間に有意差を認めなかった。パワーの変化率は1-5回に比べて,両群ともに有意に減少した(p<0.05)。また,群間の差は,1-5回で低下群に比べて維持群が有意に高い値を示した(p<0.05)。パワーの総和(維持群;2068.8±635.3W vs 低下群;1385.4±547.5W)は群間に有意差を認めた(p<0.05)。
【結論】
本研究において,最大筋力は移動能力の低下に影響せず,持続的に力を発揮する能力が影響することが明らかとなった。また,低下群は維持群に比べて,課題早期にパワーを維持できていないことも示された。よって,筋疲労という観点は移動能力の評価や治療に重要であると考えられる。