[O-YB-08-4] 高齢者における安定した支持面上および不安定板上での片脚立位制御とRate of Force Developmentとの関連
Keywords:高齢者, 片脚立位, Rate of Force Development
【はじめに,目的】
外乱負荷応答時などの立位姿勢制御において,最大筋力を発揮させる能力よりも素早く下肢筋力を発揮させる能力(Rate of Force Development:RFD)が重要であると考えられている。我々は高齢者の片脚立位保持時間と下肢筋のRFDとの関連について調べた結果,筋収縮開始のonsetから200msの時点までのRFDや最大筋力とは関連がみられないが,収縮開始から30msの時点までのごく早い時期のRFDは関連していることを報告した(ECSS 2016)。このことから,片脚立位時の足圧中心移動を素早く制御するために早期のRFDが重要であることが推測されたが,片脚立位姿勢時の足圧中心移動速度とRFDとの関連を調べた研究は見当たらない。さらに,安定した支持面だけでなく不安定な支持面上での片脚立位制御とRFDとの関連について詳細に分析した報告はない。本研究の目的は高齢者における安定した支持面上および不安定板上での片脚立位制御とRFDとの関連性について明らかにすることである。
【方法】
対象は地域在住の健常高齢女性65名(平均年齢73.6±6.5歳)とした。安定した支持面課題として足圧分布測定装置(フィンガルリンク製Win-Pod)上,不安定な支持面課題として不安定傾斜板(酒井医療製DYJOC board plus)上で20秒間片脚立位保持させ,それぞれ前後および左右方向の足圧中心(CoP)の平均移動速度,不安定板傾斜角度の総角度変動量を算出した。なお,総角度変動量が多いほど不安定板を動かす速度が速いことを意味する。最大筋力として足関節底屈と股関節外転の最大等尺性筋力を測定した。RFDは足関節底屈と股関節外転について「できるだけ素早く・強く」最大筋力を発揮させたときの力-時間曲線の傾き(Δforce/Δtime)から算出した。収縮開始のonsetから200msの時点までのRFD(200msRFD)に加えて,30msの時点までの早期RFD(30msRFD)も求めた。
統計は従属変数をそれぞれ前後および左右方向のCoP移動速度および不安定傾斜板の総角度変動量とし,独立変数を年齢,足底屈および股外転の最大トルク,30msRFD,200msRFDとした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
【結果】
重回帰分析の結果,前後および左右方向のCoP移動速度に影響を及ぼす因子として足底屈30msRFD(β=0.313;β=0.248)が抽出された。また,不安定板の前後方向の総角度変動量に対する影響因子は抽出されなかったが,左右方向では足底屈の30msRFD(β=0.345)が抽出された。足底屈および股外転の最大トルクおよび200msRFDはいずれも影響因子として抽出されなかった。
【結論】
本研究の結果,高齢者における安定した支持面および不安定な支持面での片脚立位制御には最大筋力よりもRFD,特に収縮開始から30msの時点までの早期RFDが関連していることが示唆された。また,片脚立位の制御には,股関節外転筋よりも足関節底屈筋の素早い筋力発揮が重要であることが示唆された。
外乱負荷応答時などの立位姿勢制御において,最大筋力を発揮させる能力よりも素早く下肢筋力を発揮させる能力(Rate of Force Development:RFD)が重要であると考えられている。我々は高齢者の片脚立位保持時間と下肢筋のRFDとの関連について調べた結果,筋収縮開始のonsetから200msの時点までのRFDや最大筋力とは関連がみられないが,収縮開始から30msの時点までのごく早い時期のRFDは関連していることを報告した(ECSS 2016)。このことから,片脚立位時の足圧中心移動を素早く制御するために早期のRFDが重要であることが推測されたが,片脚立位姿勢時の足圧中心移動速度とRFDとの関連を調べた研究は見当たらない。さらに,安定した支持面だけでなく不安定な支持面上での片脚立位制御とRFDとの関連について詳細に分析した報告はない。本研究の目的は高齢者における安定した支持面上および不安定板上での片脚立位制御とRFDとの関連性について明らかにすることである。
【方法】
対象は地域在住の健常高齢女性65名(平均年齢73.6±6.5歳)とした。安定した支持面課題として足圧分布測定装置(フィンガルリンク製Win-Pod)上,不安定な支持面課題として不安定傾斜板(酒井医療製DYJOC board plus)上で20秒間片脚立位保持させ,それぞれ前後および左右方向の足圧中心(CoP)の平均移動速度,不安定板傾斜角度の総角度変動量を算出した。なお,総角度変動量が多いほど不安定板を動かす速度が速いことを意味する。最大筋力として足関節底屈と股関節外転の最大等尺性筋力を測定した。RFDは足関節底屈と股関節外転について「できるだけ素早く・強く」最大筋力を発揮させたときの力-時間曲線の傾き(Δforce/Δtime)から算出した。収縮開始のonsetから200msの時点までのRFD(200msRFD)に加えて,30msの時点までの早期RFD(30msRFD)も求めた。
統計は従属変数をそれぞれ前後および左右方向のCoP移動速度および不安定傾斜板の総角度変動量とし,独立変数を年齢,足底屈および股外転の最大トルク,30msRFD,200msRFDとした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
【結果】
重回帰分析の結果,前後および左右方向のCoP移動速度に影響を及ぼす因子として足底屈30msRFD(β=0.313;β=0.248)が抽出された。また,不安定板の前後方向の総角度変動量に対する影響因子は抽出されなかったが,左右方向では足底屈の30msRFD(β=0.345)が抽出された。足底屈および股外転の最大トルクおよび200msRFDはいずれも影響因子として抽出されなかった。
【結論】
本研究の結果,高齢者における安定した支持面および不安定な支持面での片脚立位制御には最大筋力よりもRFD,特に収縮開始から30msの時点までの早期RFDが関連していることが示唆された。また,片脚立位の制御には,股関節外転筋よりも足関節底屈筋の素早い筋力発揮が重要であることが示唆された。