The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-08] 口述演題(予防)08

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:井上 和久(埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科)

日本予防理学療法学会

[O-YB-08-5] 地域在住高齢者の足底各部の足圧と足部形態異常との関連

仲 貴子 (千葉県立保健医療大学健康科学部)

Keywords:地域在住高齢者, 足部障害, 足圧分布測定

【はじめに,目的】歩行中の足圧分布と足部形態との関係を調べた研究は国内外で散見されるが,国内の研究の多くは,抽出した足圧特徴点の軌跡を比較する波形分析が多く,足圧の力学的特性に着目して分析したものは多くない。演者はこれまで高齢者の足部形態異常や足部痛の高い有症率を報告してきたが,足部形態異常の発生には日常繰り返される歩行動作中の足圧特性が寄与すると考えている。本研究では自立歩行が可能な高齢者を対象に足圧分布測定器による歩行検査を行い,足圧と足部形態異常との関係を分析し,足部形態異常の発生を予防する効果的方略を探る基礎資料を得ることを目的とした。

【方法】地域在住高齢者210人(男性129人,女性81人,平均年齢±SD 74.6±5.0歳)を対象とした。計測機器は足圧分布測定器プレダスMD-1000(アニマ社)を用いた。計測プロトコルはMenzら(2006)に倣い,歩行開始から2歩目の立脚相における足底各部の単位面積に加わる圧力(kgf/cm2)を周波数20Hzで計測した。この圧力値を立脚時間で時間積分して力積(kgf/cm2・m/s)を算出し,足底面積全体の総和力積,踵部最大力積,中足骨頭部最大力積,母趾底部最大力積(単位は全てkgf/cm2・m/s)を求めた。ただしこれらの値は体重と極めて強い正の相関を有するので体重で正規化した値を以て分析に使用した。足部形態異常の有無は,Manchester Scale2点以上を「外反母趾あり」,静止立位のFootPrintで四趾に接地異常があるものを「足趾変形あり」,舟状骨高3.0cm以下を「扁平足あり」と定義した。また足部痛の有無は過去1ヶ月間に1日以上持続する足部痛の有無を尋ねた。分析は,外反母趾の有無,四趾変形の有無,扁平足の有無,足部痛の有無をそれぞれ従属変数とし,総和力積,踵部最大力積,中足骨頭部最大力積,母趾底部最大力積を独立変数,歩行速度と足部痛の有無を調整変数として多重ロジスティック回帰分析(尤度比による変数増加法)を行った。

【結果】総和力積,踵部最大力積,中足骨頭部最大力積,母趾底部最大力積の平均±SDはそれぞれ17.06±2.58,0.30±0.11,0.41±0.13,0.28±0.19(kgf/cm2・m/s)であった。四趾変形と関連が認められたのは中足骨頭部最大力積(Odds Rasio(OR)18.43,95%CI 1.90-178.99,p<.05),扁平足と関連が認められたのは総和力積(Odds Rasio(OR)0.76,95%CI 0.64-0.90,p<.01)で,外反母趾はいずれの部位の足圧とも関連はみられなかった。

【結論】前足部の形態異常(四趾変形)は中足骨頭部の足圧亢進との関連が示唆された。ただし本研究は横断研究であり前足部形態異常と足圧との因果関係には言及できない。また扁平足における過体重の寄与を指摘する先行研究は多いが,本研究の総和力積は体重で正規化した値であることから,扁平足には,総和(足底圧)力積を亢進させる過体重以外の何等かの要因(歩行時間距離因子等)の関与を示唆するものである。