第52回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会 » ポスター発表

[P-DM-01] ポスター(糖尿病)P01

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本糖尿病理学療法学会

[P-DM-01-4] 生体肝移植術後の患者の歩行レベルと関連する因子の検討

児玉 了1, 西 佳子2, 小山 雄二郎2, 水田 博志2 (1.熊本大学医学部付属病院医療技術部リハビリテーション技術部門, 2.熊本大学医学部付属病院リハビリテーション科)

キーワード:生体肝移植術後, 運動負荷量, リハビリテーション

【はじめに】われわれは以前アルブミン値3.0g/dl以上の症例は自立歩行が可能な傾向にあることを報告した。今回の研究の目的は生体肝移植術後の患者の歩行レベルと関連する因子を後方視的に検討することである。

【対象・方法】2010年1月から2016年9月までに当院移植外科で生体肝移植術が施行され,入院期間中にリハビリ処方がされた生体肝移植術後患者36名(女性20名,男性16名,平均年齢50.6歳(21歳~69歳))を,自立歩行が可能だった27名(以下:自立可能群)と自立歩行が不可能だった9名(以下:自立不可能群)の2群間に分け,カルテより後方視的に調査し比較検討した。すべてChild-Pugh分類Cで肝機能としては末期の状態の患者であった。調査項目は社会背景として年齢,性別,術後リハビリ項目としてリハビリ実施期間,手術からリハビリ開始までの期間,FIM gain(移動項目),転機,手術項目としてgraft-to recipicet weigh ratio(以下:GRWR),肝合成機能としてアルブミン値を後方視的に調査した。統計学的解析はIBM SPSS Statistics 20を使用し,年齢,リハビリ実施期間,手術からリハビリ開始までの期間,FIM gain(移動項目),GRWRについて,2群間でMann-WhitneyのU検定を行い,次に性別と転機(自宅退院:転院・死亡)とリハビリ終了時のアルブミン値(3.0g/dl以下:3.0g/dl以上)について2群とカテゴリー化した因子でクロス集計表を作成して,カイ二乗検定を実施した。次に歩行レベルと関連因子の影響を検討するために,Mann-WhitneyのU検定とカイ二乗検定にて,有意差を認めた因子を尤度比による変数増加法にて多重ロジスティック回帰分析を実施した。なお有意水準5%で実施した。

【結果】2群間においてMann-WhitneyのU検定の結果では年齢で有意差を認めた。(P=0.003)クロス集計表によるカイ二乗検定の結果ではリハビリ終了時のアルブミン値,転機で有意差を認めた。(P=0.014)(P=0.000)次に有意差を認めた因子による多重ロジスティック回帰分析では転機が有意差を認めた。(P=0.001オッズ比0.019 95%信頼区間:0.002-0.219)

【考察・結論】今回の研究において,生体肝移植術後の患者の歩行レベルと関連のある因子として転機が抽出され,関連因子の可能性が示唆された。一方,リハビリ終了時のアルブミン値は有意差が認められなかったが,アルブミン値が3.0g/dl以上・以下によって,歩行レベルの運動負荷量を調整する必要性が示唆された。今後は生体肝移植術後の患者の自立歩行の有無に関与する因子の抽出を検討し,栄養療法を含めた包括的生体肝移植術後のリハビリを構築していきたい。