第52回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会 » ポスター発表

[P-DM-03] ポスター(糖尿病)P03

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本糖尿病理学療法学会

[P-DM-03-3] 回復期リハビリテーション病棟における透析患者の退院時のADL自立度の特徴
―脳血管疾患および運動器疾患におけるFIM運動項目点数の分析―

伊藤 良太 (医療法人偕行会偕行会リハビリテーション病院リハビリテーション部)

キーワード:回復期リハビリテーション病棟, 透析患者, ADL自立度

【はじめに,目的】

2012年の診療報酬改定により,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)においても人工透析の出来高算定が可能となった。透析クリニックを併設する当院回復期病棟でも透析患者の入院数が増加しているが,透析患者は非透析患者と比べてADLの自立に難渋する印象を受ける。透析患者は非透析患者と比べて身体機能の低下が著しく,ひとたび脳血管障害などを発症するとADLが著明に低下すると報告されている。しかし,その後にADLの自立度の改善を図る回復期病棟における透析患者のADLについての報告は少なく,その特徴は明らかでない。本研究は,透析患者に対する有効な介入方法を検討するための基礎的な知見を得ることを目的とし,当院回復期病棟に入院した透析患者の退院時のADL自立度を調査し,疾患別に非透析患者と比較した。

【方法】

対象は2012年10月~2015年5月に脳血管または運動器疾患により当院回復期病棟に入院し,入院中の急性転化がない患者とした。主調査項目は退院時FIM運動項目点数とし,補助調査項目は入院時FIM運動項目点数,歩行獲得率,男性比率,入院時年齢,待機日数,在院日数とした。FIM移動項目点数は歩行と車椅子の双方を,歩行獲得率は退院時に退院後の主な移動手段が歩行である者の比率を調査した。統計学的な有意水準は5%とし,Mann-WhitneyU検定またはχ2検定にて,脳血管および運動器疾患のそれぞれで,透析群と非透析群の2群間で各調査項目を比較した。

【結果】

脳血管疾患は透析群26名(67.5歳,透析歴7.0年)/非透析群564名(70.9歳)で,退院時FIM(点)の階段2.5/3.7,男性比率(%)84.6/57.3に有意差がみられた。運動器疾患は透析群31名(透析歴9.1年)/非透析群494名で,退院時FIM(点)の排便管理4.7/5.9・浴槽移乗3.9/4.7・歩行4.1/5.2・車椅子駆動3.4/2.0,入院時FIM(点)のトイレ動作3.6/4.5・排便管理4.7/5.7・歩行1.8/2.5,男性比率(%)58.1/30.2,入院時年齢(歳)75.4/78.2,待機日数(日)29.3/23.8,歩行獲得率(%)74.2/86.8に有意差がみられた。

【結論】

脳血管または運動器疾患において,透析患者は非透析患者に比べて退院時に歩行,階段,浴槽移乗など難易度の高いADLの自立度が低い特徴がみられた。透析患者は非透析患者と比べて在宅生活での身体活動量やADLが低下しており,疲労や骨格筋変化などにより効果的な運動療法が困難と報告されている。これらの要因が透析患者のADLの自立を困難にした可能性が考えられる。また,運動器疾患の透析患者は非透析患者より若年であるが,脳血管疾患の透析患者よりも高齢で透析歴が長く,非透析患者より入院時から自立度が低いADLが多かった。運動器疾患の透析患者には,身体活動量やADLの低下などの病前要因がより影響した可能性が考えられる。本研究では透析患者のADLの自立が困難になる要因は明らかにできていない。さらなる要因分析が今後の課題と考える。