[P-DM-03-4] 重度低栄養状態をきたし,ドライウエイトコントロールがうまくいかず,透析中の血圧低下,転倒を生じてしまった一症例の検討
Keywords:低栄養状態, ドライウエイト, 血圧低下
【はじめに,目的】
血液透析患者において低栄養状態ならびに身体活動量低下が心血管イベントや予後規定因子であることが示されている。低栄養状態の持続は筋肉量の減少や筋力低下等を引き起こし,運動耐容能や日常生活動作能力,生活の質の低下を惹起する。先行研究では,低栄養状態をきたす血液透析患者でも栄養療法に加え運動療法を複合的に施行することで栄養状態および身体機能の改善を図ることができるとされている。今回,骨折の既往,重度低栄養状態,身体機能低下を来している患者を担当し。透析中のレジスタンストレーニングを3ヵ月間実施した。その結果,栄養状態改善,身体機能・透析効率向上を図ることができたが,ドライウエイト(以下DW)のコントロールに難渋し,透析中の血圧低下が認められた。治療経過と考察を踏まえて報告する。
【方法】
症例は70歳代女性。2016年1月より血液透析導入,透析歴6ヵ月。透析に至った原疾患は腎硬化症であった。BMI15.6kg/m2,既往歴は糖尿病,右大腿骨転子部骨折。透析状況はDW31.3kg,心胸比52%,透析開始1時間後の収縮期血圧120.2±13.1mmHgであった。介入前生活状況は施設入所中で,居室・施設内は杖,屋外はシルバーカで移動。プログラム内容は,穿刺開始30分後から①ROM,ストレッチ②ゴムバンドを使用した股関節外旋運動,SLR(以下RT)を実施。運動強度はBorg scale11~13とした。介入前と3ヵ月後にGNRI,Alb,Short Physical Performance Battery(以下SPPB),片脚立位時間,Kt/Vを測定。介入後67日目に居室内で箪笥から物を取り,立ち上がる際にふらつき転倒し,左殿部を床にぶつけた。外傷はあざのみで転倒当日のみ運動を中止した。介入後から食事量が増え,食事量増加に伴い透析日の除水量も増した。透析中血圧からDWを適宜調整中であり,そのことが転倒に繋がってしまったことも示唆された。
【結果】
3ヵ月後のDW33.1kg,心胸比52%であった。運動前と3ヶ月後の測定結果はGNRI68→74,Alb2.7→3.0,SPPB7→10点,片脚立位時間4.4→10.6秒,Kt/V1.70→1.77へと改善した。歩行状態は施設内独歩,屋外杖となった。透析中血圧は低下が認められ,透析開始1時間後の収縮期血圧107±3.6mmHgであり,コントロールのため内服量が増した。
【結論】
血液透析患者において,低負荷RTは蛋白異化反応を軽減するとともに,同化作用を促進する効果などにより低栄養状態の重症度が改善すると報告されている。本症例でも同様の結果が得られた。しかし,体重増加により,除水量が増し,透析前半から血圧低下が認められた。血圧低下が生じてしまった原因は,DWの適正化が図れていないこと,自律神経機能の低下が考えられる。また,透析中血圧低下と転倒には相互関係が報告されており,本症例でも因果関係があったことが示唆される。今後,リハビリ介入期間を延長し,透析中血圧に応じた負荷量の設定,プログラム内容を変更する必要があると考えられる。
血液透析患者において低栄養状態ならびに身体活動量低下が心血管イベントや予後規定因子であることが示されている。低栄養状態の持続は筋肉量の減少や筋力低下等を引き起こし,運動耐容能や日常生活動作能力,生活の質の低下を惹起する。先行研究では,低栄養状態をきたす血液透析患者でも栄養療法に加え運動療法を複合的に施行することで栄養状態および身体機能の改善を図ることができるとされている。今回,骨折の既往,重度低栄養状態,身体機能低下を来している患者を担当し。透析中のレジスタンストレーニングを3ヵ月間実施した。その結果,栄養状態改善,身体機能・透析効率向上を図ることができたが,ドライウエイト(以下DW)のコントロールに難渋し,透析中の血圧低下が認められた。治療経過と考察を踏まえて報告する。
【方法】
症例は70歳代女性。2016年1月より血液透析導入,透析歴6ヵ月。透析に至った原疾患は腎硬化症であった。BMI15.6kg/m2,既往歴は糖尿病,右大腿骨転子部骨折。透析状況はDW31.3kg,心胸比52%,透析開始1時間後の収縮期血圧120.2±13.1mmHgであった。介入前生活状況は施設入所中で,居室・施設内は杖,屋外はシルバーカで移動。プログラム内容は,穿刺開始30分後から①ROM,ストレッチ②ゴムバンドを使用した股関節外旋運動,SLR(以下RT)を実施。運動強度はBorg scale11~13とした。介入前と3ヵ月後にGNRI,Alb,Short Physical Performance Battery(以下SPPB),片脚立位時間,Kt/Vを測定。介入後67日目に居室内で箪笥から物を取り,立ち上がる際にふらつき転倒し,左殿部を床にぶつけた。外傷はあざのみで転倒当日のみ運動を中止した。介入後から食事量が増え,食事量増加に伴い透析日の除水量も増した。透析中血圧からDWを適宜調整中であり,そのことが転倒に繋がってしまったことも示唆された。
【結果】
3ヵ月後のDW33.1kg,心胸比52%であった。運動前と3ヶ月後の測定結果はGNRI68→74,Alb2.7→3.0,SPPB7→10点,片脚立位時間4.4→10.6秒,Kt/V1.70→1.77へと改善した。歩行状態は施設内独歩,屋外杖となった。透析中血圧は低下が認められ,透析開始1時間後の収縮期血圧107±3.6mmHgであり,コントロールのため内服量が増した。
【結論】
血液透析患者において,低負荷RTは蛋白異化反応を軽減するとともに,同化作用を促進する効果などにより低栄養状態の重症度が改善すると報告されている。本症例でも同様の結果が得られた。しかし,体重増加により,除水量が増し,透析前半から血圧低下が認められた。血圧低下が生じてしまった原因は,DWの適正化が図れていないこと,自律神経機能の低下が考えられる。また,透析中血圧低下と転倒には相互関係が報告されており,本症例でも因果関係があったことが示唆される。今後,リハビリ介入期間を延長し,透析中血圧に応じた負荷量の設定,プログラム内容を変更する必要があると考えられる。