The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本糖尿病理学療法学会 » ポスター発表

[P-DM-04] ポスター(糖尿病)P04

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本糖尿病理学療法学会

[P-DM-04-2] 糖尿病多発神経障害患者の足関節背屈可動域制限に下腿三頭筋群の伸張性が及ぼす影響

木村 和樹1,2, 河辺 信秀3, 二宮 秀樹4, 遠藤 佳章5, 三浦 寛貴5, 北村 拓也1 (1.新潟リハビリテーション大学理学療法学専攻, 2.国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻, 3.茅ヶ崎リハビリテーション専門学校理学療法学科, 4.千葉中央メディカルセンターリハビリテーション課, 5.国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室)

Keywords:糖尿病多発神経障害, 足関節背屈, 下腿三頭筋

【目的】

糖尿病足病変の発症には関節可動域(Range of Motion;ROM)制限による足底負荷量上昇が関与するとされている。糖尿病(diabetes mellitus;DM)患者におけるROM制限は糖尿病多発神経障害(diabetic polyneuropathy;DPN)の関与が疑われている。DPNによるROM制限は軟部組織への異常蛋白沈着などが原因として推測されているが明確ではない。また,足底負荷量に影響する足関節背屈ROM制限には下腿三頭筋群の伸張性低下が関与すると考えられるが,ROMを調査した先行研究では,膝関節の肢位に関しては明確に表記されていない。そこで,今回我々は,膝関節伸展位,屈曲位の2条件で足関節背屈ROMを測定し,下腿三頭筋の伸長性がDPN患者の足関節背屈ROMにどのような影響を及ぼすか調査した。

【方法】

対象は2型DM患者63例(男性46例,女性17例)であった。年齢は61.4±13.0歳,身長は161.8±9.7cm,体重は66.1±16.8kg,BMIは25.1±5.2kg/m2,HbA1cは9.1±2.2%であった。対象者は切断・潰瘍既往歴,骨関節疾患がなく独歩が自立しているDM教育入院患者とした。

「糖尿病性神経障害を考える会」の簡易診断基準を用いてDPN無し(non-DPN患者)39例とDPN有り(DPN患者)24例に分類した。ROMは背臥位にてゴニオメータを用いて他動的に足関節背屈ROMを測定した。測定条件は膝関節伸展位・屈曲位(30-45°)の2条件とした。ROMは左右の平均値を個人の代表値とした。測定2条件の足関節背屈ROMにおいてDPNの影響を検討した。

統計解析はDPNの影響を比較するため,基礎情報は対応のないt検定を用いて,足関節背屈ROMはMann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%とした。統計ソフトはSPSS 21.0J(IBM SPSS Japan, Inc)を用いた。

【結果】

DPN患者はnon-DPN患者よりも有意に年齢が高齢で,BMIが低値であった。膝関節屈曲位での足関節背屈ROMはnon-DPN患者が15.4±4.8°,DPN患者が13.4±4.3°であり,DPNの有無による差は認められなかった。膝関節伸展位での足関節背屈ROMはnon-DPN患者が6.2±4.5°,DPN患者が2.2±3.9°であり,DPN患者がnon-DPN患者よりも有意に低下していた(p値<0.05)。

【結論】

本研究ではDPN患者の足関節背屈ROM制限は,下腿三頭筋の伸長性低下が主であり,関節の可動性には低下がみられなかった。下腿三頭筋の伸長性低下は,立脚後期の足関節背屈運動に制限を及ぼすと考えられる。これらは前足部における足底負荷量が上昇するタイミングと一致する。これらを鑑みると足病変発症前のDM患者における前足部足底負荷量の上昇には,下腿三頭筋の伸張性低下が重要な因子である可能性がある。従って,DM患者におけるROM評価は膝関節屈曲位・伸展位ともに行う必要があると考えられ,予防的な観点から,二関節筋に対するストレッチを行うことは臨床的意義が高いと考えられる。