第52回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会 » ポスター発表

[P-DM-05] ポスター(糖尿病)P05

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本糖尿病理学療法学会

[P-DM-05-4] フレイルに着目した筋量とバランス能力の年齢および加齢変化についての検討
―糖尿病に罹患していない健常者を対象とした横断的・縦断的調査―

鈴木 康裕1,3,4, 宇佐美 慧2, 加藤 秀典1,4, 田邉 裕基1, 石川 公久1, 羽田 康司1,5 (1.筑波大学附属病院リハビリテーション部, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科, 3.筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻, 4.つくば糖尿病予防研究会, 5.筑波大学医学医療系リハビリテーション科)

キーワード:健常者, 筋量, 姿勢安定度評価指標

【はじめに,目的】フレイルとは,高齢者で生理的予備能いわゆる体力が低下することで生活機能障害,要介護状態,死亡などに至りやすくなる状態になることを意味する。しかしフレイルの概念には,しかるべき介入により再び健常な状態に戻ることが可能,という可逆性が含まれおり,より早期にフレイルを発見し,適切に介入することが重要になる。そのため,高齢者の体力低下を示すより鋭敏な指標が必要となり,健康状態の良好な健常高齢者を対象とした検討も必要と思われるが,既報は少ない。そこで本研究では,健常者を対象とした,体力指標と年齢の関係について横断的,縦断的に調査を行い,より鋭敏な体力指標の構築について検討を行うこととした。なお体力指標については,フレイルの因子として重要である筋量およびバランス能力を用いた。

【方法】対象者は,健常な病院職員,大学生および地域在住者。横断的調査では271名(男性119名,女性152名),平均年齢は39.1±20.3歳(18~84歳),縦断的調査では,横断調査参加者のうち15名(男性5名,女性10名),平均年齢は72.9±6.7歳(65~84歳)であった。対象者の選定条件として,めまい・平衡障害の既往がない,歩行および日常生活が自立している(非要支援,非要介護),糖尿病に罹患していない,を条件とした。横断的調査として,全身筋肉量(電気インピーダンス法),バランス能力(重心動揺計を用いた姿勢安定度評価指標)を測定し,年齢との関連性について回帰分析を用いて検討した。縦断的調査として,上記選定条件に加え65歳以上を対象とし,全身筋肉量,下肢筋力(膝伸展筋力,膝伸展筋持久力,足関節背屈筋力,足趾筋力),バランス能力を測定,その1年後に同様の項目を測定した。この前後での比較を,対応のあるt検定を用いて行うことで1年間の加齢変化を検討した。統計分析はSPSS(ver.21)およびR(ver.3.1)を用いて実行し,全ての統計分析において利用した両側検定の有意水準は5%とした。

【結果】横断的調査データにおいて,年齢から全身筋肉量またはバランス能力を予測する様々な回帰モデルを当てはめた結果,一次や三次のモデルに比べて,二次のモデルの当てはまりが情報量規準の観点から最も良く,筋力は50歳頃からの低下がなだらかになる様子を示し(R2=0.314),バランス能力は50歳頃からの低下が著しくなる様子を示す二次曲線の推定値が得られた(R2=0.290)。次に,縦断的調査の結果,全身筋肉量,下肢筋力において1年間の平均的変化は統計的には検出されなかったが,バランス能力のみ統計的に有意に低下が認められた(p<0.01)。

【結論】糖尿病に罹患していない,日常生活および歩行が自立している健常者の場合,年齢的および加齢的に高齢者では筋量よりバランス能力の方が顕著に低下することが明らかとなった。すなわちバランス能力は,フレイルとして筋量より鋭敏な体力指標となる可能性が示唆された。