The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-05] ポスター(教育)P05

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-05-5] 大学病院における理学療法実施症例と臨床実習担当症例の較差

田代 尚範1,2, 湖東 聡1,2, 尾崎 尚代1,2, 新妻 晶2, 仲保 徹1, 中村 大介1, 宮川 哲夫1, 下司 映一1 (1.昭和大学保健医療学部, 2.昭和大学藤が丘病院)

Keywords:臨床実習教育, 大学病院理学療法診療実績, クリニカルクラークシップ

【はじめに,目的】高度急性期医療を要する大学病院では,近年では,集中治療室からより早期にリハビリテーションを開始する重要性が示され,身体機能の早期改善のみならず,集中治療室関連せん妄の抑制や人工呼吸器の早期離脱効果などが期待されてきている。このような時代の変遷において,学生も早期から多様な疾患を臨床実習で経験することは,これからの理学療法を担う上で必要な事と思われる。本研究は,当院における過去3年間の理学療法診療対象症例と臨床実習対象症例の変化を比較し,今後必要とされる理学療法士育成にむけた臨床実習体制について検討したので報告する。

【方法】2013年4月~2014年3月までに当院で理学療法が行われた症例1973名とその期間に本学理学療法学科学生が評価および総合臨床実習において担当した症例105名を2013年度群,2015年4月~2016年3月までに当院で理学療法が行われた症例2286名とその期間に本学保健医療学部学生が評価および総合臨床実習において担当した症例108名を2015年度群とし,疾患内訳や理学療法開始場所に関して2群間で後方視的に比較検討した。

【結果】理学療法実施患者の内訳では,2013年度群と比較し2015年度群では,整形外科処方数(2013 vs 2015:57.2% vs 43.3%)および脳神経外科処方数(5.7% vs 4.4%)は有意に減少していた(p<0.05)。一方,救命医学科(2.0% vs 4.2%),循環器内科(3.4% vs 8.3%),心臓血管外科(2.1% vs 3.3%),呼吸器内科(2.2% vs 4.2%),消化器内科(1.4% vs 4.2%),脳神経内科(3.9% vs 6.6%)は有意に増加していた(p<0.05)。また,集中治療室や高度救命救急センターから理学療法が開始する症例は有意に増加していた(4.7% vs 9.5%:p<0.0001)。学生の実習担当症例に関しては,2013年度と比較し,2015年度では,脳血管疾患が有意に減少していたが(p<0.05),その他の疾患群に関して有意差は見られなかった。内訳として運動器疾患が最も多く(62.4%),呼吸器疾患および心大血管疾患は2%に満たなかった。

【結論】当院では,手術件数などの影響もあり整形外科や脳血管外科からの理学療法処方数は減少していたが,依然運動器および脳血管疾患に対する理学療法実施率は約80%を占めており,これは理学療法を学ぶ学生が臨床実習において経験すべき症例であると思われる。一方で,臨床場面では集中治療室や高度救命救急センターなどで行う呼吸・循環領域の理学療法の割合が増加していたが,これらの症例への臨床実習はいまだ不十分な結果となった。今後は,クリニカルクラークシップなどを通して,呼吸・循環領域の理学療法実習を経験する体制構築を推進していく必要があると思われた。