第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-10] ポスター(教育)P10

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-10-2] 安全に早期離床を行うためのルート操作シミュレーション教育の試み

鈴木 努, 小山 智生 (大森赤十字病院リハビリテーション課)

キーワード:早期離床, 抜針・抜管, シミュレーション教育

【はじめに,目的】

近年,急性期リハビリテーションの重要性が強く言われている。より早期からリハビリテーションを行うことにより,せん妄発症率を減少させ,身体機能やADLの再獲得期間を早め,入院期間の短縮やQOLの向上などに有用であると報告されている。

しかし早期離床の重要性が言われることで,急性期リハビリテーションの対象患者の重症度が上がり,より多くのルートやコード類が装着された状態での離床場面が増えている。昨年度,当院リハビリテーション課のアクシデント報告の内訳を見ると転倒件数に並び抜針・抜管件数が多くなっており,臨床においてルート操作に関する知識・技術が要求されていると言える。

そこで当院では,より実践に近い形で安全に離床が行えるように練習用に作成したルート類を使用したシミュレーション教育を実践している。今回シミュレーション教育の実施内容について報告する。

【方法】

当院で実践しているシミュレーション教育は,実際に担当しうる症例を通じて,エラーを起こしにくい環境作りとエラーを未然に防ぐための予測能力を養うことを目的としている。シミュレーション方法は,患者役,セラピスト役,看護師役に分かれて,特に臨床において抜針・抜管の可能性が高い場面を想定し,練習用のルート類や点滴バックに加え,人工呼吸器・患者用ベッドなどの実際の物品を使用しシミュレーションを行っている。シミュレーション後,離床方法の検討やルート類の管理方法,離床するにあたり注意すべき点やルート類が引っかかりやすい場面はどこか,看護師への協働方法などについてグループワークを行い,発表を通じて問題点や対策について参加者全員で共有出来るようにしている。

【結果】

グループワークでは,安全に行える離床方法やルート類が引っかかりやすい場面,離床にあたり注意すべき点について,ルートの長さを考慮し,より安全に起きられる側を選択し離床前に予めルートをまとめておくなどの意見の他,動き始めが最もルート類がからまりやすく抜針リスクが高まるため次の姿勢を常に考慮しながらルート配置を動く前に決定しておく必要があるなどの意見が出た。また看護師との協働方法では,当日行う内容の共有や離床時には具体的にどのようにすることで安全に実施出来るのかを常に相談しながら,協働して早期離床を進めていくようにすることが重要であるとの意見が出た。

【結論】

シミュレーション教育を行うことで,セラピスト自身が患者を離床させる際のイメージが想起しやすくなり,エラーを未然に防ぐための予測能力を高められることや,抜針・抜管が起こりやすい場面を理解することで,抜針・抜管が起こりにくい環境を事前に作り出すことが可能となるため,実際の臨床場面において,より安全に離床していくための一助になるのではないかと考える。